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8月, 2016の投稿を表示しています

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第22話 アルバム」

俺たちは「せーの!」の掛け声で、同時にそれぞれのアルバムの一ページ目をめくった。 「……」 俺はその瞬間目に飛び込んできたそれを見て、瞬間的に感情が高まり、涙を流すことを余儀なくされた。俺のアルバムの一ページ目、寝る前に確認した時には俺しか写っていなかったその写真は、夢香とのツーショット写真に変化していた。写真の中の俺は、別れを惜しみつつも最後まで夢香に心配をかけたくないとの思いで必死の笑顔を見せていた。夢香は俺との別れに加え、一生消えない傷を負わせてしまった相手とのツーショットが申し訳なく感じるのか、笑顔でありながらも少し浮かない表情だった。 「びっくり、しましたか?これが、私が誠さんを世界移動させた結果です。私は誠さんを、私の存在がなかったことになっている世界へ移動させました。ですから、アルバムの中からも私は消えていたわけです。もちろん、ここは世界の移動が関係ない場所ですから、誠さんはこのアルバムの本来の姿……つまり、私が写っているアルバムを見ることができたわけです」 「え?それは、どういうこと?」 「実を言いますと、誠さんは一度、ご家族から私の訃報を聞いているんです。というか、私たちは実は一年前に今と同じ形で会っているんです」 「え……そうなのか?ごめん、覚えていない」 「それもそのはずです。その理由を教えます。私が世界移動の技術を身に着けて間もないころ、つまり私が死んでしばらくたったころ、誠さんは私が死んだショックで自殺しようとしていました。でも、私は誠さんには私の分も生きてほしいと思っていました。だから、世界移動の練習もかねて、誠さんをこの世界に呼び出し、竜野夢香という存在が限りなくゼロに近い世界に移動させたのです。実は、私が初めて世界を移動させたのは、誠さんだったんですよ」 それは俺が知らなかった、というか、夢香によって消し去られていた、俺の本当の過去だった。俺は続けて質問する。 「じゃあ、夢香はどうして俺のことを忘れていたんだ?」 「今、私が言った言葉を思い出してみてください。私は誠さんを、「私の存在が限りなくゼロに近い」世界に移動させた、と言いました。そのことにより、誠さんはおろか、誠さんの家族、さらには私の家族まで、私自身の存在をほぼ忘れてしまいました。そして、その反動のようなもので、私自身も家族や友人、誠さんについての記憶があ

自作小説「ワールド・インターチェンジ」を10月よりpixivで再投稿します!

現在当ブログで好評(?)連載中の自作小説「ワールド・インターチェンジ」ですが、当ブログでの連載が終了した翌月の10月より、pixivにて再投稿することにしましたのでお知らせします。 当初はpixivにて自作小説の投稿ができることを知らず、また仮に知っていたとしても今年4月時点でpixivの私のアカウントは作成直後だったため、ここに連載しても多くの閲覧者数は期待できないと考え、一方で当ブログはすでに製品レビューを中心に多くの方に閲覧いただいていたため、レビュー閲覧目的で当ブログを訪れた方に向けて自作小説を発信し、「ヘスはこういうこともやってるんだ」ということを知ってもらいたいと考え、これまで当ブログで連載を続けてきました。 このほど、pixivでのアカウント作成から4か月が経過し、多くのイラストをアップロードし徐々に閲覧者が増えてきており、こちらも軌道に乗ってきたことから、pixivでも連載することとしました。アニメなどの場合、一度放映した作品を後になってもう一度放映することを「再放送」と言いますが、今回は一度当ブログに掲載したものをもう一度pixivに投稿するため、「再投稿」と呼ぶことにします。 連載開始は10月1日(土)、以後毎週土曜日の配信を予定しています。ただし、当ブログでの連載と同様都合により多少遅れて最新話を更新する場合があります。あらかじめご了承ください。また、当ブログでは毎週1話ずつ掲載し、2クールかけて連載していますが、今回は1クール分の期間で更新を行い、12月31日(土)に最終話の更新を行う予定です。よって1週ごとに複数話をまとめてアップロードします(キリのいい話数で分けながら公開するため、1週で何話アップロードするかは週によってまちまちです)。また複数話を統合して新たな話数を構成するわけではなく、全26話のまま一週間ごとに複数話ずつアップロードする形式とします。 pixivは主にイラストを投稿・共有するサイトですが、ワールド・インターチェンジの挿絵などは時間の都合上製作はしません(当ブログに掲載のものは初期のころに一時挿絵を掲載していましたが、意図したクオリティでなかったため削除しました)。 なお、こういうことは無いとは思いますが、万が一反響が大きく、相応の評価が得られた場合は改めて新人賞への応募を検討することになるかもしれませ

