今回はHPのエントリークラスゲーミングノート「Victus 16」のAMD CPUモデルを購入しましたので、開封の様子とファーストインプレッションをお送りします。
購入理由としては、私廻音あじおが今後力を入れて取り組もうとしているVJ・映像制作等で必要となったからです。主にDJ・トラックメイキングで使用しているMacBook Pro(13インチ・2020年モデル)は、グラフィックがCPU内蔵のもので、DJやトラックメイキングの場面では特に不満のない性能でしたが、最近急きょVJをピンチヒッターで任された際にこのMacBook ProにResolumeを入れてオペレーションしたところ、CPU使用率がほぼ100%に張り付き、使用する映像素材によっては映像がカクついたりスムーズに映像切替ができなかったりと、明らかに性能不足を感じました。今後、主にVRChatにおいてVJにも力を入れていくことを考えたときに、VIVE Cosmosを接続して使っているVR用PCに匹敵する性能のPCが必要だと判断。とはいえ、VJの現場でユーザが多いMacBook Pro 15インチモデルは高額なため、もう少し手頃な価格のPCがないか探していたところ、以前からたびたびお世話になっているHPからコストパフォーマンスに優れたゲーミングノートが発売されていたため、購入した次第です。
それでは早速開封していきましょう!
今回購入した「Victus」シリーズは、もともと「Pavilion Gaming」ブランドとして展開されていたモデルラインで、「Pavilion」ブランドがミドルレンジをカバーするところからも分かるとおり、主にエントリーゲーミンググレードのPCをラインナップしています。HPのゲーミングPCブランドにはほかに「OMEN」がありますが、それと比較して「Victus」はPCゲームをプレイするに十分なスペックを備えつつコストを抑えられる部分は抑え、またデザインも派手すぎないものとすることで、私のようなクリエイター用途や、普段づかい用PCとしても使いやすいものとなっています。
というわけなので、PCが送られてきた外箱は無機質なダンボールで、内部の緩衝材も紙ベースの最低限のものでした。過去に「Spectre」シリーズを使用していた時期もあり、そちらは豪華な化粧箱入り(内部の緩衝材はスポンジ)の高級パッケージングでしたが、このあたりでグレードの違いを思い知らされます…
今回購入したのはVictus 16(AMD CPUモデル)の最上位の「アドバンスモデル」で、CPUにRyzen 7 5800H、ディスクリートGPUにNVIDIA GeForce RTX 3060 Laptopが搭載されたものです。今回はHPの公式通販から購入しましたが、ちょうどキャンペーン期間中で、本体価格が定価より5万円以上値引きされていたほか、HPのゲーミングマウス「VECTOR Essential」(HP希望小売価格5,940円相当)が無料でついてきました。納品も早く、注文から4営業日程度で手元に届きました。
こちらがマウス本体。ベーシックな5ボタン有線マウスで、ゲーミングマウスよろしくDPIの変更ボタンが搭載されているほか、手前のロゴはRGBに光らせることができます。これらは「OMEN Gaming Hub」という専用ソフトから設定を変更することができます(「OMEN」と冠していますがVictusにもプリインストールされています)。
それではPCの紹介に戻りましょう!まずはセットアップ手順・保証関連ドキュメント。過去にHPのPCを購入した際は「速効!HPパソコンナビ特別版」が同梱されていましたが、Victusにはついてきません。まぁPCゲームを楽しむユーザ向けPCにパソコン初心者向けガイドブックをつける意味はないので…
ACアダプタと電源コード。ACアダプタはVictusに搭載のCPU・GPUをフルパワーで稼働できるよう、200Wの給電ができる超大出力仕様となっています。Pixel 4aと比較すると、二回り以上も大きいです。まぁ一昔前は一般的なノートPC向けACアダプタでもこのぐらいのサイズ感はあったので、それに比べれば最近のACアダプタは出力あたりのサイズがずいぶんコンパクトになったといえます。
それでは本体の紹介。天板にはVictusのロゴがあしらわれており、いい意味でHPらしくない、シンプルなデザインです。天板・本体はプラスティックでできており、カラーはホワイトのみです。Pavilion Gamingはブラック系の色だったことと、白のプラスティックは時間が経つと黄ばんでしまうので、そこだけは心配です(まぁ廻音のことなので黄ばんで見栄えが悪くなる前に新しいモデルに買い替えることになると思いますがw)。
MacBook Pro 13インチと比べると二回りぐらいサイズ感が違います。なんだかんだこれまで購入してきたノートPCは13~14インチがほとんどだったので、15インチ以上のノートPCはかなり久しぶりです(2014年に一時期使っていたCritea DX4 with Bing以来?)。
