2025年7月1日、私 廻音あじおは2020年7月1日の活動開始から5周年の節目を迎えました。5周年を迎えるにあたり、運営VRクラブワールド「HeXaHedron」の大規模改装・ロゴ刷新・配信イベントのリバイバル開催など、すでに多くの周年企画を行ってきたところではありますが、改めてこれまでご支援・応援くださり、関わってくださったみなさまに御礼申し上げます。2025年上半期振り返り記事でも言及しましたが、1つの名義である程度決まった内容・方針でこれほど長く活動してきたことはなく、またこれほど多くの方と関わりながら活動してきたのも初めてでした(期間だけで言えば前に名乗っていた名義がTwitterアカウントを畳むまでの約12年半使い続けていたのですが、当時は2~3年おきに趣味がコロコロ変わっており、またフォロワー数もピーク時で550前後でした)。
そこで今回はこれまで応援いただいた方々への感謝と6年目以降への決意の意味を込め、また私自身の個人的な整理・振り返りも兼ねて、これまでの活動について簡単に振り返っていきたいと思います。まぁ簡単に、と言いつついつも通り長文になるかとは思いますが(笑)、どうぞお付き合いくださいませ。
DJ活動開始のきっかけ
「廻音あじお」として活動を開始した2020年はまさにコロナ禍の真っ只中でした。当時別名義で同人活動をメインにやっていたのですが、コミケなど各種即売会の中止をはじめとした急激な環境の変化が要因となり、同人活動の継続が難しく感じるほどモチベーションが落ちてしまいました。当時、同人活動以外にこれといった趣味がなかったため、もし完全に筆を折るような事態になればただ毎日仕事に明け暮れるだけの人間になってしまうと思い、これからの趣味・余暇の過ごし方について自分と向き合って考えてみることにしました。
そんな中、当時私が出展する即売会でよく売り子を手伝ってくれていた友人が以前からDJ活動をやっており、あるとき実際にDJをしている様子を見たのですが、DJ機材を駆使して次々と曲をつなぐ技術、曲ごとの盛り上がり、ドリンクを飲みながら音楽を楽しむ空間…すべてが新鮮な光景・体験であり、自分にとっての「同人活動に代わりうる新しい趣味」を見つけた瞬間でもありました。その数日後には自分もrekordboxをダウンロードし、早速手持ちの楽曲をインポートするとともに、たまたまボーナスが近かったこともあり、思い切ってDDJ-400を購入するなど、DJを新たな趣味とすべく準備を進めました。
バーチャルDJ「廻音あじお」としての出発
新たな趣味としてDJを始めるにあたり、これまでの名義を使い続けることに特に問題はなく、実際その名義で過去に作曲もやっていました(なんなら前述の友人のDJ仲間には当初旧名義で自己紹介していた)。しかし、DJという全く新しい趣味を始めるにあたり、どうせやるなら心機一転完全に0からのスタートを切ってみたいという思いが沸き起こり、当時急拡大していた「バーチャルYouTuber」の考え方をDJに落とし込んだ「バーチャルDJ」として活動することを決め、その際名前も「廻音あじお」という全く新しいものを名乗ることにしました。当時の私はVRChatをやっていませんでしたが、VRoid Studioというオリジナルアバターを作成できるアプリと、それを動かすことができるアニメーション・トラッキングソフトの存在はそれぞれ知っていたため、これらを活用してバーチャルな存在として活動していくことにしたわけです(当時コロナ禍だったこともあり、すでにいくつかのパーティーがTwitch等を活用したオンライン開催を行っているなど、オンライン中心でDJ活動をしていくということに不自然さ・奇抜さはありませんでした)。
初の配信DJパーティー主宰
こうして「廻音あじお」としての活動を開始することになったわけですが、コロナ禍が継続していたことに加え、そもそもクラブカルチャーをほとんど知らなかった自分には右も左もわからない状況で、前述の友人やそのDJ仲間向けにMixを披露するなど、表立ったイベント出演はしばらくありませんでした。
そんな中、あるとき応募したDJ公募企画で転機が訪れます。その公募企画は「10~15分のショートMixを提出してもらい、それをTwitch配信で実際に聴きながら選考する」というものでした。私は残念ながらその公募は一次選考で落ちてしまったのですが、その選考配信中にあるリスナーがコメントした「この募集Mixだけでイベント作れそう(なぐらいどのDJもレベルが高い)」という言葉にインスピレーションを受け、配信終了後すぐに企画メモを起こしました。
ショートMix専門オンライン配信イベント「10 Minutes to Mix」誕生の瞬間でした。
私は同人活動をやっていたころに合同誌(複数の作家で原稿を持ち寄って一つの同人誌を作る形態。二次創作本の場合非公式アンソロジーともいう)の主宰経験があり、段取りの感覚も覚えていたため、Twitch配信イベントをやるにあたり必要なことを調べたり知り合いに聞いたりしつつ、その公募企画からわずか2週間で「10 Minutes to Mix」第1回を開催しました(新しい分野に対する行動力の高さはこのときの自分の特徴だと思っていますが、それにしてもこのスピード感は我ながら異常な早さだったと思いますw)。
