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【特集】2016年を振り返って~挑戦と飛躍の一年~

今年も残すところあと一週間を切りました。「いよいよ来年まであと〇日か……」というワクワクを感じながらの浮かれて過ごした年末の日々も今は昔。何の実感もないまま年が明け、月日が流れ、年末を迎える今の自分の姿を見つめたとき、「クリスマス」「年末」というだけでワイワイ盛り上がっていた子供のころの自分が少しうらやましくも感じます。 とはいえ、やはり12月ごろからテレビ・ラジオ・店舗などで流れるクリスマスソングに始まり、年末にかけて聞こえてくる「皆様、よいお年をお過ごしください」という文言に、1年の終わりの名残惜しさを感じずにはいられません。 さて、私は2013年から「1年を振り返って」というテーマで、その年一年を「〇〇と××の一年」という言葉で表現し、月ごとやトピックごとに一年間を総ざらいする記事を投稿してきました。当ブログは今年10月、二度目のブログ移行を実施し、心機一転新たなスタートを切ったばかりですが、一年を振り返る記事は旧ブログ(Wordpress)・初代ブログ(Yahoo!ブログ)から変わらず続く毎年恒例の記事となっており、今年もその季節がやってきました。相変わらずの長文ではありますが、この記事をご覧になりながら皆様もこの一年に思いを馳せていただければと思います。 2016年全体の所感 去年2015年は就職関連行事やインターンシップ、公務員試験対策講座の受講など多忙な日々で、毎日にこれといった目標を設けないまま毎日を過ごした結果中身のない一年となり、去年決めた「多忙と成熟の一年」というワードも、特に言葉が思い浮かばない中で何とか絞り出したものでした。また、これらの多忙を理由に創作活動をおろそかにした結果作曲活動の衰退を招き、また2014年に始めたイラストもまだ板についていなかったため自信をもって発表できる作品を出せないなど、創作活動においても成長を感じることのできない、もどかしい一年となりました。 今年はそういった事態は避け、学業・創作活動・その他の趣味すべてにおいて充実した一年にすべく、思い切った行動を多く取り(挑戦)、とにかくアクティブに行動することを心掛けた結果、特に学業と創作活動において大きく成長・飛躍できた一年となりました。 学業 私は2015年9月に親から大学院進学についての提案を受け、同年11月に大学院進学を決断しました。大学院

【開封レビュー】キングジム「Portabook」

今回はキングジムのノートPC「Portabook」を購入しましたので、開封の様子とファーストインプレッションをお送りします。なお、この記事の下書きもPortabookで記述しました。 Portabookは「テプラ」や「Pomera」で有名なデジタル文具メーカー、キングジムが2015年12月に発表、2016年2月に発売したノートPCです。Pomeraの一部モデルでも採用されていたキーボードの折り畳み機構により(畳み方はPomeraのものとは異なる)、8型ディスプレイを備えるコンパクトボディでありながら十分なキーピッチを確保したキーボードを備えているのが大きな特長です。また、一般的にこのサイズのPC(ほとんどがタブレット端末)は拡張性がほとんどなく(充電用のポート・ヘッドセット端子を備えるほかは、一部モデルで外部映像出力(変換アダプタを必要とする)を備えるのみ)、ビジネス用途では使うことが難しいものばかりですが、Portabookはコンパクトながらクラムシェルボディを採用することにより、フルサイズUSB・フルサイズHDMI、さらにRGB(D-Sub 15pin)をそなえるという抜群の拡張性の高さで、ビジネス用途としても十分使えるものとなっています。 こういった数多くの魅力的な特長を備えたPCですから、私も製品発表された瞬間に「あ、これめっちゃほしい」と強く感じました。しかし、その後に発表された価格が9万円台と非常に高く、その割にはスペックがそれに見合わない貧弱なものであったため急速に興味が薄れ、以後最近まで見向きすることはありませんでした。 しかし、11月8日に「 ヨドバシカメラで、Portabookを2万円台で発売中 」とのツイートを見かけて興味が再燃。なんと約6万円引きという驚異の値下げで私の物欲を強く刺激し、よく利用する家電量販店であることも手伝い、そのツイートを見かけた1時間後には注文を完了していました(さすがに注目する人が多かったようで商品確保に時間がかかり、注文から3日たってようやく商品確保できた旨の連絡が届きました)。 それでは早速開封していきましょう! 箱を開けると、まずクイックスタートガイド・取説・保証書が入った箱が出てきます。Portabookには1年間のOffice365サービスがついてくるため、プロダクトキーが書かれたカードも付

