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【特集】2017年を振り返って~努力と開拓の一年~

 今年も残すところあと1週間余りとなりました。私自身の年末に対するワクワク感は年々衰退し、クリスマス以降年末にかけて用事を入れることに違和感も抵抗感もなくなってしまいました。とはいえ、今年の残り日数を指折り数え、もう数日しかないことに気が付いたとき、ふとこみあげてくる「年の終わり」に対する寂しさのようなものは、むしろ年々増してきているような感覚さえします。  さて、私は2013年から「1年を振り返って」というテーマで、その年一年を「〇〇と××の一年」という言葉で表現し、その年に自分に起こった出来事を振り返りながらその年一年間を総ざらいする記事を毎年投稿してきました。今年は大きな買い物やレビューしたい商品の購入機会がほとんどなかったこともあり、ブログの稼働率は例年と比べて極めて低いものとなってしまいましたが、私自身のアクティビティとしては過去にないほど濃密なものだったと感じています。相変わらずの長文ではありますが、この記事をご覧になりながら皆様もこの一年に思いを馳せていただければと思います。 2017年全体の所感  私の今年一年を一言で振り返ると「努力と開拓の一年」だったといえます。ちなみに 7月に投稿した上半期振り返り記事 では、1~6月の半年間を「新たなスタートとさらなる挑戦の半年」と表現していましたが、7月以降の出来事がそれまでの半年間よりも濃厚で印象深いものばかりとなったため、一年間を振り返っての所感は別の言葉となりました(これまでは偶然ではあるが半年間振り返り記事で発表した「〇〇と××の半年」の"半年"を"一年"に置き換えたものが所感となっていたため、今回が初めての事例)。言い換えればそれだけ激動の下半期でした。今年は、もちろん去年と同様数多くのことに挑戦し、学業・創作活動ともに大きく成長・飛躍できた年でしたが、それ以上に今年は「努力」することを意識し、また自分の可能性や知見を拡げるために新しい分野を開拓する一年でもありました。 創作活動  2016年末に(委託の形ではあるが)初めてコミックマーケットへの出展を果たし、かなりいい手ごたえを感じたことから、2017年は夏コミ・冬コミの両方に出展することを念頭に置き、引き続き創作活動に力を入れつつ、オリジナル作品の制作にも引き続き取り組んでいく方針と

【自作小説】World Resetter「第10話(終) 日常への回帰は、新たな非日常へのいざない」

 ふと気が付くと、俺は暗闇の中で眠りについていた。そして、顔も体も見えないが、おそらく自分の知っている誰かと、下腹部の一点を介した特別なつながりを営んでいた。そこに不安や怖れ、怯えなどの感情はなく、俺はいつか体験したことのある安心感に包まれていた。  そのつながりに至ってから何分経った頃に自らの意識が戻ってきたのかはわからない。しかし、意識が戻ってきてすぐに始めたには割に合わない気だるさを感じつつ、俺は絶頂に至り、今しがた特別なつながりをもっていたその人の「中」に、出した。普段の俺であれば、そもそもこういう状況に至る前に理性が何かものをいうはずで、それがなかったとしても絶頂のピークを過ぎたころにふと我に返り、自らの犯した罪の重さに気付くはずなのに、今の俺はそういった感情の起伏が全くなく、自他ともにゴーサインが出され、その状況は起こるべくして起こり、ごく自然な結果に終わったかのような、不気味なまでの安心感を覚えた。その行為は、いつ、どういう状況で発生したかは思い出すことはできないが、まるでいつか今と同じ行為を行っており、今のこれはその続きであるような気がした。そう思うとさらに安心感が増大し、俺はその人の「中」に、文字通り絞り出すように、全部出した。次第に気だるさが勝るようになり、俺は心地よい疲労と幸福感に包まれながら、再び眠りについた。  再び意識があるべき処へ戻ってきたときには、すでに朝になっていて、自らに心地よさを享受してくれた相手はもういなくなっていた。朝のまぶしい光を受けようと起き上がろうとしたとき、自分が泣いていることに気付いた。それはあくびによるものではなく、明らかに心の奥底からの、しかし自分にはよくわからない感情によって引き起こされていた。自分が泣いている、という事実に気が付くと同時に涙の量はさらに増加し、自分がわけのわからない感情に苛まれているという混乱した感情までも涙に直結して、次第に嗚咽を漏らさずにはいられなくなってきた。そして、その涙の正体は、ずいぶんと涙を流し、もう涙腺が枯れそうになるかと思われたころにじわりと現れた。 「そっか、俺は、早苗がいないことにこんなに泣いてたんだ。あぁ、もう早苗は、この世界中のどこを探してもいないんだ。俺が死しものぐるいでどれだけ探しても、俺がすべての財産や、ありったけの命を捧げてあらゆるものに願い、祈っても