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第21話 大好きだったあの子は」

朝が来た。目が覚めて、それでもなお俺の心臓がどきどきと、正常でない高速な鼓動を打っているのがはっきりとわかった。今までにも何度か、夢の中で女の子と仲良くしたり、あるいは告白されたりして、目が覚めた後でそのどきどきが続くような感覚はあったが、今回のそれは自分にとってあまりに特別な女の子との再会で、まぁ言ってしまえば、昔俺が大好きだった女の子であって、彼女と夢の中で約五年ぶりの再会を果たしたわけだ。しかも今までの彼女との思い出を引き寄せれば、俺たちはまさか昔馴染みとも知らずにイチャコラしていて、昔かなわなかった「両想い」の関係に、知らない間になっていたと。もっとも、今の俺たちの関係が世間一般にいう「両想い」の関係かと言われると、おそらく違うだろう。だって俺たちはあくまで「絆」で結ばれただけの関係だから。しかし、その絆の力が世界中の誰よりも強固なものであるということは自信をもって言うことができる。それをもってすれば、俺たちはもしかするとあの時望んでいた関係よりも強く結ばれているのかもしれない、などと内心思ってしまう自分は、ちょっと話が違うのでは、などと考えたり。 しかし、同時にあの頃大好きだった彼女……夢香は、もう現実では生きていない。それがどういうことか、寝起きの頭で考えようとしたが、まるで想像もできない。ここ数年、俺の知り合い、ましてや俺と同い年の子が亡くなった、なんて情報は聞いたことがない。聞いていたとしたら、おそらく俺は激しくショックを受け、それが今の生活にも影響を与えていたに違いない。ましてや夢香は俺が昔大好きだった女の子だ。そんな彼女の訃報を実際に耳にしていたとしたら、きっと俺はその日のうちかあまり期間を置かずに彼女のあとを追いかけていたに違いない。というか、夢香の家族は俺の家族と仲が良く、夢香のお父さんと俺の父さんはあの事故の後もたまにお酒を飲む仲だったので、そういう情報は真っ先に俺たちのもとに入ってくるはずだと思っていた。謎だった。これほど仲が良かったのに、あの事故だけが原因で、交友をいとも簡単に断絶してしまうものなのだろうか。 学校に到着し、クラスメイトとあいさつを交わしていく。そのうち優も教室に入ってきた。 「おはよう、姫路くん」 「あぁ、おはよう、網干さん……」  自分でもわかるほどの声のトーンの低さにすぐ気付いた優は、俺に意味ありげな視

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第20話 あの人の首筋の傷跡」

季節は流れ、ついに二学期が始まった。まだまだ残暑も厳しいが、それでも夏休みに優と会っていたころよりかはいくぶん過ごしやすくなったような気がする。これから、どんどん気温は下がり続けるのだろうか。その問題は、夢香の今後をも予想しているようにも思えて、結論をすぐに出すとはできなかった。 下足場で、肩を叩かれた。振り向くと、そこにいたのは優だった。小声でささやいてくる。 「誠くん。喫茶店のことだけど、二学期もまた毎日来てもらえるかな? しばらくはマスターがクーラーの程よく効いた場所を提供してくれたり、アイスコーヒーをごちそうしてくれたり、勉強を教えてくれたりするらしいよ」 「わかった。じゃあ今日もこの後、また」 それだけ交わしておいて、俺たちは解散した。世界が変わり、優が以前ほどクラスの人気者ではなくなったとはいえ、やはり彼女に関わる人は多いから、変な誤解は起こしたくない。ましてや俺たちは、別の世界で実際に誤解を起こして取り返しのつかない事態に発展しそうになったという経験もしているからな。慎重な行動を必要とした。 それよりも、俺の心の中は、夢香のことでいっぱいだった。あれから毎日、俺は夢の世界で夢香と夜の時間を共にしているが、ここ最近は肉体的苦痛を感じる日とそうでない日が何日かおきにかわるがわる訪れる、という状態が続いていた。彼女に会いたくて仕方がないという気持ちも無きにしも非ずだが、間もなく成仏しようとしている、そしてその過程で肉体的苦痛を味わっている夢香に、少しでも楽な思いで旅立ってほしい、そのために俺には何ができるか、そのことで頭がいっぱいだった。今日は早く学校が終わったため、家に帰って自分にできることをいろいろ考えていた。 その夜、夢香は特に体の苦痛を訴えているようには見えなかった。それを見るだけで本当にほっとして、涙が出そうになる。俺は、できるだけ彼女に心配をかけないように、でもこの前みたいに感情をあふれさせてしまわないように、この思いをうまくビンの中に閉じ込めた。 「体のほうは大丈夫か?」 「はい。ここ最近は心身ともに落ち着いてきてて、誠さんと一緒にいても気分が悪くなったりはならなくなりました。あ、別に私が幸せじゃなくなったとか、そういうわけじゃないんですよ。幸せの度合いはむしろ日に日に増しているぐらいです。でも、気分が悪くなる前兆が何となく分