【開封レビュー】Huawei MediaPad T2 7.0 Pro

今回はHuaweiのAndroidタブレット「MediaPad T2 7.0 Pro」を購入しましたので、開封の様子とハード・ソフトのレビューをお送りします。 以前使用していたAndroidタブレット「DG-Q08M」 はCPUパワーこそ(エントリーグレードとしては)卓越していましたが、やはり1GBのRAMがネックでした。Android4.xであれば(アプリによってはより多くのRAMを必要とする場合があるものの)1GBでも特に不満に感じることはありませんが、Android5.x以降はOSレベルでより多くのRAMを消費するためか、基本的な動作こそこなせるものの例えばアプリを多く開いた場合にバックグラウンド状態のアプリがすぐ落ちたり、写真の多いwebページを閲覧中にブラウザアプリが落ちるなど、明らかにRAMの少なさが原因と思われる動作の不安定さに悩まされてきました。 当初はまた冒険心で1万円台のタブレット端末を購入することも考えましたが、この機会に性能のバランスが取れているタブレット端末を購入し、短期間ですぐに次のタブレットに買い替えてしまう現状から抜け出そうと考え、このほど性能と価格面で優れていたこちらのタブレットを購入した次第です。 それでは早速開封していきましょう! MediaPad T2 7.0 Proは今年7月に発売されたばかりの新しいAndroidタブレットです。今回購入するにあたっては、同時に発売されスペック面でもほぼ同等のMediaPad T2 10.0 Proとどちらを購入するか最後の最後まで悩んでいました。最終的に7インチという画面の大きさと可搬性を両立したサイズと指紋センサー、7.0 Proでもデュアルウィンドウ(後述)に対応していることが決め手となり7インチのほうを購入しました。10インチモデルはWi-Fiが802.11acまで対応しているのに対し7インチモデルは11nまでの対応となっていますが、DG-Q08M(11nまでの対応)でWi-Fiの速度に特に不満は感じていなかったため、比較対象から除外しました。また、7インチモデルはLTE通信に対応しており(しかも国内大手3キャリアの主要バンドにすべて対応している)、将来的にスマートフォンをMVNOに乗り換える計画があるため、その時にタブレット用の回線も一緒に契約すれば

ブログ移行しました!(ご案内)

初めまして!HEstudentと申します。そして旧ブログからのリンクなどで当ブログを閲覧いただいている皆様、新しいHEstudent555's blogへようこそ! 早速ではありますが、このブログについて簡単に説明したいと思います。以下、このブログ(Blogger)を指して「当ブログ」、2014年9月~2016年10月まで活動していたWordpress.comでのブログを「旧ブログ」、2010年10月~2014年9月まで活動していたYahoo!ブログを「初代ブログ」と呼称します。今後投稿していく記事の中でこれらの表現が断りなく用いられた場合は以上のように解釈願います。 旧ブログではバナーがほとんど表示されず、HTMLをフレキシブルに記述できるため当初は満足していましたが、その後様々なブログ用サービス(Webフォントサービスやアフィリエイトなど)の知識を得たり、埋め込みコードを用いて他サイトでアップロードしたコンテンツを当ブログで紹介したりしていく中で、それらサービスの多くがWordpress.comでのブログに適用できない(一部は自らサーバーを構築して運用する「Wordpress」で適用可能なものもある)ことがわかり、せっかくのチャンスを無駄にしてしまうもどかしさがあったため、思い切って当ブログへ移行しました。幸いにもBlogger・Wordpress.com双方ともxmlによる記事のインポート・エクスポートに対応しているため、これまで旧ブログに掲載していた記事のほとんどを当ブログへ引き継ぎ、ご覧いただけるようにしました(旧ブログの記事をそのまま移行したため、一部表現に不自然な点が残っている場合があります)。 旧ブログではブログ全体の方針のようなものは特に明言しませんでしたが、当ブログでは「記事ごとに想定読者ターゲットを決め、そのターゲットが満足できる記事づくりを目指す」という方針を 一応 明言します。例えば2016年4月に購入した「Bangbangame Photon2」のレビュー記事であれば、おそらくPC・タブレットの知識が豊富なユーザーが読むことが考えられるため、そういったユーザーが当然知っているようなワードについては特に解説はせず、さらに一歩踏み込んでレビューする、といった感じです。もちろん、一般的なPCユーザーが読むことが想定される記事を

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第26話(終) 嘘のような、本当の話(再び)」

この世界には、科学では証明できないような不可思議な出来事がたくさん存在する。それは例えば幽霊とか、超常現象とか、ジンクスとか。それらには人々を楽しませ、極楽の地へと導くものもあれば、人々を怯えさせ、恐怖のどん底に突き落とすものもある。これらの出来事は、現実に存在するかどうかすらわからないものもあるが、時にテーマパークの人気アトラクションに利用されたり、テレビで視聴率向上のために過剰に脚色して紹介されたりすることもある。 ここまでお届けしたのは、俺、姫路誠が実際にこの目、この耳、この肌、あらゆる感覚器官をもって体験した、この世に存在するすべての法則を駆使したとしても証明できないであろう現象を、何一つ脚色することなく忠実に書き記した物語であった。この物語を書き終わった今感じているのは、果たして自分が本当にその現象を体験していたのか、ということである。実際に物語の一部を俺の想像(と妄想と下心)によって補完した部分もある。しかし、この体に残っている感覚を、何の形にも残すことなく忘れてしまえば、それは空中を舞う塵同然の何の意味も持たない存在と化してしまう。俺は、この現象に何らかの大きな意味があり、いつの日か世界を大きく変える何かになると信じて、この物語を最後まで進めてきた。俺のこの体験は、人によって様々な感想を持たれることだろう。「女の子といちゃつくとかうらやましい」であったり「ただの妄想だろ。非リア乙」など。それは人それぞれの価値観の問題なので、俺がどうこう言ったりこの事実を無理やり押し付けたりすることはできない。しかし、この体験が夢とは明らかに異なる形で俺に起こり、それによって俺の高校生活が大きく変化したことは、ここで改めて念を押しておきたいと思う。あの時夢香が俺の前に現れなかったら、きっと俺の高校生活はいつまでも最初のつまらないもののままで、今の生活も内容の薄いつまらないものとなっていただろう。そして、ワールド・インターチェンジという概念がそもそも存在しなければ、俺は夢香の死後、すぐに彼女の後を追いかけ、今ごろ生きてはいなかったかもしれない。そう考えるとワールド・インターチェンジは、否、竜野夢香は、俺にとっての命の恩人なのだと、繰り返しにはなるが感じさせられる。彼女は成仏していったが、本当にかけがえのない存在だった。この事実は一生、たとえ俺が誰かと結婚することがあった