【自作小説】World Resetter「第9話 君の名前、君の今」

 気が付くと、俺は真っ暗な空間に投げ出されていた。そこが暗い空間であることが認識できており、自分の思う通りに手足が動いている感覚がするため、おそらく意識は本来あるべき位置にあるのだと思う。しかし、その空間はあまりにも暗く、自分という存在が確かにここに存在しているにもかかわらず、実は俺は存在していないのではないかと錯覚すらしてしまうほどであった。  ふと、自分の目の前に少女が立っているのが確認できた。少女がそこにいることをこの目ではっきり認識できるのだから、何らかの光があるはずなのだが、なぜか自分の体は相変わらず暗黒世界に吸い込まれたままだった。首は上下左右に動かすことができるので、まるで自分が首から上だけの存在であるかのような、変な感覚に陥る。  目の前の少女は確かに見覚えがあった。あれは忘れもしない、俺にこの世界の「真理」を告げた直後、俺の目の前で轢かれて亡くなった少女だった。そしてなぜだろう、今ならはっきり思い出すことができる。あの激しい雷雨の日、俺の目の前で雷雨ではない原因で目の前で亡くなった少女の顔には、たしかにモザイクがかかっていたはずなのに、あの日のことを思い出す俺の脳が想起する少女の顔には、モザイクなどかかっていなかった。そして俺はさらにその前の記憶まで思い出すことができるようになっていることに気が付いた。その少女は、人生やり直しを行う前、すなわち瑠香と結ばれるルートに進まなかった俺が親しく接し、そして誰よりも好きだった女の子であること。その少女が、人生やり直しを行う直前、俺の軽率な発言によって不幸のどん底に突き落とされ、俺によって引き起こされた不慮の事故で亡くなった女の子であること。 「ようやく会えたね、安藤、恵吾くん。といっても……正確には二度目……いや、最初の世界を入れると、三度目だね」 「リドウ、サナエ……」 「やっと、思い出せたんだね。それは、私の名前。私の名前は、理堂早苗、あなたと同い年で、あなたがこれまで、理由がわからないながらもずっとその存在を追い求め続けてきた女の子。最初の世界で、あなたが唯一大好きになった女の子で、あなたが世界中の誰よりも愛してくれてた女の子。そして……そんなあなたのことが大好きで、今でも心の底からあなたのことを愛している、女の子です」  俺は、あまりに突然のことで思考が全く追い付いていなかった。つまり、

【自作小説】World Resetter「第8話 この涙の正体」

 廃墟のショッピングモールで起きた事件に巻き込まれて以降、俺は人生のやり直しを行うことができなくなった。中学を卒業しても、高校に入学しても、そして高校を卒業し、大学への進学を決めても……待てども待てども、人生のやり直しによって高校生、中学生、小学生……いずれにも戻ることができなかった。瑠香との関係は大学を卒業し、就職を決めてからも継続していた。かつて一度だけ見せた、瑠香の「もう一つの表情」を俺はいまだ忘れることができず、彼女に対する恐れと疑いを最後まで取り去ることはできなかったが、瑠香はそんな俺にいつまでも寄り添い続けてくれた。そして、その時は就職から3年経ったあるさわやかな晴れの日に訪れた。 「けーくん……私ね、けーくんと結婚したい……」  その瞬間、俺は暫く言葉を失うほかなかった。俺はこんなにも心の底から瑠香を愛することができていないのに?なぜ瑠香はこんな、極端な話、いつ浮気してもおかしくないような行動ばかりする俺に生涯を捧げようとしているのか?しかし、その答えは、瑠香の気持ちになって考えれば自明であった。瑠香は、中学の時から強い好奇心で俺に接し、俺のすべてを知ろうとした。そして、理解しようとした。実際に、瑠香は俺のすべてを理解してくれた。俺の価値観や考え方、性格、体の構造の一つ一つまで、くまなく知っている。だからこそ、俺と結婚しても、その後の人生に心配はない。俺が死ぬその瞬間まで、俺に添い遂げられると、きっと心の底から確信したのだろう。瑠香の気持ちに寄り添って考えたとき、俺の答えはただ一つだった。 「あぁ……結婚しよう、瑠香。」 「うん……けーくんならそう答えてくれると思ってたよ……ありがとね……」  瑠香は、あふれ出る涙を抑えきれなくなり、俺の胸元に飛び込んできた。そして、激しく嗚咽を漏らしながら、その幸せをじっくりとかみしめ、いくらかを俺に分け与えてくれた。  しかし、そんな幸福の絶頂にあるときでさえ、俺は人生やり直しのことを忘れずにはいられなかった。その目的は、もはや意識的に思い出すことができない。しかし、それでもなお、俺はどこか「人生をやり直して、何かを変えたい」との思いに駆られ、目的の見えない、そして行われることのないやり直しを所望し続けていた。あの出来事に巻き込まれるまでなら半ば強制的、半ば意識的に、やり直しを行うことができたが、今は