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第19話 自分にできることは何もないのか」

あれから俺と優の関係がどうなったかというと、優が俺を好きだったということを思い出したものの、彼女は過去に犯した罪を自覚しており、また俺のことを好きだという感情が失われていたころの記憶を保ったままだったため、お互いの関係はここ数日間と大して変化はなかった。一つだけ、変化があったとすれば、喫茶店の中でのお互いの呼び名が再び「誠くん」「優」になったことぐらいだろうか。俺たちは、今まで通りの喫茶店でのひとときを過ごしていくことになった。 その夜、俺と夢香はお互い向かい合ってベッドの上に座っていた。昨日の出来事があったとはいえ、一度仲たがいをしていたから、気まずさで目を合わせることができなかった。でも、まず俺が何か言わなければならない、と思った。 「その……こないだは悪かった。ちょっと感情的になってしまってた。夢香がいいのなら、俺は」 「私、あの日誠さんとけんかして、あなたをここから追い出した後に、気付いたんです。誠さんがいないときのほうが、一緒にいるときよりもうんと苦しいことに。誠さんがいなければ迷惑をかけることがないし、私は幸せじゃなくなるから体が楽になる、って思い込んでいました。幸せじゃないのはちょっと我慢すれば乗り越えられると思ってました。だから、あのようなめちゃくちゃな言葉を誠さんに浴びせて、ここから追い出す形になってしまいました。でも、実際に誠さんがいなくなると……確かに体は楽になりました。昨日、優さんに応戦できるぐらいには元気になりました。でも、逆に心がすごく苦しくなることに気付いたんです。誠さんに会いたい、と強く感じました。誠さんに会いたくて、また今まで通り楽しくお話したくて、泣きたくなりました。でも、私は泣いてはいけないんだと思いました。あのように突っぱねてしまったから、誠さんが二度と私に構ってくれなくなるんじゃないかって。仮に構ってくれたとしても、今までと同じようにはいかなくなるんじゃないかって。そう思うと、今までに味わったどんな体の痛みよりもつらくて、悲しくて、寂しくて。でも、そのような状況にしてしまったのは私の責任だから、泣いても意味がない。むしろ、そんなことをしたら誠さんがきっと心配するかもしれない。だったら私、すごく自分勝手な悪い子みたいに思えて……泣いてはいけなかったんです。今も、です」 夢香はうつむいたまま、本当の気持ちを打ち明けてくれ

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第18話 喧嘩するほど云々」

その日、というとちょっとわかりにくいのでより詳しく言うと、今のこの夢から覚めた日の昼間、俺は学校の勉強、友人との雑談、放課後の喫茶店でのひとときを過ごしながら、頭の中で必死に考えていた。俺は素直に思っている、夢香には未練を晴らして旅立ってほしい。俺にできることがあれば少しでもお手伝いをしてあげたい。でも、それによって夢香の未練が完全になくなり、彼女が幸せになった時、彼女は消えていなくなってしまう。おそらく、俺も彼女の存在を忘れてしまうのだろう。その時のことを考えてみたが、その事実が現実のものとなるかもしれないことを、どうしても受け入れることができなかった。今の状況は、極端にいえば、家族のうち誰かが突然いなくなって、しかもその存在を自分を含めた地球上の誰もが忘れてしまうことと同じことだ。そんなことがそもそも現実に起こりえようか。信じられない。そんなこと、起こってほしくない。でもそれは、夢香の不幸を願うことになる。そんなのは絶対嫌だ。俺は、あまりに究極過ぎる決断を迫られていた。 それからというもの、夢香は日が経つにつれて徐々に体調が悪化していく一方だった。血を吐いて、激しくせきこむこともあった。そんな彼女の苦しそうな姿を見るたび、胸が締め付けられ、俺まで苦しくなってくる。しかし、同時に「なんとしても彼女を助けたい」という気持ちが大きくなり、夢の世界のみならず現実で起きて活動しているときでも、夢香のためにできることを必死で考えていた。 ある夜、いつものように夢香のもとを訪れる。 「よっ、今日も……苦しいか?」 「はい……すみません」 「謝らなくていい」 彼女は俺の横で、いつものように浅い呼吸をしながらうずくまっていた。シーツには吐血した跡のような赤茶色のシミもある。俺は起き上がり、夢香をベッドの真ん中に寝かせた。 「何か食べるか?」 「いえ、今は食欲がないんです……」 「ちゃんと食べ物食べてるか?」 「はい、いつもはちゃんと食べてますよ」 それから、ベッドサイドの簡素な椅子に座って彼女の手を握った。夢香の手はこんなボロボロな体になった今でもやわらかさと温かさを保ったままで、まるで俺が手を握った時俺ががっかりしないように最後の愛情を手に込めているようにも思えて、うれしくて、つらかった。 「ごめんな、俺に何もできなくて……」 「誠さんが謝ることはな