ASRock「FM2A88X Extreme 4+」でフリーズ(「Karnel Power 41」エラー)が頻発する場合の対処方法メモ

※この記事に掲載している内容は、あくまで私個人が下記のように対応した結果症状が改善されたという情報を参考までに掲載しているものであり、この記事に掲載している内容を実践することで症状が改善することを保証するものではありません。また、この記事に掲載している内容を実践した結果症状が悪化した場合でも責任を負いかねますので、自己責任にて行ってください。 (念のため)高速スタートアップを無効にする(コントロールパネル→ハードウェアとサウンド→電源オプション→電源ボタンの動作を選択する→「現在利用可能ではない設定を変更します」クリック→「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックを外す 今回のトラブルに関係する可能性は低いですが、高速スタートアップが原因で何らかのトラブルが起きることも少なくないらしいので、有効になっている場合はこの機会に切ってしまいましょう! UEFIに入り、「OC Tweaker」タブ内「DRAM Frequency」を、搭載しているRAMに合わせる(例えばDDR3-1333のRAMを挿しているときはこの項目を「DDR3-1333」にセット)。さらにDRAM Voltageを「1.50V」にセット 「Advanced」タブ内「CPU Configuration」の中の「Core C6 Mode」を「Disabled」に(「ASRockのボードはC3・C6 state周りが弱いからここをDisabledにするといい」というレビューをもとに設定しているだけなので、ここは変更しなくても問題ないかもしれない) 現時点で推定される原因としては、DRAM Voltageが初期設定ではAutoになっていたために、私の環境ではRAMに1.58Vという異常に高い電圧がかかっていました(通常電圧版のDDR3 SDRAMの定格電圧は1.50V)。その結果何らかの拍子にRAMの動作が不安定になり、フリーズに至ったものと考えています。上記の解決方法を探る段階で試しにDRAM Voltageを1.54Vに固定したところ、起動中のフリーズは発生しませんでしたが(短時間しか検証していないため、もしかしたら数日起動し続けていればフリーズしていたかもしれない)、スリープモードから復帰させる際にフリーズしました。これも復帰時に突発的にRAMに規格外の高

【帰宅部活動記録】ベスト・フレンズ(ピアノアレンジ)

2013年に日本テレビで放送され、2016年7~9月にサンテレビ・KBS京都でも放送された「帰宅部活動記録」の第11話エンディング曲です。曲が気に入ったのでピアノソロ風にアレンジしてみました(実際に一人で弾けるかはわかりません)。 「帰宅部活動記録」はメタネタ(登場人物が本来知りえない情報をなぜか知っている(キャラクターが突然「このアニメ、3話なのにまだ人気に火がついていない!」と言い出すなど)こと)がやたら多く使われていたり、かなりギリギリの線をいく(たまにギリギリすぎて映像が差し変わる(演出))パロディネタや能力者(なのに使いどころがなかったり意外としょぼかったり)が登場したり、近年まれに見るぶっ飛び具合のギャグアニメで、アニメの選り好みが激しい私が全話を何度もリピート再生してしまい、さらには自らの創作漫画にメタネタ要素を取り込んだりぶっ飛び具合を参考にしてしまうほどに面白い作品です。私たちのサークルは今度の冬コミに応募しており、もし当選した場合にはこの「帰宅部活動記録」の二次創作漫画を頒布したいと考えています。

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第25話 新しい第一歩」

月日はいつしかめぐりめぐって、俺は高校を卒業した。祝福ムードいっぱいの学校をそそくさと抜け出し、向かった先はもちろん、いつもの喫茶店だった。扉を開けると、まるでこの空間は卒業も入学も知ったこっちゃないとでも言わんばかりのもっさりした、いつもと全く同じ、俺の好みの空気が漂っていた。 「やあ坊っちゃん、卒業おめでとう」 「ありがとうございます」 「あ!誠くんもやっぱり来たのね?」 「もちろんだよ」  マスターは、一応俺たちの高校の卒業式の存在は知っていたようで、俺に対して祝福の言葉をかけてくれた。あるいは優がマスターに教えたのかもしれないが。 「誠くんは県外の大学?」 「あぁ。優も?」 「うん。だから、今日でここに通うのも終わりだな、って思って」 「そうだな。定期的に通えるのは今日が最後だな。まぁ、休暇中とかは実家に戻ってくるから、来れないこともないけど」 「だね。私も夏休みや冬休みはこっちに戻ってくるつもりだから、その時は時間合わせて来ようね」 「そっか~、二人とも会う機会減ってしまうのか~。なら、その分二人がまた来た時はごちそうでも作っておかないとな~」  俺たちは微笑みを返す。それからは、いつものように三人で夕方近くまで雑談を楽しんだ。今日はさすがに宿題はないが、学校を出る前に卒業アルバムをもらったので、これでいくぶん話が盛り上がった。マスターも、自らの高校時代の思い出をたくさん話してくれた。その多くは、以前一回以上聞いたことがある内容だったが。 「「ごちそうさまでした。そして、今までありがとうございました」」 「なーに今日でもう二度と会えない雰囲気出してるのさ。また休暇中でもいつでも、暇なときに遊びに来たらいいさ~」  俺たちは喫茶店を出る。春が近いというのにまだ空気は冷たくて、びゅうっと吹いた風に思わず身をこわばらせる。 「じゃあ、また会える時まで」 「うん。といっても、メールとかがあるし、連絡自体はいつでも取れるよね」 「まぁな。休暇前になったら、いつごろここに来れそうか連絡するよ」 「うん!じゃあ、またね!」  優は再び学校に戻るというので、今日は喫茶店の前で解散となった。俺は、あんないろいろなことがあった学校には出来るだけ近づきたくないという思いがあったので、さっさと帰宅することにした。  あの日、まばゆい光や