【自作小説】World Resetter「第7話 崩壊する世界、破壊される心」

 劣化コピー、という言葉がある。いわゆる「パクリ」の、一番醜い例である。俺がこれまでに経験してきた人生のやり直しは、はじめは単なるコピーの世界だと思っていた。しかし、ここ最近数回のやり直し世界を見ていて、というか、かつてやり直しを始めたころの思い出せる限りを記憶を引き寄せると、それはコピーではなく、劣化コピーの世界であることに気付いた。  この世界は少しずつ、しかし確実に、崩壊に向かっていた。そんなことを考えながら、テレビで連日報じられている猟奇的な連続殺人事件のニュースと、秩序と倫理を失ったヒトクローン技術のトピックに耳を傾けていた。  ふと、テレビから流れてきたあるワードに、はじめ自分の耳を疑わずにはいられなかった。 「昨夜、深層心理取り扱いシステムに脆弱性が発見され、これが悪用された場合、個人の過去の記憶が消去される可能性があります。不要不急の外出は控え、やむを得ず外出する際は必ず対深層心理マルウェア対策ソフトが組み込まれたカプセルを服用してください」  あとで調べてみると、いきなりこの世界に来た俺にはにわかに信じがたい話だが、なんでも数年前にDNAのデータや脳の記憶などをデジタルデータとして簡単に取り扱うことができるようになったらしい。さらに、頭の中で今考えていることをリアルタイムに取り出すことができたり、かつて「深層心理」と呼ばれた、心の奥深くの本当の気持ちまでも可視化することができるようになり、それによってこの世界は大きく変化したという。マスメディアなどでは一般へのわかりやすさの観点から「深層心理」という言葉を用いていたが、要するに本音がダダ漏れの状態と変わりなく、もはや"深層"心理の体をなしていなかった。それまで接待であるとか上辺だけの付き合いだったような関係は、本音がすべてさらされることで関係が崩壊・変化し、人々は次第に閉塞的になったという。今では義務教育でさえ、クラスメイトとの不要なトラブルを避けるため自宅からの遠隔授業で受けることが当たり前になっているそうだ。生活必需品はすべて無人宅配車が道路を走り回って各家庭に配送するようになり、街から人間の乗った乗用車はほとんど姿を消したらしい。挙句、家族同士でさえ、絶対言えない秘密などを作ることもできなくなったがために、家族全員がそれぞれの自室にこもり、何か月も顔を合わせないとい

【自作小説】World Resetter「第6話 俺が探しているあの子は」

 気が付くと、俺は今まで経験したことのないような激しい雷雨の中にいた。「バケツをひっくり返した」という表現がふさわしくて有り余るほどの猛烈な雨、おそらく昼間であるはずなのにまるで深夜のような暗さの空を瞬間明るくし、そのまま空を焼き尽くすかのような稲妻、空気を引き裂き、鼓膜を本気で破りに来るかのような激しい雷鳴、それは悔しいことに、今の俺の心境をそのまま示しているかのようでもあった。雷雨そのものよりも、雷雨が自分の心の中をあまりにも精緻に再現していることに怖れ、震え、そして怒りが沸き起こった。  ドンッ、と大きな音が、俺が雷雨から逃げ込んできた小さな建物を揺らす。びゅうびゅうと大きな音を立て始めたそれは、スーパー台風や竜巻でも起こり得ないような暴風で、間もなくこの建物も破壊されようとしていた。目の前を少女が横切る。  いかなる表現を用いても表現しえないほどの大きな雷が、この建物を直撃した。あまりに大きな音と激しい閃光で、俺はしばらく視覚と聴覚を失った。そして、たった今の落雷によりこの建物は破壊され、頭上から冷たい滴が降り注ぎ始めた。  どれほどの時間が経ったのかはわからない。ほんの数秒かもしれないし、数十年もの間、立ち尽くしていたかもしれない。気が付くと、俺は視覚と聴覚を取り戻していた。雨はまだ降り続いていたが、雷に打たれる直前のころに比べればいくぶん収まっており、雷自体もすでに止んでいた。もう夜になってしまったのか、あるいはあまりにも分厚い雲で太陽光が完全に遮られているのか、先ほどよりもあたりは暗くなっており、足元を確認するのも困難であった。徐々に暗さに目が慣れ、周りの状況が把握できるようになったとき、目の前に横たわるそれに瞬間すべての意識を奪われる。それは比喩的なものでも誇張表現でもなく、あまりの驚きと怖れで足に力が入らなくなり、そのまますとんと座り込み、まるで背骨を抜き取られたかのように、まっすぐ座ることすらできなくなった。目の前のその状況を瞬時に理解することができず、この世界に自分の体が順応できなくなり、俺は嘔吐し、失禁した。冷汗が体中から噴き出す。なんの感情も伴わない涙が出る。口を閉じることができなくなったのだろうか、唾液が顎を伝って流れ落ちる。生存本能が何を思ったか、突然の射精をもたらす。体中からありとあらゆる体液が排出され、そのまま自分の魂も外へ

