今回はキングジムのノートPC「Portabook」を購入しましたので、開封の様子とファーストインプレッションをお送りします。なお、この記事の下書きもPortabookで記述しました。
Portabookは「テプラ」や「Pomera」で有名なデジタル文具メーカー、キングジムが2015年12月に発表、2016年2月に発売したノートPCです。Pomeraの一部モデルでも採用されていたキーボードの折り畳み機構により(畳み方はPomeraのものとは異なる)、8型ディスプレイを備えるコンパクトボディでありながら十分なキーピッチを確保したキーボードを備えているのが大きな特長です。また、一般的にこのサイズのPC(ほとんどがタブレット端末)は拡張性がほとんどなく(充電用のポート・ヘッドセット端子を備えるほかは、一部モデルで外部映像出力(変換アダプタを必要とする)を備えるのみ)、ビジネス用途では使うことが難しいものばかりですが、Portabookはコンパクトながらクラムシェルボディを採用することにより、フルサイズUSB・フルサイズHDMI、さらにRGB(D-Sub 15pin)をそなえるという抜群の拡張性の高さで、ビジネス用途としても十分使えるものとなっています。
こういった数多くの魅力的な特長を備えたPCですから、私も製品発表された瞬間に「あ、これめっちゃほしい」と強く感じました。しかし、その後に発表された価格が9万円台と非常に高く、その割にはスペックがそれに見合わない貧弱なものであったため急速に興味が薄れ、以後最近まで見向きすることはありませんでした。
しかし、11月8日に「ヨドバシカメラで、Portabookを2万円台で発売中」とのツイートを見かけて興味が再燃。なんと約6万円引きという驚異の値下げで私の物欲を強く刺激し、よく利用する家電量販店であることも手伝い、そのツイートを見かけた1時間後には注文を完了していました(さすがに注目する人が多かったようで商品確保に時間がかかり、注文から3日たってようやく商品確保できた旨の連絡が届きました)。
それでは早速開封していきましょう!
箱を開けると、まずクイックスタートガイド・取説・保証書が入った箱が出てきます。Portabookには1年間のOffice365サービスがついてくるため、プロダクトキーが書かれたカードも付属します。
続いて本体が出てきますがそれはいったん置いといて、その下に入っている付属品。USB ACアダプタとmicroUSBケーブルが付属します。ふつうノートPCは専用のACアダプターを用いて充電するため、AC電源をとれない場所では充電できませんが、Portabookはタブレット端末などと同様microUSB端子から充電を行うタイプとなっており、市販のUSB ACアダプタとmicroUSBケーブルでも充電できるほか、大容量のモバイルバッテリーを用いることで、AC電源をとれない場所でも安心してPCを使用することができます。なお、付属のACアダプタの出力は5.2V 2Aとなっていますが、手持ちの5.0V 2AのUSB ACアダプタでも問題なく充電できることを確認しています(すべての機器が対応しているとは限りません)。
ここから本体の紹介。天板・底面はマットブラックの落ち着いた外装となっています。手触りがよく、指紋も目立ちにくくなっています。
底面。デスクに置いたとき右手前に来る位置に電源ボタンとSDカードスロットがあります。左右側面の奥側には通気口兼スピーカーホールがあります。TDPの低いタブレット向けCPUを搭載しているためファンレスです。
本体奥側(ヒンジ側)に各種端子が集約されています。左からヘッドセット端子(4極プラグ)、USB2.0端子、フルサイズHDMI端子、RGB出力端子、電源入力端子(microUSB)があります。
フットプリントとしてはA5ノートとほぼ同じサイズですが、ヒンジ側にフルサイズの端子を集約していたり、折り畳み機構付きのキーボードを備えていることもありかなり分厚く、ページ数の多い文庫本と同じぐらいの厚みがあります。
カバーを開けるとこんな感じ。ディスプレイは非光沢タイプで、反射が気にならず疲れにくくなっていますが、ぎらつきがやや気になります。キーボードはこのように格納されており、
このように手でクルッと回転させて……
使用状態に変形します。左右が本体から浮いているため、バタバタしたり文字を打っていて不安定に感じないか心配でしたが、土台部分がしっかりしているためぐらつくこともなく、普通にデスクに置いて作業をする分には全く問題ありません。キーボードはマットなホワイトで、側面は金属が巻かれており、ダイヤモンドカットも施されているため高級感があります。キーピッチは、デスクトップ向けフルサイズキーボードに比べるとやや小さく感じますが、文字入力の上で支障にならないほどに広く確保されており、キーストロークも一般的なノートPCと同程度であるため、まるで13インチ以上のノートPCのキーボードを使っているような快適な文字入力を行うことができます。また、こういったコンパクトキーボードはたいてい配列が崩れていたり一部キーの場所が移動していたりしますが、PortabookのキーボードはJIS配列ほぼそのままで、違和感なく使用できます。さらに、キーボードは静音タイプとなっており、強めにたたいてもキーの音が大きく響きにくくなっています。キーボードと土台との間にわずかに隙間があり、キーを打つときにここがカタカタと音を立てるため、究極の静音ではありませんが、静かな場所でも周りをあまり気にせず文字入力することができ、それだけでも快適性向上につながっているといえます。
一方、フィンガーマウスは常用したいとは言いがたいものとなっています。「G」「H」「B」のキーに囲まれた黒い部分をなぞることでカーソルを移動できますが(ThinkPadなどのトラックポイントに形状は似ているがメカニズムが異なる)、意図した場所にカーソルを素早く正確に動かすことが難しく、操作には慣れが必要です。また、キーボード手前にある左右中央クリックボタンの感触がチープでクリック音も大きく、せっかくの高品質なキーボードを台無しにしていると感じました。どうしてもマウスを使うことができないような状況でない限りは、マウスを用いて操作することをおすすめします(前述のとおりUSBポートは1つしかありませんので、Bluetoothマウスの使用が望ましい)。
手前にはインジケータランプもあります。電源オン時は白色、充電中はオレンジ色に点灯、スリープ時は点滅します。
それでは早速起動していきましょう!