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第24話 最高のつながり」

「……えっ」  それにいち早く気付いたのは、やはり夢香だった。夢香は浅い呼吸ながら、半ば強い口調で言った。 「だ、大丈夫です!誠さんは何も悪くありません。これは、私が私自身の意思で、こうなるように仕向けたものです!」 「え……どういうこと?」  俺は、もしかすると女の子に対して取り返しのつかないことをしてしまったかもしれないという恐怖と、その女の子の「あなたは悪くない」という言葉が、俺をかばっているのか本心でそう言っているのかわからないということで頭の中がひどく混乱し、いかなる事実をもすぐに受け入れられる気がしなかった。しかし、とりあえず夢香の言葉に耳を傾けることはできそうである。おろおろしながら彼女の話を聞く。 「実は、誠さんたちが住む現実世界で男性と女性が交わると新しい命が生まれるように、この世界でも男性と女性が交わると新しい命が生まれます。しかし、その命はワールド・インターチェンジに生まれるわけではなく、私たちが管理するどこかの現実世界の交わった男女間の誰かにその情報が転送されます。私は明日でいなくなりますが、そのような行為を通して現実世界に私の情報を送り、残しておくことは可能なのです」 「それで、俺とその「行為」に及んだ、わけか」 「すみません、こういうのはお互いの同意があってからするものだということはわかっています。でも、誠さんに拒否されたら、誠さんに変な風に思われちゃったらって、少しでも考えてしまう私がいて、できるだけ手間を減らそうと思って、誠さんには世界移動に使うのとよく似た特別な力を利用して、別の意識の中で過ごしていただいていました。実は、誠さんが見ていた意識の中の私、多少改変はされていますが今ここにいる私と同じことを言ってたんですよ」 「なるほど……」  そう言われてみると、先ほどの夢の中の「おっきいですね」とか「とても気持ちいい」といった言葉や、果実をつまみ、引っこ抜く行動や夢香のとろけるような声の意味がなんとなく理解できた。俺は今、強い絆で結ばれた夢香と「した」のか。ましてや夢香は過去に俺のことが好きで、俺も夢香のことが好きだった。そんな相手と……「した」、のか。 「すみません、こんな大事なことをこんな形でしてしまって」 「過ぎ去ったことをどうこう言っても仕方ない。ただ、俺としては、たとえ俺に嫌われるかもしれないって思った

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第23話 最後の一夜」

翌日の夜、とうとう夢香との最後の一夜がやってきた。ほんとうに悔しいことだが、どうしても、この夜が夢香と過ごせる最後の夜となる。正確に言えば明日も夢香の顔を見られるわけなのだが、夢香の存在が抹消される手続きがどのようなものかはわからない。もしかしたら俺がこの世界に来られたとしても、彼女の顔を一瞬たりとも見ることなくお別れになるかもしれない。実質的には今日が最後、なのだ。  目を覚ますと、夢香はいつものようにベッドの横にある簡素な椅子に座って、俺が目を覚ますのを待ち続けていた。正直なところ、目を覚ました瞬間に夢香の感情が高まって、わんわん泣き出すのではないか、とも考えたが、そこにいた夢香はいつも以上に落ち着いていて、どこかおしとやかで、やっぱりかわいかった。俺が目を覚ましたことに気付くと、夢香はいつものようにぽわっとほほえんで、 「おかえりなさい、誠さん」  そう言ってくるのだった。  俺はまず、例の事件について聞いてみることにした。 「夢香……例のこと、昨日ワールド・インターチェンジの偉い人から聞いた。何も、そこまでして俺に出会う必要なかったのに……」 「すみません……私の中の感情が高ぶってしまって、いてもたってもいられなくなって、がまんできなくて……そんなことすれば、こういう結果になることも知ってました。そのことによって、誠さんといられる時間が少なくなってしまうこともわかってました。でも、今のこの私の感情に、どうしても逆らうことができませんでした」 「そっか」  夢香は静かにうつむいたまま、自らの行動の理由を話してくれた。その声は優しくありながら、どこか寂しさを感じさせるものがあった。 「……」 「……なんで怒らないんですか!!私、ワールド・インターチェンジの最高法規に違反したんですよ!それによって誠さんといられる時間も短くなって、誠さんを悲しくさせてしまって、結局誠さんのこと不幸にしてしまって!私、こんなに最低最悪な人間ですよ!怒鳴ってくださいよ!殴ってくださいよ!優さんがやったようにめちゃくちゃにしてくださいよ!!」  俺は自動的に、思いのままに怒鳴り散らす夢香を抱きしめに行っていた。俺がそっと包み込もうとすると、夢香はそれを必死に突き放そうとした。 「なんで抱きしめるんですか!なんでそんなに優しくするんですか!なんでこんなクソ人間に構う