【自作小説】World Resetter「第5話 受け入れなければならない現実」

 俺の教室での一日は、扉を開け、足を踏み入れるより先に発する挨拶から始まる。しかし、今の俺には、その習慣を遂行することはできても今までと同じような、我ながら朝日のごとくさわやかな声を上げることはできなかった。 「おはよう……」  蚊の鳴く音より小さな俺の挨拶にも、瑠香は瞬間的に反応してくれた。 「おはよっ、けーくん!どうしたの?元気ないね?」 「ううん……今朝ちょっと悪夢を見てしまって……」  それは悪夢でもなんでもなく、実際にこの身に起こった現実の出来事であったが、今の彼女にそれを話しても、信じてもらえるまでにはある程度の時間がかかる。時間がかかってでもわかってもらえるのであれば別にいい。そもそも俺の身に起こっている不可思議な現象を理解しようとしてくれるだろうか……俺はおそるおそる、彼女の名前を呼んだ。 「……瑠香?」 「うん!けーくんが見た夢がどんなものかはわからないけど、今までけーくんが「瑠香」って呼んでくれた女の子は今、ここにいるし、あなたは私が「けーくん」って呼んでる男の子だよ。……あっ!もしかして、今朝けーくんが見た夢って、私がどっかへ行っちゃうか、死んじゃう夢だったり?」 「うっ……まぁ、そんなとこかな」  きみのような勘のいい女は……瑠香なら許す。などと心の中で付け加えておいた。 「夢って、本当に内容を自分の意志で選ぶことできないし、内容も容赦ないものが多いよね~。まぁでも、私がけーくんを置いてどっか行くなんてことは絶対しないけどね、えへへ~」  その言葉を聞いて、俺は涙が出そうになるほど安堵した。実際に目頭が熱くなる感覚がした。少なくとも今俺がいるこの世界は、俺と瑠香の関係に異常は起こっておらず、俺たちはかつてのようにお互いを高めあい、この世で表現しうるいかなる言葉を用いても足りないほど強固な関係を築ける環境にあることが分かった。  しかし、瑠香と勉強を教えあっているとき、他愛もない話をしているとき、お互いの体のまさぐりあいをしているとき、ふと、かつて一度だけ見てしまった、瑠香のおびえた表情、怖れ、怒り、悲しみの感情が混じった悲鳴、凍り付くような静けさの中、ただ一人自分のものをまさぐったあの時間……瑠香の「もう一つの表情」がフラッシュバックする。彼女のもう一つの一面を知ってしまった俺は、かつてのように心の底から瑠香のことを信

【自作小説】World Resetter「第4話 巻き戻されないもの」

 ふと我に返ると、俺は駅に続く道の真ん中で立ち尽くしていた。どうやらかなり深い白昼夢を見ていたようだ。頬を数回叩き、気持ちを入れなおそうとした。頬がほんの少しだけ小さいことに気づいた。ポケットに入れていた財布を取り出し、中身を確認すると、それまで入っていなかった中学校の学生証が入っていた。うちの中学校では学生証の端に学年ごとに異なる模様が入れられており、いま取り出した学生証は中学二年を示すものだった。だんだんと頭が混乱してくるが、いずれにせよ早く家に帰らないといけないことに変わりはない。俺がこの学生証の表示通り中学二年生であっても、あるいはそれまでと同じ高校一年生であっても、はたまた俺が生後間もない赤ん坊であろうが老人であろうが、しなければならないことはただ一つだった。家に帰れば時間割表や教科書などから今の学年がわかるはずだ。  結局、俺はいま、中学二年の安藤恵吾であることが判明した。たった今のこの存在がどういったものなのかはまだわからないが、俺には今日ついさっきまで、高校生の瑠香と会い、お茶をした記憶、一度目のやり直し人生で順風満帆な小中学生時代を過ごし、高校一年のある日に殺されたこと、二度目のやり直し人生でそれを回避し、その後も平凡で、ちょっとだけ特別な人生を送ってきたこと、やり直し前の人生で惨劇に遭遇したことも……すべてが記憶として残っている。これまでの経験を総合すると、俺はいま、三度目のやり直し人生を送り始めたことになる。ついさっきまで高校生だった瑠香は、次に学校で会うときは中学生に戻るのか……様々な心配事が頭に思い浮かぶが、まずはこの混乱が瑠香に伝わらないよう、平凡に明日以降を過ごすしかない。俺が困惑している様子を目撃すれば、きっと瑠香は自分のことなんてどうでもよくなって、俺のことだけを思って、悩みを共有しようと気遣ってくれるだろう。彼女にだけはそんな心配はさせたくない。人生のやり直しはすでに二回も経験している。景色や一部の記憶が少しだけ変化していることを除けば、その人生はそれまでのものと全く同じのはずだ。今まで通りやればきっと大丈夫、……うん。 「あなたも、人生をやり直しているのね?」  彼女がただ者ではないことは、その一言だけですぐにわかった。おそらく、人生やり直し(と自らが銘打っているこの現象)は多くの人物に起こるものではないだろうし、そもそ

