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7月, 2016の投稿を表示しています

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第17話 最大級の衝撃」

俺と優、そして夢香とのいざこざがすべて解決してから、俺は毎日夢香のいる「ワールド・インターチェンジ」を訪れるようになっていた。もちろん、毎日世界の移動をするためではない。ただ単に夢香に会いに行っているだけだ。あの夜、俺たちは絆を確かめあい、それ以降家族同然の関係となった。男女関係がどうのこうのとか、付き合う云々はここでは問題にすらならない。俺たちは、そういう世間一般の考えとは全く関係なく、ただの「絆」、しかし何よりも強い「絆」で結ばれた関係となった。現実世界での時間にして六時間もないが、そんな短い時間でもいい。下宿で長期間家族から離れて暮らしていると、ほんの数日間だけ家に戻っただけでもとても幸せに感じるように、ほとんどの時間を別々の世界で過ごす分、夜の六時間は何者にも代えがたい幸せな時間に感じた。しかし、そんな時間にも少しずつ変化が訪れることとなった。それも、良くない変化であった。 ある日、いつものように夢香との会話を楽しんでいたときのことだった。 「……へぇ、そうだったんだ」 「そうなんです。私もびっくりですよ! 私も、そんな、ことが……」 突然、夢香の呼吸が浅くなり、声が弱々しくなる。かと思ったら、徐々に体がふらつき始める。彼女は椅子に座っていたが、もはや椅子から転げ落ちる勢いだった。 「おい、夢香? 大丈夫か? ……夢香っ!」 俺が叫び、夢香の体に手をかけたのとほぼ同じタイミングで、彼女はとうとう椅子から転げ落ちて、その場に倒れこみそうになった。なんとか俺が手を取り、重力のままにうなだれる事態は避けられたが、彼女は自力で体重を支えることができなくなっており、俺に完全に体を委ねていた。顔は青白くなり、少しばかりの汗も確認できた。目は半開きになっていて、潤いを失いかけているように見えた。 「夢香! 大丈夫か!?」 「……あぁ、すみません。ちょっと、貧血気味で……」 「お前……この前も同じようになったけど、大丈夫か? ちゃんと栄養とってるのか?」 「とってますよ……誠さん、本当に優しいんですね」 そうなのである。夢香が貧血と思しき症状で倒れたのは今回が初めてではなかった。一ヶ月ほど前から、一週間に一回から二回、今回のように夢香の調子がすぐれないことがあった。今回の貧血のような症状の時もあれば、激しい腹痛を訴えるときもあり、また嘔吐でもしそうな

【報告】来年以降の進路について

当ブログでもたびたび記事でお話してきました、私HEstudentの進路についてですが、先日7月2日に大学院入試が行われ、先日15日にその結果が届きました。 結果は、 合格 でした! ……と言うと、苦労して勉強を頑張って勝ち取った「合格」のように聞こえてしまうのですが、2016年前半振り返り記事でもお伝えした通り、この試験は学内推薦入試で面接試問のみ、しかも面接官は自分の所属する学科で面識のある先生ばかりで、事実上「よほどの失態を冒さない限り不合格になることはない」試験だったので、正直なところ合格した実感はおろか試験を受けたという実感すらないほどです(笑)。 とはいえ、これまで各所で告知していた「来年大学院に進学する」という言葉は、ほぼ確実なものの覆される可能性もゼロではない状態での公表でしたが、この合格をもってはっきりと大学院進学を公表することができるようになりました。 現在、私は他大学や企業と連携しながら意欲的に卒業研究を進めていますが、大学院進学ということで来年からはこれまで以上に真剣に研究に取り組み、より高い成果を上げなければなりません。持ち前のクリエイター精神で新しいアイデアを生み出すとともに、学会発表などを通じて自らの研究成果を積極的に発信していきたいです。 大学院進学は社会に出るのを2年先延ばしにして学生を続けることにもなるので、時間的余裕のある学生のうちにできることはこれからも数多く挑戦していきたいと思います。大学院は研究のほかに講義なども受けなければならず、また学部生の授業の手伝いなども行う予定であるため、時間的余裕は少なくなるとは思いますが、現在取り組んでいる同人活動は少なくとも学生のうちは継続し、同人即売会への出展なども含めてアグレッシブに活動していきたいです。 今後ともHEstudentをよろしくお願いします! 最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第16話 最高の絆」