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第22話 アルバム」

俺たちは「せーの!」の掛け声で、同時にそれぞれのアルバムの一ページ目をめくった。 「……」 俺はその瞬間目に飛び込んできたそれを見て、瞬間的に感情が高まり、涙を流すことを余儀なくされた。俺のアルバムの一ページ目、寝る前に確認した時には俺しか写っていなかったその写真は、夢香とのツーショット写真に変化していた。写真の中の俺は、別れを惜しみつつも最後まで夢香に心配をかけたくないとの思いで必死の笑顔を見せていた。夢香は俺との別れに加え、一生消えない傷を負わせてしまった相手とのツーショットが申し訳なく感じるのか、笑顔でありながらも少し浮かない表情だった。 「びっくり、しましたか?これが、私が誠さんを世界移動させた結果です。私は誠さんを、私の存在がなかったことになっている世界へ移動させました。ですから、アルバムの中からも私は消えていたわけです。もちろん、ここは世界の移動が関係ない場所ですから、誠さんはこのアルバムの本来の姿……つまり、私が写っているアルバムを見ることができたわけです」 「え?それは、どういうこと?」 「実を言いますと、誠さんは一度、ご家族から私の訃報を聞いているんです。というか、私たちは実は一年前に今と同じ形で会っているんです」 「え……そうなのか?ごめん、覚えていない」 「それもそのはずです。その理由を教えます。私が世界移動の技術を身に着けて間もないころ、つまり私が死んでしばらくたったころ、誠さんは私が死んだショックで自殺しようとしていました。でも、私は誠さんには私の分も生きてほしいと思っていました。だから、世界移動の練習もかねて、誠さんをこの世界に呼び出し、竜野夢香という存在が限りなくゼロに近い世界に移動させたのです。実は、私が初めて世界を移動させたのは、誠さんだったんですよ」 それは俺が知らなかった、というか、夢香によって消し去られていた、俺の本当の過去だった。俺は続けて質問する。 「じゃあ、夢香はどうして俺のことを忘れていたんだ?」 「今、私が言った言葉を思い出してみてください。私は誠さんを、「私の存在が限りなくゼロに近い」世界に移動させた、と言いました。そのことにより、誠さんはおろか、誠さんの家族、さらには私の家族まで、私自身の存在をほぼ忘れてしまいました。そして、その反動のようなもので、私自身も家族や友人、誠さんについての記憶があ

自作小説「ワールド・インターチェンジ」を10月よりpixivで再投稿します!

現在当ブログで好評(?)連載中の自作小説「ワールド・インターチェンジ」ですが、当ブログでの連載が終了した翌月の10月より、pixivにて再投稿することにしましたのでお知らせします。 当初はpixivにて自作小説の投稿ができることを知らず、また仮に知っていたとしても今年4月時点でpixivの私のアカウントは作成直後だったため、ここに連載しても多くの閲覧者数は期待できないと考え、一方で当ブログはすでに製品レビューを中心に多くの方に閲覧いただいていたため、レビュー閲覧目的で当ブログを訪れた方に向けて自作小説を発信し、「ヘスはこういうこともやってるんだ」ということを知ってもらいたいと考え、これまで当ブログで連載を続けてきました。 このほど、pixivでのアカウント作成から4か月が経過し、多くのイラストをアップロードし徐々に閲覧者が増えてきており、こちらも軌道に乗ってきたことから、pixivでも連載することとしました。アニメなどの場合、一度放映した作品を後になってもう一度放映することを「再放送」と言いますが、今回は一度当ブログに掲載したものをもう一度pixivに投稿するため、「再投稿」と呼ぶことにします。 連載開始は10月1日(土)、以後毎週土曜日の配信を予定しています。ただし、当ブログでの連載と同様都合により多少遅れて最新話を更新する場合があります。あらかじめご了承ください。また、当ブログでは毎週1話ずつ掲載し、2クールかけて連載していますが、今回は1クール分の期間で更新を行い、12月31日(土)に最終話の更新を行う予定です。よって1週ごとに複数話をまとめてアップロードします(キリのいい話数で分けながら公開するため、1週で何話アップロードするかは週によってまちまちです)。また複数話を統合して新たな話数を構成するわけではなく、全26話のまま一週間ごとに複数話ずつアップロードする形式とします。 pixivは主にイラストを投稿・共有するサイトですが、ワールド・インターチェンジの挿絵などは時間の都合上製作はしません(当ブログに掲載のものは初期のころに一時挿絵を掲載していましたが、意図したクオリティでなかったため削除しました)。 なお、こういうことは無いとは思いますが、万が一反響が大きく、相応の評価が得られた場合は改めて新人賞への応募を検討することになるかもしれませ