【自作小説】World Resetter「第3話 それは単なる巻き戻しではなかった」

 ふと気が付くと、肉体がふわふわと浮遊する感覚に陥っていた。そこが夢の世界であることはなんとなく想像がついたが、ただの夢の世界ではなく、その感覚には明らかに覚えがあった。しかし、それをいつ体験したかを思い出すことはできない。それを記憶の海から引き揚げ、意識のある領域に持ち出した瞬間、世界が、自分の今までの思い出が、すべて崩壊してしまうような気がして、俺の本能が思い出すことを拒んでいた。 「安藤……くん。恵吾、くん……」  俺はある少女に話しかけられる。以前にもおそらくこのような夢の世界で出会ったことのある少女だった。しかし、彼女の名前を思い出すことはできない。その声には明らかに聞き覚えがあり、中学時代、俺の恋を応援してくれた、瑠香と話すきっかけを作ってくれた、あの子の声とそっくりだった。しかし、どういうわけか俺は彼女の名前「だけ」覚えることができなかった。今聞こえた声が瑠香のものであったならば、すぐに声と名前が紐づき、きっとやまびこが返ってくるよりも早く、その名前を呼ぶことができたはずだ。なのに、どうして……なんとなくではあるが、彼女は俺にとっての大切な人のような気がする。そんな大事な、かけがえのない大切な人の名前を呼んであげられない自分が情けなくて、悔しくて、腹立たしかった。 「恵吾くん……恵吾、くん……」  それでもなお俺の名前を呼んでくる彼女の声は、心の底から俺のことを思い、俺のことだけを考えて名前を呼んでいるように聞こえて、それに応えることができない自分に対するいら立ちが徐々に高まり、 「っもう、やめてくれ……!」  実際に声に出たのか否かはわからないが、俺はそのように叫んでしまっていた。悪いのは彼女ではなく、自分なのに。こんなのただの八つ当たりだとわかっているのに。あぁ、いつかと同じように、俺はまたしても選択を誤ってしまうのか。やり直しの人生でいいことばかりしてきたから、きっとその罰が下ったのだ。この世界は、幸ばかりを受けている人に対しては不幸を与えなければならない仕組みになっているのだ。俺がついさっき、昔のやんちゃ集団に殺されたのも……  結局、それから少女が俺の名前を呼ぶことはなく、俺は混沌とした空間で自らの周りに渦巻く様々な嫌悪の流れに揉まれ、なされるがままでいるしかなかった。  再び気が付いた時、真っ先に目に飛び込んできたのは、見

【自作小説】World Resetter「第2話 過去をもう一度やり直せるなら」

「俺……タイムスリップ、してしまったのか……?」  タイムスリップ……状況や形態によって、タイムトラベルやタイムリープとも表現されるそれは、サイエンス・フィクションの世界でしか起こりえないものだと思っていた。そんなものが現実に存在し、かつ我々の身近に利用できるものであれば、俺は真っ先にそれを利用し、小学生のころからやり直していただろう。  しかし、その夢はあっさりと、かなってしまった。  朝の目覚ましで起きる。もう一人の安藤恵吾が現れる可能性を警戒しながら朝の時間を過ごしていたが、結局その心配は杞憂に終わることとなった。  俺は、この日から変化を起こす必要があった。学校に着き、教室に入るなり、見覚えのある同学年の男数人が寄ってくる。例のやんちゃ集団だ。かつての俺であればこのまま彼らについていき、朝礼をサボって校内で遊び、1時間目の授業ぎりぎりになってようやく戻ってくる、という、いわば日課のようなものをこなしていただろう。俺自身にはサボりたいという欲求はなく、朝礼にもちゃんと参加し、1時間目の用意を余裕をもって行い、普通の児童として生活を送りたかった。しかし、あの集団の中での俺に拒否権はなかった。俺は、彼らの友人 ―俺自身は全くそう思っていないが、おそらく彼らはそう思っているのだろう― でありながら、人権を与えられなかった。  しかし、今の俺はかつてのころとは少し違う。俺は、小学生時代にタイムスリップし、小学生の体を得ることができながら、これまでの人生におけるすべての記憶が保持されたままであった。昨日の朝、今は存在しない喫茶店にいたことも、そしておとといのことも……  だから、彼らがどういう行動に出るのかもわかるし、高校時代まで生きてきた中で得た経験をもとに小学生では考えられないような思考・行動も取ることができる。実は昨夜、寝ている間にある作戦を考案した。成功するかどうかわからないようなチャレンジャーなものではなく、ごく簡単な、しかし確実に成功させられると確信できるものだ。今のこの世界が、ただ単に時間を巻き戻しただけのものであれば、あくまで俺の予想であるが、この作戦は100パーセント成功する。俺は、意を決して行動に移す。  目を覚ますと、俺は保健室のベッドで眠っていた。すでに給食・昼休みの時間になっていた。次第に意識がもうろうとしてきたので詳しいことは