「第2の活動開始」VRDJとしてのデビュー
「10 Minutes to Mix」の主宰を始めてからは、2ヶ月に1回のイベント開催のほか、この頃から感染症の状況が落ち着いたタイミング等でリアルDJイベントにお誘いいただくことも増えてきていました。
そんな折、知り合いのDJがVRChatで出演するということで、VRクラブパーティーに初めて参加。VRChat自体はその1ヶ月ほど前からたまたま始めていたのですが、friends+のインスタンスにjoinすることや、そもそもVRChat内で誰かと話したり誰かのDJプレイを聴くという経験が初めてだったため、単に知り合いのMixをVRChat内で聴くことができたこと以上に多くの経験をすることができました。さらにそのイベントに出演していたDJが出演する別のクラブイベントにも参加したり、出演DJが主催しているイベントに遊びに行ったり、といったことを繰り返しているうちにVRクラブカルチャーにハマっていき、2022年1月に私自身もVRChat内で初めてのDJ出演を果たしました。
その後もVRクラブイベントには積極的に足を運んだり、ご縁があって出演させてもらったりと、このVRDJデビューはある意味「廻音あじお 第2の活動開始」だったといえます。
ちなみに、VRChatの存在自体は実はこの約1年前に知っていて、それこそ私が活動開始して間もない2020年9月ごろ?に出会った知り合いの一人がVRDJでした。このとき私はVRChatというプラットフォームに興味をもちつつ、(VR機器を持っておらずそれを購入する余力もなかったこともあり)結局それ以上のアクションを起こすことはなかったのですが、もしこのときにもう少し踏み込んだアクションをして、デスクトップででもVRChatを始めていたら…?VRクラブイベントに足を運ぶのがあと1年早かったら…?などといったifルートを、今でもふと考えることがあります。
苦悩を乗り越えて
ある時「自分もVRC上で定期的なイベントを主催してみよう」と思い立ちます。定期イベントといえば前述の「10 Minutes to Mix」も隔月開催で主催していましたが、VRCでは毎週・隔週開催のイベントが大半ということもあり、隔週開催の主催イベント「Channel CUEration」を立ち上げました。
なお、「Channel CUEration」立ち上げに至る詳しい経緯やイベント開催にあたって当時考えていたことについては、2023年11月に配信された「たまごまご」さんのライブ「VRDJに聴く!」でもお話しています。およそ1年半前のライブ配信にはなりますが、VRDJを始めて間もないころの話をメインにトークしていますので、ぜひご覧いただければと思います。
さて、そんな中私はVRクラブイベント主催としての壁に直面します。私は誰に誘われるわけでもなくVRChatを始めたりVRクラブに通い始めたりしており、いわゆる「同期」といえるような存在がいませんでした。「Channel CUEration」も私一人で立ち上げたイベントで、VRクラブカルチャーに精通したクルーもレジデントDJもいません。そのような状況で最初の数回に連続して30~40人近い来場者を記録し、「大きな成功体験を最初に経験してしまった」ことも思い悩む原因になったといえます(後年になって聞いた話では、このころのVRクラブイベントはメジャーなジャンルやある程度回数を重ねたイベントはともかく、ニッチなジャンルや立ち上げ間もないイベントではお客さんが10人未満や、場合によっては出演者以外誰もいないみたいなことが当たり前だったそうです)。貴重な時間を取っていただいて出演いただいたのにそのパフォーマンスをより多くのお客さんに見せる場を用意できなかった申し訳無さ、もっとプロモーション・パーティーメイキングでできることはなかったのかという自責の念、誰も悪くないからこそのやり場のない複雑な感情に苛まれ、一時は「Channel CUEration」を畳むことも考えました。しかしそんな時、あるフレンドからかけてもらった一言で目が覚めます。
「お客さんが50人来てくれるのと、"このイベントが楽しみでイベント情報をチェックして足を運んでくれた"お客さんが10人来てくれるのと。あなたが望むのはどちらか?」
この時の私は、(Channel CUEration開催にあたり参考にしたイベントがそうであったこともあり)フロアをお客さんでいっぱいにする(インスタンスフルにする)ことがイベントとしての成功だとばかり考えてしまい、クラブイベントとしての本質を見失っていました。DJ活動を始めて1年半、イベントオーガナイズを始めて1年少しだったとは言え、当時の自分のイベントオーガナイズに対する考え方は未熟だったと思います。それ以降、「いまフロアにいるお客さん・DJに、音楽を通じて楽しい時間を過ごしてもらう」ことを一番に考えて運営することを常に意識し、この考え方はのちに後述する音響の追求へとつながっていきます。
VRでの音の探求