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第21話 大好きだったあの子は」

朝が来た。目が覚めて、それでもなお俺の心臓がどきどきと、正常でない高速な鼓動を打っているのがはっきりとわかった。今までにも何度か、夢の中で女の子と仲良くしたり、あるいは告白されたりして、目が覚めた後でそのどきどきが続くような感覚はあったが、今回のそれは自分にとってあまりに特別な女の子との再会で、まぁ言ってしまえば、昔俺が大好きだった女の子であって、彼女と夢の中で約五年ぶりの再会を果たしたわけだ。しかも今までの彼女との思い出を引き寄せれば、俺たちはまさか昔馴染みとも知らずにイチャコラしていて、昔かなわなかった「両想い」の関係に、知らない間になっていたと。もっとも、今の俺たちの関係が世間一般にいう「両想い」の関係かと言われると、おそらく違うだろう。だって俺たちはあくまで「絆」で結ばれただけの関係だから。しかし、その絆の力が世界中の誰よりも強固なものであるということは自信をもって言うことができる。それをもってすれば、俺たちはもしかするとあの時望んでいた関係よりも強く結ばれているのかもしれない、などと内心思ってしまう自分は、ちょっと話が違うのでは、などと考えたり。 しかし、同時にあの頃大好きだった彼女……夢香は、もう現実では生きていない。それがどういうことか、寝起きの頭で考えようとしたが、まるで想像もできない。ここ数年、俺の知り合い、ましてや俺と同い年の子が亡くなった、なんて情報は聞いたことがない。聞いていたとしたら、おそらく俺は激しくショックを受け、それが今の生活にも影響を与えていたに違いない。ましてや夢香は俺が昔大好きだった女の子だ。そんな彼女の訃報を実際に耳にしていたとしたら、きっと俺はその日のうちかあまり期間を置かずに彼女のあとを追いかけていたに違いない。というか、夢香の家族は俺の家族と仲が良く、夢香のお父さんと俺の父さんはあの事故の後もたまにお酒を飲む仲だったので、そういう情報は真っ先に俺たちのもとに入ってくるはずだと思っていた。謎だった。これほど仲が良かったのに、あの事故だけが原因で、交友をいとも簡単に断絶してしまうものなのだろうか。 学校に到着し、クラスメイトとあいさつを交わしていく。そのうち優も教室に入ってきた。 「おはよう、姫路くん」 「あぁ、おはよう、網干さん……」  自分でもわかるほどの声のトーンの低さにすぐ気付いた優は、俺に意味ありげな視

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第20話 あの人の首筋の傷跡」

季節は流れ、ついに二学期が始まった。まだまだ残暑も厳しいが、それでも夏休みに優と会っていたころよりかはいくぶん過ごしやすくなったような気がする。これから、どんどん気温は下がり続けるのだろうか。その問題は、夢香の今後をも予想しているようにも思えて、結論をすぐに出すとはできなかった。 下足場で、肩を叩かれた。振り向くと、そこにいたのは優だった。小声でささやいてくる。 「誠くん。喫茶店のことだけど、二学期もまた毎日来てもらえるかな? しばらくはマスターがクーラーの程よく効いた場所を提供してくれたり、アイスコーヒーをごちそうしてくれたり、勉強を教えてくれたりするらしいよ」 「わかった。じゃあ今日もこの後、また」 それだけ交わしておいて、俺たちは解散した。世界が変わり、優が以前ほどクラスの人気者ではなくなったとはいえ、やはり彼女に関わる人は多いから、変な誤解は起こしたくない。ましてや俺たちは、別の世界で実際に誤解を起こして取り返しのつかない事態に発展しそうになったという経験もしているからな。慎重な行動を必要とした。 それよりも、俺の心の中は、夢香のことでいっぱいだった。あれから毎日、俺は夢の世界で夢香と夜の時間を共にしているが、ここ最近は肉体的苦痛を感じる日とそうでない日が何日かおきにかわるがわる訪れる、という状態が続いていた。彼女に会いたくて仕方がないという気持ちも無きにしも非ずだが、間もなく成仏しようとしている、そしてその過程で肉体的苦痛を味わっている夢香に、少しでも楽な思いで旅立ってほしい、そのために俺には何ができるか、そのことで頭がいっぱいだった。今日は早く学校が終わったため、家に帰って自分にできることをいろいろ考えていた。 その夜、夢香は特に体の苦痛を訴えているようには見えなかった。それを見るだけで本当にほっとして、涙が出そうになる。俺は、できるだけ彼女に心配をかけないように、でもこの前みたいに感情をあふれさせてしまわないように、この思いをうまくビンの中に閉じ込めた。 「体のほうは大丈夫か?」 「はい。ここ最近は心身ともに落ち着いてきてて、誠さんと一緒にいても気分が悪くなったりはならなくなりました。あ、別に私が幸せじゃなくなったとか、そういうわけじゃないんですよ。幸せの度合いはむしろ日に日に増しているぐらいです。でも、気分が悪くなる前兆が何となく分