【自作小説】World Resetter「第1話 非日常へのいざない」

 この世界には、科学では証明できないような不可思議な出来事がたくさん存在する。それは例えば幽霊とか、超常現象とか、ジンクスとか。それらには人々を楽しませ、極楽の地へと導くものもあれば、人々を怯えさせ、恐怖のどん底に突き落とすものもある。これらの出来事は、現実に存在するかどうかすらわからないものもあるが、時にテーマパークの人気アトラクションに利用されたり、テレビで視聴率向上のために過剰に脚色して紹介されたりすることもある。  これからお届けするのは、俺、安藤恵吾が実際にこの目、この耳、この肌、あらゆる感覚器官をもって体験した、この世に存在するすべての法則を駆使したとしても証明できないであろう現象を、何一つ脚色することなく忠実に書き記した物語である。この物語を書いている今感じているのは、果たして自分が本当にその現象を体験していたのか、ということである。しかし、この体に残っている感覚を、何の形にも残すことなく忘れてしまえば、それは空中を舞う塵同然の何の意味も持たない存在と化してしまう。俺は、この現象に何らかの大きな意味があり、いつの日か世界を大きく変える何かになると信じて、この物語を最後まで進めていこうと思う。  俺は高校二年になってからの一か月で、人生を左右するかもしれない失敗をすでに三度も犯していた。一つ目は新年度が始まってすぐに行われた、クラス分けのプレースメントを兼ねた進級テストで絶望的な点数を取ってしまい、それまで得意としていた英語と数学ですら、最下位のクラスに割り当てられてしまったこと。二つ目は、俺に告白してきた女子を振ってしまったこと。それは進級テストの結果が返却され、あまりに絶望的な点数に完全に精神を打ち砕かれた直後の出来事であり、対して告白してきた女子は進級テストで思うような結果が出たらしく、教室の中でホクホクした表情で一日を過ごしていたのを見ていた。そんな女子がこんな俺に告白してくるのだから、きっと裏があるに違いない。満身創痍の俺の心を癒そうと懐に忍び込み、俺を気を引いたところで暴利を貪るつもりだ。少なくともその女子に告白されたときの俺はそのような思考をすることしかできず、残酷な言葉の羅列で彼女を振った。今の俺にその言葉の一字一句を思い出すことはできないが、おそらく今述べたような心の闇をそのまま口にしてしまったんだと思う。そして三つ目。俺に振られ

自作小説第3弾を9月より当ブログで連載します!

このほど、約1年半ぶり、3作品目となる自作小説の新作を当ブログにて連載していくことにしましたので、概要についてご紹介します。 新作のタイトルは 「World Resetter(ワールド・リセッター)」 です。1年半前に当ブログ上で連載していた 自作小説「ワールド・インターチェンジ」 と名前が似ていることからわかるように、これら2作品はいずれも日常の中に起こる、ちょっと現実離れした出来事をめぐる人々の物語を描くという共通のコンセプトのもとに製作しており、舞台となる世界も同一のものとなっています。今回連載を開始する「World Resetter」の作中、「ワールド・インターチェンジ」の中に出てきた建物や人物も出てきます。 前作「ワールド・インターチェンジ」は、約3年前に小説の新人賞へ応募することを前提に製作したものを加筆・修正し、当ブログへ掲載していましたが、今回の作品は初めからブログやSNSなどにアップロードすることを前提とし、できるだけ気軽にサクサクと読み進められるように配慮しました(のつもりです)。新人賞などへの応募は想定していないため、一部表現が稚拙な部分があったり、フラグの立て方・回収の仕方が前作に及ばない部分があったりするかもしれません。単なる自己満足の作品ではありますが、できるだけ多くの方に楽しんでいただける構成に仕上げましたので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。 連載開始は9月上旬を予定しています。なお、「World Resetter」は分割2クール構成で、今回連載する1クール目は全10話となっています。2クール目の連載開始時期については現在のところ未定ですが、プロットなどはすでに完成していますので、1クール目終了(11月中旬ごろに最終回掲載予定)から1クール(3か月)分間を開けた来年2月ごろの連載開始を目指します。また、できることなら挿絵を制作し、本文中に挿入したいところですが、現在様々な創作作業が立て込んでおり、挿絵まで手が回りそうにないのが現状ですので、今回も本文のみをお楽しみいただく形式とします。 私はこれまで、創作のメインはあくまでイラスト・まんがであり、自作小説はあくまでオマケレベルで、作品の連載も前作でしばらくお休みになると思っていたのですが(本作品も一応完結はさせるもののすぐに公開することは最近まで考えていませ

