俺たちは「せーの!」の掛け声で、同時にそれぞれのアルバムの一ページ目をめくった。 「……」 俺はその瞬間目に飛び込んできたそれを見て、瞬間的に感情が高まり、涙を流すことを余儀なくされた。俺のアルバムの一ページ目、寝る前に確認した時には俺しか写っていなかったその写真は、夢香とのツーショット写真に変化していた。写真の中の俺は、別れを惜しみつつも最後まで夢香に心配をかけたくないとの思いで必死の笑顔を見せていた。夢香は俺との別れに加え、一生消えない傷を負わせてしまった相手とのツーショットが申し訳なく感じるのか、笑顔でありながらも少し浮かない表情だった。 「びっくり、しましたか?これが、私が誠さんを世界移動させた結果です。私は誠さんを、私の存在がなかったことになっている世界へ移動させました。ですから、アルバムの中からも私は消えていたわけです。もちろん、ここは世界の移動が関係ない場所ですから、誠さんはこのアルバムの本来の姿……つまり、私が写っているアルバムを見ることができたわけです」 「え?それは、どういうこと?」 「実を言いますと、誠さんは一度、ご家族から私の訃報を聞いているんです。というか、私たちは実は一年前に今と同じ形で会っているんです」 「え……そうなのか?ごめん、覚えていない」 「それもそのはずです。その理由を教えます。私が世界移動の技術を身に着けて間もないころ、つまり私が死んでしばらくたったころ、誠さんは私が死んだショックで自殺しようとしていました。でも、私は誠さんには私の分も生きてほしいと思っていました。だから、世界移動の練習もかねて、誠さんをこの世界に呼び出し、竜野夢香という存在が限りなくゼロに近い世界に移動させたのです。実は、私が初めて世界を移動させたのは、誠さんだったんですよ」 それは俺が知らなかった、というか、夢香によって消し去られていた、俺の本当の過去だった。俺は続けて質問する。 「じゃあ、夢香はどうして俺のことを忘れていたんだ?」 「今、私が言った言葉を思い出してみてください。私は誠さんを、「私の存在が限りなくゼロに近い」世界に移動させた、と言いました。そのことにより、誠さんはおろか、誠さんの家族、さらには私の家族まで、私自身の存在をほぼ忘れてしまいました。そして、その反動のようなもので、私自身も家族や友人、誠さんについての記憶があ
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