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第19話 自分にできることは何もないのか」

あれから俺と優の関係がどうなったかというと、優が俺を好きだったということを思い出したものの、彼女は過去に犯した罪を自覚しており、また俺のことを好きだという感情が失われていたころの記憶を保ったままだったため、お互いの関係はここ数日間と大して変化はなかった。一つだけ、変化があったとすれば、喫茶店の中でのお互いの呼び名が再び「誠くん」「優」になったことぐらいだろうか。俺たちは、今まで通りの喫茶店でのひとときを過ごしていくことになった。 その夜、俺と夢香はお互い向かい合ってベッドの上に座っていた。昨日の出来事があったとはいえ、一度仲たがいをしていたから、気まずさで目を合わせることができなかった。でも、まず俺が何か言わなければならない、と思った。 「その……こないだは悪かった。ちょっと感情的になってしまってた。夢香がいいのなら、俺は」 「私、あの日誠さんとけんかして、あなたをここから追い出した後に、気付いたんです。誠さんがいないときのほうが、一緒にいるときよりもうんと苦しいことに。誠さんがいなければ迷惑をかけることがないし、私は幸せじゃなくなるから体が楽になる、って思い込んでいました。幸せじゃないのはちょっと我慢すれば乗り越えられると思ってました。だから、あのようなめちゃくちゃな言葉を誠さんに浴びせて、ここから追い出す形になってしまいました。でも、実際に誠さんがいなくなると……確かに体は楽になりました。昨日、優さんに応戦できるぐらいには元気になりました。でも、逆に心がすごく苦しくなることに気付いたんです。誠さんに会いたい、と強く感じました。誠さんに会いたくて、また今まで通り楽しくお話したくて、泣きたくなりました。でも、私は泣いてはいけないんだと思いました。あのように突っぱねてしまったから、誠さんが二度と私に構ってくれなくなるんじゃないかって。仮に構ってくれたとしても、今までと同じようにはいかなくなるんじゃないかって。そう思うと、今までに味わったどんな体の痛みよりもつらくて、悲しくて、寂しくて。でも、そのような状況にしてしまったのは私の責任だから、泣いても意味がない。むしろ、そんなことをしたら誠さんがきっと心配するかもしれない。だったら私、すごく自分勝手な悪い子みたいに思えて……泣いてはいけなかったんです。今も、です」 夢香はうつむいたまま、本当の気持ちを打ち明けてくれ

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第18話 喧嘩するほど云々」

その日、というとちょっとわかりにくいのでより詳しく言うと、今のこの夢から覚めた日の昼間、俺は学校の勉強、友人との雑談、放課後の喫茶店でのひとときを過ごしながら、頭の中で必死に考えていた。俺は素直に思っている、夢香には未練を晴らして旅立ってほしい。俺にできることがあれば少しでもお手伝いをしてあげたい。でも、それによって夢香の未練が完全になくなり、彼女が幸せになった時、彼女は消えていなくなってしまう。おそらく、俺も彼女の存在を忘れてしまうのだろう。その時のことを考えてみたが、その事実が現実のものとなるかもしれないことを、どうしても受け入れることができなかった。今の状況は、極端にいえば、家族のうち誰かが突然いなくなって、しかもその存在を自分を含めた地球上の誰もが忘れてしまうことと同じことだ。そんなことがそもそも現実に起こりえようか。信じられない。そんなこと、起こってほしくない。でもそれは、夢香の不幸を願うことになる。そんなのは絶対嫌だ。俺は、あまりに究極過ぎる決断を迫られていた。 それからというもの、夢香は日が経つにつれて徐々に体調が悪化していく一方だった。血を吐いて、激しくせきこむこともあった。そんな彼女の苦しそうな姿を見るたび、胸が締め付けられ、俺まで苦しくなってくる。しかし、同時に「なんとしても彼女を助けたい」という気持ちが大きくなり、夢の世界のみならず現実で起きて活動しているときでも、夢香のためにできることを必死で考えていた。 ある夜、いつものように夢香のもとを訪れる。 「よっ、今日も……苦しいか?」 「はい……すみません」 「謝らなくていい」 彼女は俺の横で、いつものように浅い呼吸をしながらうずくまっていた。シーツには吐血した跡のような赤茶色のシミもある。俺は起き上がり、夢香をベッドの真ん中に寝かせた。 「何か食べるか?」 「いえ、今は食欲がないんです……」 「ちゃんと食べ物食べてるか?」 「はい、いつもはちゃんと食べてますよ」 それから、ベッドサイドの簡素な椅子に座って彼女の手を握った。夢香の手はこんなボロボロな体になった今でもやわらかさと温かさを保ったままで、まるで俺が手を握った時俺ががっかりしないように最後の愛情を手に込めているようにも思えて、うれしくて、つらかった。 「ごめんな、俺に何もできなくて……」 「誠さんが謝ることはな

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第17話 最大級の衝撃」

俺と優、そして夢香とのいざこざがすべて解決してから、俺は毎日夢香のいる「ワールド・インターチェンジ」を訪れるようになっていた。もちろん、毎日世界の移動をするためではない。ただ単に夢香に会いに行っているだけだ。あの夜、俺たちは絆を確かめあい、それ以降家族同然の関係となった。男女関係がどうのこうのとか、付き合う云々はここでは問題にすらならない。俺たちは、そういう世間一般の考えとは全く関係なく、ただの「絆」、しかし何よりも強い「絆」で結ばれた関係となった。現実世界での時間にして六時間もないが、そんな短い時間でもいい。下宿で長期間家族から離れて暮らしていると、ほんの数日間だけ家に戻っただけでもとても幸せに感じるように、ほとんどの時間を別々の世界で過ごす分、夜の六時間は何者にも代えがたい幸せな時間に感じた。しかし、そんな時間にも少しずつ変化が訪れることとなった。それも、良くない変化であった。 ある日、いつものように夢香との会話を楽しんでいたときのことだった。 「……へぇ、そうだったんだ」 「そうなんです。私もびっくりですよ! 私も、そんな、ことが……」 突然、夢香の呼吸が浅くなり、声が弱々しくなる。かと思ったら、徐々に体がふらつき始める。彼女は椅子に座っていたが、もはや椅子から転げ落ちる勢いだった。 「おい、夢香? 大丈夫か? ……夢香っ!」 俺が叫び、夢香の体に手をかけたのとほぼ同じタイミングで、彼女はとうとう椅子から転げ落ちて、その場に倒れこみそうになった。なんとか俺が手を取り、重力のままにうなだれる事態は避けられたが、彼女は自力で体重を支えることができなくなっており、俺に完全に体を委ねていた。顔は青白くなり、少しばかりの汗も確認できた。目は半開きになっていて、潤いを失いかけているように見えた。 「夢香! 大丈夫か!?」 「……あぁ、すみません。ちょっと、貧血気味で……」 「お前……この前も同じようになったけど、大丈夫か? ちゃんと栄養とってるのか?」 「とってますよ……誠さん、本当に優しいんですね」 そうなのである。夢香が貧血と思しき症状で倒れたのは今回が初めてではなかった。一ヶ月ほど前から、一週間に一回から二回、今回のように夢香の調子がすぐれないことがあった。今回の貧血のような症状の時もあれば、激しい腹痛を訴えるときもあり、また嘔吐でもしそうな

