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2月, 2018の投稿を表示しています

【自作小説】World Resetter ~Crossing Memory~「第14話 大切なあの子のための最適解」

 俺は、半ば無意識的に、再びあの喫茶店を訪れていた。人生について困ったときにはマスターに尋ねればいい。人生経験豊富なマスターなら、きっと問題解決のための道筋を教えてくれるはずだ。鮮やかな期待を胸に、俺は重い木の扉を押し開いた。 「その質問については、答えることも、ヒントを与えることもできないな」  マスターは、俺の相談に終始耳を傾け、時折コーヒーを含みながら、まるで素晴らしい答えへの道程を示してくれるかのような素振りを見せておいて、このような淡白な回答にとどめた。マスターなら教えてくれると思ったのに。俺はマスターに裏切られたような気分で、怒りと悲しみを胸に抱きつつも、それでもマスターのこの発言にはまだ何か意味があるのではないかと思い、おそるおそる尋ねてみた。 「どうして、マスターはこの質問に答えてくれないんですか」 「それはね、残っている問題が君の心の中にあるたった一つの決断をどうするか、ということだけだからだよ。私は今まで、この世界の複雑な仕組みやいろんな問題が絡み合ったややこしい状態に対してアドバイスをしてきたけど、最後にどうするかは君の判断に委ねていただろう?今回もそれと全く同じことさ。この問題に関しては、世界の複雑な仕組みについては君はすでに理解している。ややこしい問題についても君はおおよそ理解できていると私は感じた。ならば、残るは君の心の中で判断を下すだけなんじゃないか?」 「だから、それに困っているからマスターに尋ねているのであって……」 「自分の人生の判断を他人に委ねる人ほど、愚かな者はいないよ。私がこの問題についてアドバイスをしたら、確かに君の心の中のもやもやは消えるかもしれない。でも、それは君の判断ではなくて、私の判断だろう?私の判断で二人、いや、君を入れた三人の人生が左右されて、君たちはそれを本当に幸せだと思えるのかい?人間は、たしかに誰かと助け合って生きていく生き物だけれど、なんだかんだで、結局独りぼっちにならなきゃならないんだよ。そういう意味では、君みたいに、すでに二人で助け合って生きていく未来が保証されている人生ほど、豊かなものはないと思うんだけどな」  俺は、マスターの言葉を理解するための脳の処理が追い付かなくなり、心身の激しい混乱で痙攣を起こしそうになった。そして、早くこの場から立ち去りたいという生存本能が働き、コーヒーの

2018年度の創作活動の方針

 HEstudentはこのほど、2018年度の創作活動の方針を以下のように決定しました。 テーマ「続けるための選択」 私は高校の時に創作活動を始めて以来、音楽やイラスト、まんがを作るということにストイックに取り組んできました。高校時代には学業よりも創作を優先し、成績が低迷した時期を過ごしました。大学に入ってからは学業をおろそかにすると単位を落としたり、最悪の場合留年につながるため、うまく折り合いをつけつつも、やはり創作活動に注力したことに変わりはなく、必要最低限の生活行動と学業のための時間以外のすべてを創作活動につぎ込みました。時には徹夜(正確にはオールのあとそれをカバーするための睡眠を取っていたため完徹ではないが)を何日も続けることもありました。結果として、私は数多くの作品を制作し、送り出すことができました。  しかし、そんな私もいよいよ来年には学生ではなくなり、社会人となります。社会人として決められた時間に出社することはもちろん、万全の体調で業務に臨むことも要求されます。そのことを考えたとき、現在の肉体や精神に無理を強いる創作活動のスタイルが社会人になってからの自分には合わないのではないかと考えるようになりました。とはいえ、自分の人生が変わるきっかけとなった創作活動をやめたいとは思わないので、かつて高校から大学に進学するときのように、来年以降も長期にわたって継続的に創作活動に取り組めるよう、創作活動の方針を再度見直すことにしました。まだ社会人になるまで1年ありますが、この1年間で社会人になってからも創作活動を続けていくための基盤を試行錯誤しながら築き、不安を感じることなく1年後を迎えられるよう今から活動面・生活面を見直していくことにします。 オリジナル漫画について 以前投稿した「女パソ2~とある女子パソコン部の日常 Season 2~」の第3話の最後のページで、2018年度はパソコン部をテーマにした漫画と、百合をテーマにした漫画の2作品を連載していくと記しましたが、これは撤回し、パソコン部をテーマにした漫画については不定期で更新する漫画(更新日を決めた「連載」の形は取らない)とし、百合をテーマにした漫画については漫画形式をやめ、自作小説の形式として不定期に更新する作品とします。  これまで「女パソ」シリーズを定期的に更新(Season 1は月