ヒンジ部分にはディスプレイサイズ(後述)を示す「016」の数字などが刻まれており、シンプルなデザインの中にもゲーミングPCらしい要素が盛り込まれています。
左側面の端子類。電源入力・LAN端子・HDMI出力・USB端子(A・C各1個ずつで、電源オフ時給電対応)。やはりゲーミングPCらしく、有線LANをアダプタなしで接続することができるようになっています。近年は高速なWi-Fi 6も登場し、当然Victus 16もWi-Fi 6に対応していますが、やはり無線よりは有線のほうが確実です。また、前述の「OMEN Gaming Hub」から、無線LANと有線LANを両方接続している場合にどちらで通信させるかアプリケーションごとに指定することもできます。
右側面にはUSB-Aが2つと、排気口があります。Victus 16はヒンジ側がほぼ全面排気口になっていますが、加えて右側面にも排気口を設けることで大容量のエアフローを実現しています。
厚みは23.5mmあり、現在使用しているMacBook Proの15.6mmなどと比較しても非常に分厚いです。重量も2.46kgあり、さすがにモバイルノートのようにどこへでも気軽に持ち運べるようなものではありません。とはいえ、デスクトップPCに比べれば機動性は明らかに高く、本体・ディスプレイを置いてコンセントをつないで、各種ケーブルをつないで…といった準備が不要で、ノートPCを置いてカバーを開き、ACアダプタとマウスをつなげばすぐゲームをプレイできる手軽さはデスクトップにはない魅力といえます。もちろんこの機動力の高さはゲーム以外にも言え、例えば外部の現場でVJをする場合でもいつもの高性能環境を小脇に抱えて持っていけるのは私の使用用途的にも魅力的なポイントです。
カバーを開けるとこんな感じ。ディスプレイは16.1インチFHDで、いわゆる「デスクノート」と呼ばれるサイズ帯で一般的な15.6インチよりも一回り大きいディスプレイサイズとなっています。しかしながら、最近流行りのベゼルレスデザインとなっているため、フットプリントとしてはベゼルの太い15.6インチノートとほぼ同等です。画面は非光沢に分類されますが、一般的な非光沢ディスプレイよりも表面がなめらかなので映像がより鮮やかに見えます。最大の特徴はリフレッシュレート144Hzに対応しており、PCゲームにおいて極めてなめらかな映像を体験することができます。普段づかいにおいても残像感の少ない映像を楽しむことができます。
一方で、発色が全体的に若干白く、ややコントラストに劣ります。もともとがIPS液晶なので発色が極端に悪いわけではなく、FullHD・144Hz対応なのを考えると、コストパフォーマンス面で必要十分なスペックと言えますが、クリエイター用途で使用する際はこの点は意識しておく必要があります(発色を特に重視する場合は、リフレッシュレートは一般的な60HzとなりますがENVY 15などRGBカバー率がより高いモデルを選んだほうが良いでしょう)。
ディスプレイ上部にはWebカメラもあります。Windows Helloの顔認証は非対応で、カメラの回路を切断するスイッチも非搭載です。
キーボードは15インチノートPCによくある標準的なテンキー付き配列です。OMENはフルサイズのテンキーレスキーボードをベースにした配列のため、テンキーがありません。この点でも、Victusはゲーミング以外のクリエイター用途・一般的なノートPCとして使いやすい要素といえるでしょう。キースイッチもOMENの上位モデルはメカニカルキーボードを搭載しているのに対し、Victusは普通のパンタグラフタイプです。打鍵感も普通のパンタグラフキーボードと言った感じで、文字入力を行ううえで特に不満はありません。より正確なキー入力を求める場合は外付けでキーボードを接続すると良いでしょう。
また、ファンクションキーがデフォルトでFnキーを押さなくてもF1~F12として機能する点はグッドです(HPのほかのモデルも設定を変更することでFnキーを押したときの挙動を変えられる)。ファンクションキーには他のモデルと同様音量やキーボードバックライトオンオフなどのホットキーも割り当てられており、これらはFnキーとの同時押しで操作できます。
マイナスポイントを挙げるとすると、Home・Endキーが独立したキーとして存在しないことでしょうか(テンキーのNumLockをオフにすることで一応使えるが、NumLockインジケーターランプがないのでわかりにくい)。テンキー最上部のホットキーはOMEN Gaming Hub・電卓の起動キー、Insert、PrtScキーとなっています。Insertキーは誤って押したことに気づかず行の途中から文字入力をするとカーソル以降の文字がどんどん消えていって焦るので個人的には搭載してほしくないですし、PrtScキーも最近はSnipping Tool等でより手軽にスクリーンショットを撮影できるので、ファンクションキーあたりにFnキー同時押しとかで残す程度にしても良いのではと思いました。
