残念ながら、というべきか、やはり、というべきか悩むところだが、それは毎日の楽しさにかつての日々を忘れかけた頃にやってきた。それも、徐々にではなく、かつての人生をフラッシュバックさせるかのごとく突然に、であった。 それは、六月も中ごろへと差し掛かり、いよいよ梅雨も本格化しようというのに、急に気が変わってしまったのか、俺たちにつかの間の晴れをもたらした日のことだった。この日、いつものように教室に入ると、それまで毎日のようにあいさつを交わしてくれる面々が、俺を無視した。この時の俺には珍しく感じたが、世界を移動する前まで彼らには見向きすらされなかったので、別段気になるものでもなかった。 特に気にすることもなくいすに座る。そのとき「バンッ!」という大きな音とともに、座面が数センチ下がるような感覚になった。実は俺が通っている学校で使われている生徒用椅子は、座面と背もたれがプラスチックでできている。それが金属の骨組みとかみ合い、ビスで固定してある。ところが最近、このビスを外し、座面を浮かせて骨組みとかみ合っていない状態にしておいて、それに気付かず座った人がかみ合う時に発せられる大きな音に驚き、その反応を見て楽しむ、という遊びが流行っている。俺がたった今ひっかかったこの罠もそれだった。クラスの数人が、俺が発した音に気付き、こちらを向いていたが、すぐにそれぞれのあるべきところに視線を戻していった。そのとき、教室をそそくさを出て行く男数人のグループが俺の視界に入った。彼らはくすくすと笑いながら、まるで「やったぜ!」「成功だな!」とでも言っている様子でどこかへ駆けていった。犯人はきっとあいつらだ。一瞬、追いかけることを考えた。しかし、俺がひっかかったこの遊びは割と日常的にクラスの中で行われていたもので、大して珍しいものでもない。むしろ、かつての世界で自分がその被害に一度も遭わなかったことのほうが不思議である。それに俺は最近クラスの中で存在感を増してきているようだ。存在感のある子がいじめギリギリのラインでいじられるということはよく聞く話なので、自分の場合もそれに当てはまるのだと思った。だから、この件については腹を立てたりせず、静かに今後を見守ることにした。 しかし、残念ながら流れは悪いほうへと舵を切ってしまっていた。それを決定づけた出来事がある。 ある日、俺が廊下を歩いていると、
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