【自作小説】World Resetter ~Crossing Memory~「第13話 答えのない問い」

 再び意識が本来あるべき位置に戻ってきたとき、俺はいつか体験したのと同じように首から上しか実体が存在しないかのような感覚に陥っていた。外界は完全に真っ暗闇で、自分自身が今どこにいるのか、そもそも自分という存在が本当に存在しているのか。次々に降りかかる事実が俺をさらに混乱させ、ますますわけが分からなくなってくる。 「久しぶり、だね。まさか、こういう形で恵吾くんとまた会えることになるとは思わなかった。嬉しい、な……」  そのように話す少女に、どこか思い当たる節があった。しかし、それが何を示しているのかはわからず、少女が誰であるか、そして俺にとっての何であるかは、少なくとも現時点の俺にはわからなかった。 「ごめん……君と俺、どんな面識があったっけ……」 「……なるほど。恵吾くんの事情はわかったよ。そして、どうして私がここに来たのかも、ね」  少女はこの混乱した状況を、むしろ楽しんでいるかのような調子で続けた。 「ここは、おそらく心の乱れと記憶の錯誤が具現化した世界だね。恵吾くんは、ここに来るまでにきっと自分では抱えきれない心の大きな変化があったか、自分でもわけが分からないような、心境の変化があったと思う。世界の仕組みってなかなか面白くて、そういう混乱の度合いが自分の中での閾値を超えてしまうと、それがその人の世界線に影響を及ぼして、心の状態が具現化して現実の世界に何らかの影響を及ぼす世界に飛んでしまうみたい。いま、恵吾くんが悩んでいるのも、おそらくこれで説明がつくと思う」 「心の乱れが具現化した世界、か……それは、俺が以前体験した「やり直し」の世界とは違うのか」 「世界の仕組みは違うけど、世界線を移動する点では共通しているかな。心の変化が移動に関与しているのも一緒だね。恵吾くんは、ここ最近というか、だいぶ前から心に何か引っかかるものがあるんじゃない?」 「うん……俺が大切にしていて、でも事故で死んじゃった「早苗」って子が、実は「早苗」じゃなくて、俺が「早苗」の紹介で仲良くなって、人生のやり直しを重ねていく中で、結婚したり子供を授かったりした「瑠香」だったかもしれないんだ……」 「恵吾くんが本当に大切で、かけがえのない存在だって思ってるのは?」 「もちろん、早苗だ」 「恵吾くんが一生を捧げたい、あるいは身を委ねてほしいって思ってるのは?」 「もちろん

【自作小説】World Resetter ~Crossing Memory~「第12話 忘却された存在」

 店を出た俺は、やはりそのまま家路を往く気にはなれず、喫茶店からさらに奥へと進んだ小さな公園に向かった。かつて、ここで自分の身に冗談抜きで人生が変わる出来事が何かあったような気がするが、うまく思い出すことができない。そもそも本当に自分の身に起こっていたことなのかも、今はもうわからない。公園の真ん中にある、いつか寝そべったことのある、あるいは初めて座るかもしれない、青いベンチに横になった。この数時間に起こった出来事はあまりに濃厚で、脳が猛烈に疲弊していたようで、仰向けになって大空を真正面に受けると同時に、強い睡魔になすすべをなくした。すーっと意識が彼方へと吸い取られ、ついでに誰かの存在も一緒にどこかへ吸い込まれてしまうような感覚であった。  はっと気が付いたとき、もしかして自分の身に何か異変が起こっているのではないかと疑う自分がいた。例えば自分の肉体が小学生同然になってしまい、時間もまた小学生時代にタイムスリップしてしまっているのではないかと。あるいはそれが中学生時代なのではないかと。しかし、自分の体に触れ、「もの」を上下に激しくピストンし、いつか「あの子」の中に出したのと同じ白濁のそれを目にして、自らの体には何も異変がないことが確認された。そして、携帯電話の時計を確認し、年月日が居眠り前と変わっていないこともわかり、タイムスリップも起きていないことが確認された。一安心し、携帯電話の通話アプリを開き、「あの子」にメッセージを送ろうとした。 「……あれ、「あの子」って、誰だっけ……?」  居眠り前までは容易に思い出せたはずの、俺が一番大切にしていた少女の名前が、俺がやり直し人生を終える直前、新たな命を授かった彼女の名前が、思い出せない。「あの子」は通話アプリを本名で登録していたため、トークリストを探せばすぐ思い出せるだろう。一番大切な相手の名前を度忘れするなんて、男として最低だな、と内心感じつつ、リストを繰った。  しかし、どれだけ探しても、「あの子」のものと思しきトークは見つからなかった。「あの子」と最後にトークをしたのは昨日だったので、そのトーク内容を手掛かりに履歴を一つ一つ見てみたが、まるで初めから存在しなかったかのように、あるいは俺自身が何らかのきっかけで意図的に消去したかのように、「あの子」との会話の履歴は消え去っていた。まさかと思って、電話の通話履