なお、HPの一部モデルではキーボード面に指紋センサも搭載していますが、Victusには非搭載です。すなわち、Victusには生体認証が搭載されていないことになります。外に持ち出すことは想定されていないモデルなので、なくても特に不安には感じませんが、とはいえ生体認証はカメラを見るだけ・指を触れるだけでロック解除できるという手軽さももっているため、ログイン・ロック解除のたびにパスワードやPINを入力するのは煩わしくも感じます(一応自動ログインやロック解除時のパスワード入力省略もできなくはないが、VJとして現場に持っていく可能性もあるため、最低限のセキュリティは確保したいのでパスワードロック&PINロックをかけています)。
タッチパッドは大画面ノートということもありサイズがかなり大きく、ジェスチャーを用いた操作もしやすくなっています。もちろんタッチパッドのキャンセルスイッチも搭載されているので、手があたって誤タッチとなる心配もありません。
キーボードにはバックライトが搭載されていますが、オンオフは手動で、他モデルのように一定時間経過すると自動で消灯する機能もありません。また、明るいところで点灯するとキーの白地とバックライトの白色が重なって文字が見えにくくなるので、薄暗い環境で使用する程度に用途は限られてくるでしょう。
底面。大きなメッシュが開いており、ここから吸気します。左右にファンが搭載されています。
起動画面はもちろんVictus仕様。このあと初期セットアップを手早く済ませます。
それでは早速ベンチマークを計測していきましょう!使用したソフトはCinebench R23に加え、GPU性能を含めたゲーミング性能も計測したいので「3D Mark Time Spy」でも計測します。
まずはCinebench R23の結果から。
こちらがVictus 16のスコア。
こちらはRyzen 5 5600Xを搭載した自作PCのスコア。なんと、ノートPCであるVictus 16のほうが自作デスクトップPCよりもスコアが高いという結果になってしまいました(笑)。もちろんRyzen 5 5600Xの性能が低いわけではまったくなく、VRChatなどのVR体験や動画エンコードなど、あらゆる作業を快適にこなすポテンシャルを持っていますが、さすがにRyzen 5 5600Xの6C12T・3.7GHzと対してVictus 16のRyzen 7 5800Hの8C16T・3.2GHzとでは、コア数の差が如実にベンチマーク結果に影響を及ぼした形です。
続いて、3D Markの結果。
こちらはVictus 16のスコア。
こちらが自作PCのスコア。CPUのスコアに関してはCinebenchと同様、Victus 16のほうが上回っていますが、グラフィックのスコアは自作PCのほうが上回っており、総合スコアとしては自作PCのほうがわずかに上回っています。実はGPUはどちらもNVIDIAのGeForce RTX 3060なのですが、Victus 16に搭載されているのはLaptop GPU版で、デスクトップ版よりBoostクロックが最大でも約1.70GHzとやや抑えられています。対して、私の自作PCに搭載しているMSIの「GeForce RTX 3060 GAMING X 12G」はデスクトップ版の定格Boostクロック1.78GHzに対し約1.84GHzにオーバークロックされており、この点でスコアに差が生じた形になります。とはいえ、ゲーミングデスクトップ並の性能を持っていることは間違いなく、実際にSteamのいくつかのゲームをプレイしてみましたが、自作PCと同じグラフィック設定で快適にプレイすることができました。
ちなみに、Victus 16(AMDモデル)に搭載されているRyzenにはCPU内蔵グラフィックとして「Radeon Graphics」も搭載されており、通常の画面表示や動画視聴程度の低負荷時はRadeonのみが動作し、ゲームやベンチマーク、動画エンコードなど高負荷時にディスクリートGPUとしてGeForce RTX 3060 Laptopが動作を開始する形になっています。