前述の苦悩を乗り越えChannel CUErationを継続開催していたある時、リアルで音響関係の仕事をしているというフレンドと話す機会があり、そこで聞いた言葉にインスピレーションを受けます。
「VRDJ・VRVJは増えてきたけど、そういえば"VRPA"っていないよね」
私自身DJ活動を始める前から作曲や音響関連の趣味をやっていた時期があったこともあってPAの存在・重要性は認識しており、リアルクラブにおいては箱専属の音響エンジニアがついていたり、野外イベントでは0からのスピーカーセッティングや音響チューニングなど、PAが特に大きな役割を果たしています。しかしながら、このころのVRクラブイベントは配信音声をそのまま流しているところがほとんどで、配信音声に対してエフェクトを加えたり音量を微調整したりしてワールドに送出しているイベントは私の知る限り存在せず、「だったら自分がその先例になろう」と動き始めて構築したのが、現在私が運営するVRクラブワールド「HeXaHedron」です。
HeXaHedron開店までの経緯や音響関連の詳細なこだわりについては過去に記事を書いているのでそちらをご参照いただくことにして、HeXaHedronで導入した音響システムはリアルでも活動されている方を含む多くのDJに高く評価いただいており、またHeXaHedron開店以降何らかの形で音響に工夫をこらしたワールドが増加傾向にあることからも、「VR音楽シーンにおける音響の向上」に微力ながら貢献できているのかなと自負しています。
VR→再びリアルへ。リアルイベント開催を経験して
いわゆる「VRクラブイベントのリアル開催」の動きは、私がVRDJとして活動を始めた2022年ごろからすでにありました(当時はコロナ禍が終息していないこともあり、種々の制限がある中での開催だったのを記憶しています)。ある時、私がCrewを務めているイベントでも1周年のタイミングでリアル開催をしようという話になり、私が(一応)リアルDJ出身であることや(後に実際に1周年を開催することになる)箱のオーナー・リアルでサブカル系の大きなイベントを主催していた方とのコネクションがあったこともあり、このリアルイベント開催に深く関わっていくことになります。このあたりの詳しい話は、実際に1周年リアイベを終えての所感として記事を書いていますのでそちらをご覧いただくとして、「VRクラブイベントのリアル開催」は単なるクラブイベントというだけでなく、VRChatter同士の「オフ会」の側面もあることをこのとき強く実感しました。このイベントは「VRクラブイベントのリアル開催」としては比較的後発だったのですが、これらリアルイベントがオフ会の側面をもっておりイベントごとで異なるコミュニティがあることも考えれば、リアル開催に早い遅いは関係ないのだと感じました(実際に2025年現在でもVRクラブイベントのコミュニティが新たにリアルイベントを開催する事例が見られます)。
6年目、その先に向けての抱負
言うまでもなく、5年という数字は通過点に過ぎず、VRCのフレンドにもリアルを含めて10年以上活動している方が多くいらっしゃることから、自分はDJキャリアとしてはまだまだ浅いです。しかしながら、この5年間の活動がVRをはじめとしたオンラインメインであったことに着目すると、例えばVRクラブイベントでも多くの来場を毎回記録しながら主催者の意向もあり1年ほどでその物語を終えたイベントがあったり、新たなDJが続々デビューしたかと思えばライフステージの変化等もあり気がついたら疎遠になったDJもいたりと、DJに限らずオンラインの世界は日々変化の連続です。そのような場において5年もの間(途中リアル→VRというプラットフォームの変化こそありましたが)ほぼ同じ内容・方針で活動し続けて来られたことは、単なる5年という期間以上の価値があると思っています。
今後、引き続きVRCをはじめとしたオンラインを中心に活動していく以上、この先の活動について長期的な見通しを立てるのは容易ではありません。もしかしたら「廻音あじお 第3の活動開始」として新たなプラットフォームで活動していくことになるかもしれません(笑)。しかしながら、私がこれからも音楽を好きであり続ける限り、DJ・トラックメイキングをはじめとして音楽に関わる活動は今後も続けていきたいと思っていますので、これからも廻音あじおの活動を応援いただけると嬉しいです。
また、最近は過去に別名義でやっていた同人活動のうちイラスト制作について、廻音名義で細々と再開し何枚かSNSにも公開しています。当時はガッツリ色を塗り込むイラストを描くことが多かったのですが、廻音名義で再開してからはアナログ画用紙に鉛筆と絵の具で描くような質感にこだわるようになりました。こちらについても今後どれぐらい活動を拡大できるかは未知数ですが、実はフレンドにイラストを描ける人を何人か知っているので、それこそかつてのような合同誌を出してみるなど、イラスト方面でも今後チャレンジできることがあれば積極的に取り組んでみたいと思っています。
最後になりましたが、改めてこの5年間活動を続けてこられたのはフレンド・フォロワーの皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。