【報告】来年以降の進路について

当ブログでもたびたび記事でお話してきました、私HEstudentの進路についてですが、先日7月2日に大学院入試が行われ、先日15日にその結果が届きました。 結果は、 合格 でした! ……と言うと、苦労して勉強を頑張って勝ち取った「合格」のように聞こえてしまうのですが、2016年前半振り返り記事でもお伝えした通り、この試験は学内推薦入試で面接試問のみ、しかも面接官は自分の所属する学科で面識のある先生ばかりで、事実上「よほどの失態を冒さない限り不合格になることはない」試験だったので、正直なところ合格した実感はおろか試験を受けたという実感すらないほどです(笑)。 とはいえ、これまで各所で告知していた「来年大学院に進学する」という言葉は、ほぼ確実なものの覆される可能性もゼロではない状態での公表でしたが、この合格をもってはっきりと大学院進学を公表することができるようになりました。 現在、私は他大学や企業と連携しながら意欲的に卒業研究を進めていますが、大学院進学ということで来年からはこれまで以上に真剣に研究に取り組み、より高い成果を上げなければなりません。持ち前のクリエイター精神で新しいアイデアを生み出すとともに、学会発表などを通じて自らの研究成果を積極的に発信していきたいです。 大学院進学は社会に出るのを2年先延ばしにして学生を続けることにもなるので、時間的余裕のある学生のうちにできることはこれからも数多く挑戦していきたいと思います。大学院は研究のほかに講義なども受けなければならず、また学部生の授業の手伝いなども行う予定であるため、時間的余裕は少なくなるとは思いますが、現在取り組んでいる同人活動は少なくとも学生のうちは継続し、同人即売会への出展なども含めてアグレッシブに活動していきたいです。 今後ともHEstudentをよろしくお願いします! 最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第16話 最高の絆」

その日の夜、俺は再び夢の世界に来ていた。昨日の激しい戦いの跡はまだ少し残っていて、一部で細かいゴミが散乱していた。夢香の服と思われる、めちゃくちゃに破られた布切れもまだ散らかっていた。目の前には、上にセーターを着て、下にスカート、その下にタイツという、いつもの服を身に着けたゆるふわロングヘアーの美少女、竜野夢香がいた。ベッド横の椅子に座っていた彼女は、俺が目を覚ましたのを見計らってそっと微笑んだ。 「おかえりなさい、誠さん」 「た、ただいま。といっても、ここは俺の家じゃないけどな」 「そうかもしれません。でも、私にとって誠さんがここに来ることは、この場所に帰ってきてくれるようなものですので」 彼女の顔はところどころ赤くすり切れており、手には腕から伸びてきていると思われる包帯が巻かれていた。少し足をひきずるように歩いていたり、手の動きがぎこちない点だけでも、昨日の戦いの凄まじさが見て取れる。この前「優さんに殴られてめちゃくちゃにされたから誠さんを呼び出しませんでした」と涙ながらに訴えた気持ちもわかる。 とりあえず俺は今日の網干さんの行動の変化について夢香に報告し、俺が初めて網干さんに会う頃の彼女に戻ったように見えたことを伝えた。昨夜のあれが本当であれば、網干さんは「俺を好きになる気持ち」だけが取り除かれたため、いささか変な結末に感じたが、じっくりと考え直してみればそれらはすべて想定の範囲内なのであろう。 「そうだ、俺、夢香にお礼をしないといけないんだった」 「急になんですか? 私、誠さんにお礼を言われるようなことしていませんよ? むしろ、お礼を言いたいのは私のほうです」 「たしかに夢香にとっては当たり前のことかもしれない。でも俺にとっては本当にうれしいことだった。だから改めてお礼を言わせてほしい。この前、俺と優が取り返しのつかないことになりそうになったとき、夢香が世界を移動してくれただろう? 次の日にそれを実感して、あぁ、夢香には本当に頭が上がらない。ちゃんとお礼をしないと、って思ってた。でも、ここ数日いろんな出来事があって、なかなか言う機会がなかった。だから、今言わせてもらう。本当にありがとう」 「誠さんは本当に礼儀正しいんですね。私のほうこそ、誠さんにとっては当たり前のことかもしれませんが、一つ改めてお礼をさせてください。昨日、優さんに襲われそう