ブート画面もPortabook仕様。
Portabookは2月に発売された製品のため、Windows10のビルドは10586、November Updateが適用されています。もちろん最新のビルド「Anniversary Update」に更新していきますが、後述する通りeMMCの容量が32GBしかなくほとんど余裕がないため、ソフトウェアを入れていない初期状態のうちにアップデートを済ませます。
解像度は1280x768で、スケーリングは100%となっていますが、文字入力などにおいて文字が小さすぎると感じることはなく、極端な近視でなければ普通に椅子に腰かけた状態でも画面の文字を読むことができます。
それではハードウェア面のレビューを。ここからはスペック的にPortabookに近いノートPC「Altair VH-AD」(1月に購入。Celeron N3150、RAM2GB、eMMC32GB)と一部比較しながらお送りします。
PortabookはRAMが2GB、eMMCが32GBで、OSは64bit版がインストールされています。64bit版OSを動かす必要最小限のRAM・eMMC容量のため、RAM使用率は常に7割前後、eMMCの空き容量は初期状態でも14GB程度しかありません。ただしRAM容量についてはeMMCへスワップが行われるため、極端にRAMを消費するソフトウェアを使用しない限り、RAM容量の少なさやそれによる動作の遅さを感じることはありません。一方eMMCの容量については、Altair VH-ADのように2.5インチドライブを増設することもできないため、32GBという少ない容量をうまくやりくりしていく必要があります。SDカードスロットがあるため、ここに大容量のSDHCカードを挿入すればある程度カバーできますが、挿入したカードが本体からはみ出るため常に挿入したままにすることは難しく、根本的な解決にはなりません。
CPU(SoC)はAtom x7-Z8700が搭載されています。これはSurface 3に搭載されているものと同じで、Windowsタブレットの多くに搭載されているAtom x5-Z8300の上位モデルとなります。CPU・GPUの性能については例によってCINEBENCH R15にて計測しました。
CPU・GPUともスコアは低く、ベンチマーク上はそれぞれPortabookのスコア(オレンジ色のバーで示されている)の一つ上にあるAltair VH-ADのスコアを下回るものとなっています。ただし実際の使用感では特に動作の遅さを感じることはなく、ネット動画の視聴も難なくこなします。
また、CPU温度の上昇によりサーマルスロットリングが作動することがあり、この場合クロック周波数が500MHz程度、CPU使用率の上限が30%程度にまで抑えられてしまいます。ファンレスであるため仕方ない部分ではありますが、使用時は熱がこもらないよう注意しながら使う必要があります。
とはいえ、この製品はあくまで文字入力を中心としたビジネス用途での使用を想定した製品であるため、こうした用途で使う限りは以上のスペックはさほど問題にはならないのではないでしょうか。むしろ必要以上にハイスペックにしてしまうとゲームなど作業に関係ないソフトを入れて遊んでしまい、作業効率が悪くなってしまうため、あえてスペックを必要最小限にしたと考えれば納得がいきます(実際に開発者がそのようなことを期待してスペックを絞ったのかはわかりませんが)。この点では、アプローチは異なるものの「文字入力以外の機能を一切廃した」というPomeraと方向性は似ているともいえます。
バッテリーについてはスペック上は持続時間5時間とされていますが、手元の環境で文書入力などの作業をしたところ、3時間ほどで残量20%を切りました。バッテリーのみでの長時間の使用は現実的とは言えず、外部電源接続が前提でどうしても電源を使えない・プレゼンなどで一時的に電源のある場所から離れるといった場合の短時間の使用に限られてくると思います。
というわけで、Portabookの開封レビューを(発売から9か月たっているため今更感はありますが)お届けしました。当初は9万円と、スペックにまるで見合わない価格設定であったため私の中でのこの製品の魅力は限りなくゼロに近いものでしたが、2万円台に大きく値下げされた今、こだわりのキーボードと拡張性によりかなり魅力的な製品であると感じました。最初からこの価格で販売してくれていればもっと早く購入していたかもしれません。前述したとおり特にeMMCの容量がネックで(しかもAltair VH-ADのように2.5インチドライブを増設することもできない)、試行錯誤しながら使っていくことになると思いますが、主に移動中の文書作成や軽い作業などを中心に様々な用途に活用していきたいと思います。
最後に、ここまでの下書きをPortabookで入力してきて、さすがにデスクトップPCのフルサイズキーボードほどの快適さではないものの、このサイズのPCとしては抜群の文字入力のしやすさで、キー配列がJIS標準に近いこともありフルサイズキーボードの時とほとんど変わらないスピードでキーを叩くことができたことを報告します。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。