その日の夜、俺は再び夢の世界に来ていた。昨日の激しい戦いの跡はまだ少し残っていて、一部で細かいゴミが散乱していた。夢香の服と思われる、めちゃくちゃに破られた布切れもまだ散らかっていた。目の前には、上にセーターを着て、下にスカート、その下にタイツという、いつもの服を身に着けたゆるふわロングヘアーの美少女、竜野夢香がいた。ベッド横の椅子に座っていた彼女は、俺が目を覚ましたのを見計らってそっと微笑んだ。 「おかえりなさい、誠さん」 「た、ただいま。といっても、ここは俺の家じゃないけどな」 「そうかもしれません。でも、私にとって誠さんがここに来ることは、この場所に帰ってきてくれるようなものですので」 彼女の顔はところどころ赤くすり切れており、手には腕から伸びてきていると思われる包帯が巻かれていた。少し足をひきずるように歩いていたり、手の動きがぎこちない点だけでも、昨日の戦いの凄まじさが見て取れる。この前「優さんに殴られてめちゃくちゃにされたから誠さんを呼び出しませんでした」と涙ながらに訴えた気持ちもわかる。 とりあえず俺は今日の網干さんの行動の変化について夢香に報告し、俺が初めて網干さんに会う頃の彼女に戻ったように見えたことを伝えた。昨夜のあれが本当であれば、網干さんは「俺を好きになる気持ち」だけが取り除かれたため、いささか変な結末に感じたが、じっくりと考え直してみればそれらはすべて想定の範囲内なのであろう。 「そうだ、俺、夢香にお礼をしないといけないんだった」 「急になんですか? 私、誠さんにお礼を言われるようなことしていませんよ? むしろ、お礼を言いたいのは私のほうです」 「たしかに夢香にとっては当たり前のことかもしれない。でも俺にとっては本当にうれしいことだった。だから改めてお礼を言わせてほしい。この前、俺と優が取り返しのつかないことになりそうになったとき、夢香が世界を移動してくれただろう? 次の日にそれを実感して、あぁ、夢香には本当に頭が上がらない。ちゃんとお礼をしないと、って思ってた。でも、ここ数日いろんな出来事があって、なかなか言う機会がなかった。だから、今言わせてもらう。本当にありがとう」 「誠さんは本当に礼儀正しいんですね。私のほうこそ、誠さんにとっては当たり前のことかもしれませんが、一つ改めてお礼をさせてください。昨日、優さんに襲われそう

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第15話 君を好きになった本当の理由」

「悪いけど、俺のことを恋愛的な意味で好きになったのなら、今すぐ絶交してくれ」 「……は?」 優は俺の一言で動きを止め、悲しそうな表情半分、「こいつは何を言っているんだ」とでも言いたげな半笑いの表情半分で俺を見ていた。睨むとか、見つめるとかではなく、ただ単に見ていただけだった。 「ひどいことを言うようだけど、俺は優を助けて、君に少しでも楽しい学校生活を送ってほしいと思ってこれまで関わってきたのであって、恋人云々はあくまでそれに付随するだけのものだった」 「……私のことなんて、最初から好きじゃなかったの? 今までのあれは全部演技だったの?」 「そんなことはない。俺は優のことが好きだった。毎日会えるかどうかもわからない夢香と違って、毎日確実に、しかも必ず二人きりで出会えることが、何よりもうれしかった。優との喫茶店での時間は優にとって安息の時間だったかもしれないけど、俺にとってもかけがえのないものだった。正直、すごく幸せだった。でも、それもこれも全部、気の合う俺たちがお互いを助け合うという目的があるからこそのもので、俺たちが幸せな時間を過ごすことそのものが目的になってしまったら、何のために優に近づいたのか、わからない」 「その言い方だと、少しは演技していた気持ちがあるように受け取ることもできるよ? どうなの?」 「たしかに。ちょっと言い方が悪かった。でも優、君はちょっと「恋愛」とか、「人を好きになること」にこだわり過ぎなんじゃないか? 恋愛の価値観は人それぞれだから俺が決めつけられるものではないけど、少なくとも俺が優に対して抱いていた「好き」という気持ちは、「優に楽しい学校生活を送ってほしくて、少しでも中学のときの埋め合わせができれば」という土台のもとにあった。もちろん恋愛的な意味もある。でも、恋愛だけが目的になったら土台が崩れてしまう。土台が崩れれば「好き」という気持ちもおかしくなってしまう。そして、今がまさにその状態なんだよ」 「でも、私が誠くんのことを好きじゃなくなって、誠くんが私のことを好きじゃなくなったら、私の人生が元に戻ってしまう。もしそうなるのなら、私、誠くんの目の前で自殺しちゃおうかな」 「待て。俺は君を助けるのをやめると言っているわけじゃないんだ。俺が優を助けて、優が俺に助けられる関係、それって別に恋愛関係じゃなくてもできることじゃないか