【開封レビュー】Huawei MediaPad M3 Lite 10

今回はHuaweiのAndroidタブレット「MediaPad M3 Lite 10(Wi-Fiモデル)」を購入しましたので、簡単なインプレッションをお送りします。 MediaPad M3 Lite 10は2017年6月9日に発売されたAndroidタブレットです。有名オーディオ機器ブランドharman/kardonによるサウンドチューニングが施された4つのスピーカーを搭載し、高音質なサウンドで音楽や映像を楽しめるのが特長です。音楽ストリーミングサービスの「AWA」、ネットテレビ「AbemaTV」のアプリがそれぞれプリインストールされており、購入してすぐにこれらのサービスを楽しむことができます。3GBのRAMと32GBのROM、オクタコアCPU(MSM8940: Snapdragon 435)を搭載しており、タブレット端末としての性能も十分です。 私はこれまで 2016年10月に購入したHuaweiのMediaPad T2 7.0 Pro を使ってきましたが、スピーカーがモノラルで音質も「オマケ」レベルのものでした。わざわざヘッドフォンやイヤフォンをつけるほどではないけど、でも本体のスピーカーはショボいし……ということで、思い切ってスピーカーの音質が自慢というMediaPad M3 Lite 10に乗り換えることにしました。 それではさっそく開封していきましょう! 外箱は 先日購入したMateBook と同様しっかりした作りのものです。 箱を開けるといきなり本体が見えますが、いったん置いておいて先に付属品の紹介。 付属品はUSB ACアダプタ、USBケーブル、クイックスタートガイド、microSDカードトレイ引き抜き用のピン。 続いて本体の紹介。液晶保護フィルムは、いつもなら非光沢タイプを購入するところですが、Amazonでこのタブレット用のケースを購入した際、液晶保護ガラスを同時購入すると割引が適用され、非光沢のフィルムを購入するより安く済むということで、今回初めて液晶保護ガラスを試すことにしました。 Huaweiのタブレットはベゼル幅が狭いことが特徴で、特に左右のベゼル幅はMateBookと同等レベルのスマートさです。フットプリントも小さく(縦横高さ共に9.7インチiPadに近い)、気軽に持ち運ぶことのできるサイズとなっています。 上

2017年前半を振り返って~新たなスタートとさらなる挑戦の半年~

早いもので2017年も半分が終わろうとしています。年を重ねるごとに年月の過ぎ去り方が速くなってきており、C91に参加したことや2017年が明けたことがまるで昨日のことのようです。私ヘスは毎年6月末に「前半を振り返って」、12月末に「1年間を振り返って」ということで振り返り記事を投稿しておりますが、今回も2017年前半を簡単に振り返ってみたいと思います。 この半年間を一言で振り返ると「新たなスタートとさらなる挑戦の半年」だったと感じています。去年2016年を振り返るキーワードが「挑戦と飛躍」でしたからニュアンス的にはかなり近いものですが、2015年の時のように悩みに悩んだ末何とか絞り出したものではなく、実際に感じたことを言葉にした結果、たまたま去年と同じ言葉になっただけです。 今年前半で印象的なのはやはり大学院への入学と、それに伴う生活習慣の大きな変化です。3月まで通っていた大学の大学院に進学し、所属研究室もそのままのため、正直なところあまり変化はないのではと思っていましたが、実際には入学直後から大きな変化の連続でした。 まずは授業。大学院は研究ばかり、というイメージを持つ方がほとんどだと思いますが、実は大学院にも授業があります。といっても学部の授業のように先生が教壇に立って一方向に教えるものは少なく、大半の授業は「輪講」といって、各自が先生から指示された分野の論文や教科書を読み、それについてのサマリーをスライドにまとめて発表し、学生同士で意見交換しあうというものです。ほかの研究室の学生と交流する貴重な機会ですし、自分の専門以外の視点からの意見を聞くことで新たな発見を得て、研究に役立てよう、という目的で行われています。 とはいえ、私は学部4年に進級するまでに、卒業研究以外の卒業に必要な単位をすでに取得していたため、4年生では授業を全くとっておらず、卒業研究と趣味だけで過ごす一年間でしたから、約1年ぶりの授業に初めはなかなか慣れませんでした。4年の時は週1回のゼミ以外は基本的に学校へ行くのは自由でしたから、平日でも昼前まで寝て、夜は遅くまで起きている日がほとんど(卒業間際の数か月は外が明るくなり始めるまで起きていることも頻繁にあった)でしたが、大学院では月~金まで午前中から授業が入っているので、朝きちんと起き、夜も次の日寝坊しないよう早く寝るという本来の