ところで、上記のベンチマーク結果はいずれも高々数分間の計測の結果ですが、実際のゲームにおいてはより長い時間プレイすることが想定され、そうなってくると発生するのが熱の問題です。実際にVictus 16においてCinebenchを計測していた際、最初は少しクロックにブーストがかかっていたものの、4~5分が経過しCPU温度が高くなってくると徐々にブースト幅が小さくなり、最終的にベースクロック付近で推移しました。冷却ファンの音についても、ネットサーフィンをする程度の負荷であればファンはほとんど回転しないか、静かに回るだけですが、長時間負荷がかかると強力に回転するようになり、グラフィックを長時間高負荷で使用した際にファンが最大回転で回っている際には、目の前でファンが回っていることもあり、密閉型ヘッドフォンをつけていてもかすかにファンの音が聞こえるなど、かなり耳障りに感じます。一方自作PCなどのデスクトップPCは、(装着しているクーラーの種類にもよりますが自分が使用している製品の場合)冷却能力には余裕があること、大口径のファンがゆっくり回転していること、これら騒音源を足元に置いていることから、高負荷が長時間続いても安定した性能を発揮し続け、騒音も比較的穏やかである点がノートPCとの決定的な違いで、デスクトップPCが大きく優れているポイントです。今回私はVJ目的で可搬性と性能に優れたゲーミングノートを選択しましたが、もしこの記事をご覧の方がゲーミングPCの購入を検討されている場合は、私はデスクトップタイプを強く推奨します。
バッテリー持続時間はスペックシート上最大8時間30分となっていますが、実質的にはバッテリーは停電時の非常用(言ってみればUPSが内蔵されているようなもの)で、基本的には電源に接続したまま使用することになります。満充電の状態からSteamのゲームをプレイしてみたところ、1時間ほどでバッテリー残量が25%まで低下しました。また、バッテリーのみだと供給電力が足りないのか、FPSが落ちる場面があるなど明らかに性能が低下していました。「持ち運びが手軽で、ディスプレイ・キーボード(・タッチパッド)・(UPS代わりの)バッテリーが搭載されている"デスクトップ"ゲーミングPC」と思って使ったほうが良いかと思います。
その他、個体差(初期不良?)なのかハードウェア仕様なのか、デバドラがWindows11に対応していないのかはわかりませんが、ヘッドセット端子から出力される音声のLOWとHIが異常に弱く、またマイク入力が動作しませんでした。今回のVictus購入に併せて、思い切って2万円台のゲーミングヘッドセットも購入したのですが、ゲーミングヘッドセットで一般的に強く出るようニューニングされている事が多い重低音が全く出ず、「ゲームとかでプレイヤーのボイスが聞きやすいようにローハイカットのカマボコチューニングにしてるのかな?だったらパッケージとかにそう書いてよ~!」と思いましたが、別のPCにつないだところ迫力の重低音が出力され、高音も普通に鳴っていました。VJの現場においてヘッドセット端子を使うことはないのと、せっかくだしということで奮発してドングルタイプのUSB DACも購入したこと、修理が持ち込み修理となりその間VJができないことからいったんこの問題は棚上げすることにしましたが、購入される方はご注意ください。
また、Victusには2022年6月現在、標準でWindows 11がインストールされていますが、これがとにかく使いにくい!高々1ヶ月弱しか使っていませんが、すでに記事が1本書けるレベルで不満点が続出していますwまぁネガキャン記事を書くための労力をかけるのも馬鹿馬鹿しいのでそのような記事は出しませんが、いまWindows10を使っている方は特段の事情がない限り「Windows11が最低限使えるようになるまではアップグレードはしない、自動アップグレードのオファーも拒否する」ことを非常に強く推奨します。個人的な印象としては現在の状況はWindows10リリース直後のそれよりもひどいと思っており、Windows10のサポートが2025年までとされている中でそれまでにWindows11が10と同等以上の使用感になるとは到底思えません。VRChatを含めPCゲームやVRChatでの活動で使用するソフトウェアの一部がWindowsにしか対応していないため、残念なことにWindowsを使い続けなければならない状況は今後も続くと思いますが、少なくともWindows10のサポートが終了する2025年までには今より少しでも使いやすいOSになってくれていることを神に祈るばかりです…
というわけで、Victus 16のファーストインプレッションをお送りしました。ヘッドセット端子のこととWindows11のことはさておき、コストパフォーマンスには大変優れているモデルだと感じました。今回私は最上位のパフォーマンスモデルを購入しましたが、もっとライトなオンラインゲームで遊ぶ程度の用途であれば最下位グレードとしてRyzen 5 5600H・GTX 1650 Laptopの「モデレートモデル」もあり、こちらだと10万円程度(Pavilionなど他モデルの中上位グレードぐらいの価格)で購入できますので、手軽にゲームを始めてみたい方、ゲームはしないけどそこそこ高性能なノートPCを手頃な価格でゲットしたいという方は検討してみてはいかがでしょうか?
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!