【自作小説】ワールド・インターチェンジ「第14話 あまりにも痛すぎる仕打ち」

その夜、俺はついに夢の世界に呼び出された。 何やら穏やかでない物音で目を覚ます。すくりと体を起こすと、ベッドの左少し離れたところで二人の少女が戦いのようなことをしていた。それも、ただのごっこ遊びのレベルではない。一方の少女の目つきは鋭く、本気で何らかの目的のために戦っているようだった。もう一方の少女は完全に力の面で劣っており、例えるならばいつゲームオーバーになってもおかしくない、といった状況であった。しかも、その少女は女の子であるにもかかわらず、生まれたままの姿で横たわっていた。俺のいる位置からは見えないが、彼女は女の子の大事な部分を隠す余力すら残されていないようだった。近くに夢香が来ていた服と思しき布があったが、どれもビリビリに破かれていて、とても着られるような状態ではなくなっていた。強いほうの少女は、そんな彼女の哀れな姿を嘲笑するかのようににらみつけていた。 「ねぇ! まだわからないの? お母さんはどこかの世界で生きてるの。そんなのそこらへんの塵でしかないわ」 「優さん、目を覚ましてください。あなたのお母さんがどの世界にもいないということは、この書類にしっかり証明されています。つらいお気持ちは私にもわかりますが、いつかはこの事実を受け入れなければなりません。今すぐは難しいかもしれませんが、まずはこの事実を受け入れる努力を」 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさあああああ~~~い!!」 そう言って強い少女は、弱い少女を鞭のようなもので繰り返し叩き付ける。皮膚がむき出しになった腹部をめがけて靴で蹴りを入れる。 「ああっ!! きゃあ! うっっ!」 「おいやめろ!!」 俺はこの惨状を直視することができず、目線を自分の足元に向けたまま、自分にも出したことのないような大声で叫んだ。二人の少女……夢香と優は、ようやく俺の存在に気付いたようで、戦うのをやめた。彼女たちが視界に入らなかったので実際はどうなのかはわからないが、たぶん二人ともこちらを注目していたと思う。 「優……いくら女同士だからって、こんなのおかしいよ。今の優の行動は、単なる復讐の範囲を超えている。それと夢香……優だってもしかしたら事実を受け入れようと努力しているかもしれないじゃないか。もうちょっと優しい言い方はできないのか。二人とも感情に身を任せ過ぎだ!」 「誠くん

2016年前半を振り返って~挑戦と飛躍の半年~

早いもので2016年も半分が終わろうとしています。HEstudentは6月末に「前半を振り返って」、12月末に「1年間を振り返って」ということで振り返り記事を投稿してきましたが、今回も2016年前半を簡単に振り返ってみたいと思います。 この半年間を一言で振り返ると、「挑戦と飛躍の半年」だったと感じています。 この半年間は大学院進学を意識した行動、および大学院進学を決意したからこそできたことが数多くありました。 私の大学での大学院入試では、成績優秀者は面接と所属研究室の教員の推薦のみで入試を受けることのできる制度があり、私も3年前期時点の成績ではこの制度を利用可能でした。しかし少しでも気を抜くと平均点が下がってしまうため、また大学院で研究を極める者として今のうちから大学院を意識した勉強を始めたいと考え、3年後期での目標点を高く設定し、それに向かって平均点をむしろ上げるぐらいの強い"挑戦"心で期末試験に臨みました。結果的に目標点は(ギリギリではありましたが)達成し、また後になって成績上位者が利用可能な大学院学費減免制度の存在を知り、平均点を上げたおかげでこの制度の適用対象になったので頑張った甲斐がありました。 大学院進学を早々に決意したことで、就活の道に進んでいればできなかったであろうことをいくつもすることができました。 3月に実施した「 日本半周ぐるり旅 」および「 東京旅行 」は、ちょうど学内外での会社説明会全盛期に実施したものでした。また、月1回で連載を開始した4コマ漫画「女パソ~とある女子パソコン部の日常~」も、もし就活をしていれば落ち着いて原稿を描く時間が取れず、連載そのものができないか、できたとしても不定期公開となってしまい満足いく作品制作ができなかったと思っています。就活の状況によってはイラストを描く精神的余裕すらもなくなり、せっかく軌道に乗りつつあったイラスト・漫画制作という趣味を再びあきらめざるを得なかったかもしれません。この半年間はまだ時間的余裕がたっぷりとあったため、イラストを何枚も描き、漫画も並行して制作することで、イラストのスキルだけでなく、4コマ漫画に必要とされるギャグセンス、また2014年に制作し、現在ブログにて連載中の自作小説「ワールド・インターチェンジ」以来放置していたシナリオ制作のスキルを大き