【開封レビュー】Huawei MateBook(2016年モデル)

  今回はHuawei MateBook(2016年モデル)を購入しました。発売が2016年7月で今更感はありますが、ファーストインプレッションをお送りします。なお、MateBookはすでに 2017年モデルが発表 されており、これと区別するためにタイトルは2016年モデルとしましたが、以後特記した場合を除き2016年モデルを指して単にMateBookと呼びます。 タブレット端末を買ってはすぐ手放す状況に終止符を打つべく、まずはAndroidタブレットについて去年10月に Huaweiの「MediaPad T2 7.0 Pro」を購入 し、現在も使用を続けていますが、Windowsタブレットについてはまだ手を付けておらず、 去年4月に購入したPhoton2 をなんとなく使い続けていました。が、このPhoton2も昨年夏ごろから筆圧検知が動作しなくなり、ただのWindowsタブレットとしての使用となり、さらに先日リカバリをかけた後ドライバをインストールしようとするもPhoton2のドライバの配信元サイトが停止しており、また標準ドライバではディスプレイが正常に表示されないため、実質的に使用不能になってしまいました。 また、これまで使用してきたWindowsタブレットはCPUがAtomまたはそれと同等レベルのプロセッサであり、度々動作の重さに悩まされてきましたので、この機会にWindowsタブレットについても思い切ってより高い性能のプロセッサを持つモデルとし、あらゆる状況で快適に使用できるタブレット端末を購入しようと考えました。 それでは早速開封していきましょう!発売から1年近く経過しており、すでに多くの方がレビューされていますが、個人的な記録用を兼ねてこの記事をお送りしていきます(-_-;A ...アセアセ 今回購入したMateBookは、2016年7月にHuaweiから発売された2in1(脱着式キーボードを備え、状況に応じてタブレットスタイルで使用することも、ノートPCスタイルで使用することもできる端末)です。発売当初はタブレット本体のみで69,800円(税抜)、キーボードは別売で9,800円(税抜)でしたが、今年5月にMateBookの2017年モデルが発表され(2017年6月末現在まだ発売はされていない模様)、実質的に型落ちモデルとなり、タブレッ

【製品レビュー】初めてのスマートウォッチに最適!?iWOWNfit I6 Pro

今回はiWOWNfitのスマートウォッチI6 Proを購入しましたので、ファーストインプレッションをお送りします。 私はスマートフォンをリュックやカバンに入れて持ち歩くことが多く、特に屋外ではマナーモードに設定していることもあって通知にすぐ気づくことができません。リュックなどに入れて持ち歩く際は時々スマートフォンを取り出して通知を確認するようにしていますが、例えば電話がかかってきたような場合などすぐに反応することは難しいです。また、以前からスマートウォッチに興味はありましたが、大手メーカーのものは高額なものが多く、なかなか手を出しづらい部分がありました。そんな中、5千円台という手ごろな価格で購入できるスマートウォッチがあることを知り、「まずはスマートウォッチのある生活を体験してみよう」という軽い気持ちで(笑)購入した次第です。 それでは早速開封していきましょう! パッケージは普通。非常にコンパクトです。付属品も充電ケーブルと取扱説明書のみと極めてシンプルです。なお、取扱説明書は日本語にも対応しています。 本体と充電ケーブル。バンドはゴム製ですが、アジャスターに金属が使われており、チープさは感じません。表示板周辺にはダイヤモンドカットも施されているなど、5千円という価格を感じさせないデザインで、シンプルな外観と相まって誰がつけても違和感を感じないものとなっています。 充電ケーブルはマグネット式で、ケーブルを時計裏側の接点にくっつけて充電します。接続方向が決まっていますが、磁石の極性によって、誤った方向で接続されてしまわないように配慮されています。ただし、接点が汗や垢で汚れていると接触が悪くなってうまく充電できなくなることがあるので、時々掃除したほうがよさそうです。 実際に装着してみるとこんな感じ。本体が非常に軽く、ゴムバンドも柔らかいですので、装着していることを忘れるぐらい軽快です。多少緩くても心拍数は計測できますので、きつく締める必要はありません。また、低価格ながら本体はIP67防水・防塵対応ですので、雨に降られても浸水の心配はなく、運動などで時計本体が汚れても水洗いできます。 それでは実際に使用してみた感想を。 画面はモノクロ有機ELパネルとなっており、暗闇でも文字が判別できますが、直射日光下では光量が不足し、盤面が見えにくくな