【自作小説】World Resetter ~Crossing Memory~「第11話 ほんとうの君は」

 ……えっ?  ……あれっ?  俺は仏壇の元へ歩み寄り、その写真を至近距離で見つめた。何度も目をこすった。しかし、何度見直しても、どれだけ大胆な見間違いをしたとしても、その写真に写っていた少女は、瑠香だった。 「あれ……早苗って、誰だったんだ?瑠香は、誰なんだ?この写真に写っているのは……?俺が好きだったのは……?本当は、どっちなんだ?」  結局、なんとか平静を装ってその仏壇の前で手を合わせ、早苗の家を後にした。その後、早苗の行きつけだった喫茶店へと向かった。道中、どうしても我慢ができなくなり、細い路地の奥の側溝に向かって嘔吐した。いま、俺自身に突き付けられたその事実は、そのまま鵜呑みに受け入れることは不可能で、かみ砕いて自分なりに解釈して受け入れるにはあまりに大きすぎるものだった。いまの俺は高校生で未成年であるためお酒は飲めないものの、かつて人生やり直しに巻き込まれていた時には成人として人生を送っていた時期もあり、その時には当然飲酒もしていた。当時の俺になぞらえて今の状況を例えるとすれば、大量に飲酒した結果記憶が飛び、胃袋を裏返しにしたかのように激しく嘔吐するときの状況に似ていた。今の俺には、あるいは胃洗浄が必要なのかもしれない。  口元の不快感を拭えぬまま喫茶店へ入る。いつも座っているカウンター席には、学校でもかなり有名なアイドル的存在の女子と、そんな女子とはまるで釣り合わなさそうな平凡な男子が何やら喧嘩をしていた。意外なことに、迫っているのは女子のほうだった。彼女は、学校でアイドルと呼ばれているのがまるで嘘であるかのように激昂していた。彼らは、入口のドアの鈴の音に気付いて一瞬こちらに視線を送ったが、俺と彼らはほとんど面識がなく、彼らも俺がまさか同じ学校の生徒であるとは気づいていないようで(あるいは彼らも俺の顔と名前は知っているが、今はそれどころではないのかもしれない)、すぐ喧嘩を再開していた。彼らの邪魔をするのも悪いので、俺は奥のテーブル席へ進んだ。すぐに歩み寄ってきたマスターにとりあえずの事情を話し、まずは水をもらった。飲食を全く受け付けないわけではなかったため、その後にコーヒーとお菓子—奇しくも俺が頼んだそれらは、早苗がかつてこの喫茶店でよく頼んでいたセットだったという—を注文した。 「で、今日はどんな相談だい?」  久しぶりに、あるい

【開封レビュー】Huawei Watch 2

今回はHuaweiのAndroid Wearスマートウォッチ「Huawei Watch 2」を購入しましたので、開封の様子とファーストインプレッションをお送りします。といってもHuawei Watch 2の発売日は昨年6月で、すでに半年経過しているので若干今更感はありますが…… 私は初めてのスマートウォッチとして去年の3月に iWOWNfitの「i6 Pro」を購入 し、スマートフォンをマナーモードにしている際の通知の受け取りで非常に助かっていました。しかし、昨年12月にスマートフォン(Nexus 6P)のOSのバージョンをAndroid8.1に更新して以降、i6 Proのペアリングが頻繁に切れるようになり(Nexus 6Pとi6 Proを再起動するといつの間にかペアリングが復活しているが、不使用時にi6 Proの電源を切り、再度電源を入れるとペアリングが行われない)、スマートウォッチの購入理由だった「通知を手元で受け取る」が満たされない状態となっていました。また、i6 Proの導入以降スマートウォッチの利便性を気に入り、より高機能なスマートウォッチがほしいと感じていました。 それではさっそく開封していきましょう! パッケージはHuaweiの中上位機種によくみられる、しっかりしたつくりのものです。 箱を開けるといきなり本体登場。本体は後程紹介するとして、先に付属品を見ていきます。 冊子類はクイックスタートガイドとSafety Imformation、保証書。そのほか、本体の充電器とACアダプタが付属しています。 この充電器は、 時計本体の盤面の裏側についている接点に合わせてくっつけます。充電器を近づけると磁石によって適切な位置に密着します。なお、Apple Watchのような無線充電ではありません。また、Android Wear(詳細は後述)を搭載しているためか、PCと接続するとHuawei Watch 2の正式な型番名である「LEO-BX9」という名前のデバイスとして認識されます。 続いて本体について紹介します。 3万円という価格の割に若干プラスチッキーな気もしますが、マットなブラックや盤面周囲のガンメタのリング、そして盤面の大きなディスプレイはそれだけでワクワクさせられるものがあります。リング部分は凹凸がついて