今回はApple MacBook Proの2020年モデル(第10世代Coreプロセッサ搭載モデル)を購入しましたので、ファーストインプレッションをお送りします。
今回約1年半ぶりに再びMacBookシリーズを購入した理由としては、最近力を入れて取り組んでいる音楽活動で必要になったからです。7月からVtuber「廻音あじお」とともにバーチャルDJの活動のほかアニソンのRemixを行うようになりました。当初はそれまでの手持ちのノートPC「HP Spectre x360(2019年12月モデル)」にDAWソフト「Cubase」を入れて打ち込みを行っていましたが、Cubaseが利用する「ASIO」規格がとかくWindowsと相性が悪いことがネックでした。例えば手持ちのFostexのDACはASIOに対応しておらず、以前Amazonで適当に購入していた安物のUSB DACがたまたまASIOに対応していてそれを使うことにするも、安物なので時々ノイズが入ったり、PC周りの配線の関係でこのDACからスピーカーに音声を出力するのが容易でなく、いつもヘッドフォンでリスニングしていたものの、最小音量が大きく大音量での楽曲制作を余儀なくされていました(音楽を作る立場にありながらかなり耳に悪いことをしていました……)。また、かろうじて使えたDACもレイテンシがひどく、MIDIキーボードでの打ち込みもまともに行えないという有様でした。Macが楽曲制作周りで非常に強いことは以前から知っていましたので、ここで再びMacBookシリーズ購入を検討。長期間活動を続けていくことを前提に、性能に余裕のあるMacBook Proのミドルハイモデルの購入を決意した次第です。
それでは早速開封していきましょう!
今回購入したのはMacBook Pro 13インチ、第10世代Coreプロセッサ搭載モデル(Thunderbolt端子4つ搭載)です。RAMは16GB、SSDは500GBと、楽曲制作やDJを行うには必要十分なスペックです。
2019年モデルからMacBook Pro全モデルがTouch Bar搭載モデルとなったため、違いとしてはCPUの世代とThunderbolt端子の個数ぐらいになりました。なお、私が購入したMacBook Proが手元に届いたのとほぼ同じタイミング(2020年11月)で、その下位モデルの搭載CPUがApple M1に変更となりました。Apple M1搭載モデルリリース後も私が今回購入したIntel CPUモデルは上位モデルとして継続販売されるようです。
付属品としてはいつものMacBookシリーズと変わりなく、ACアダプタとUSB type-Cケーブル、クイックスタートガイドなどのドキュメント、そしてAppleのロゴステッカーです。ACアダプタとUSBケーブルは手持ちのサードパーティ製品を使用するため今回は使用しません。
天板を手持ちのiPad Proとツーショット。色はスペースグレイを選択しました。画像ではわかりにくいですが、やはりiPad Proのほうが若干色味が濃いです。
CPUクーラーの排気口がヒンジ側に左右1つずつあります。画像はありませんが底面の左右にスリットがあり、ここから吸気しています。
左側面。Thunderbolt端子が2つあります。
右側面。こちらにもThunderbolt端子が2つあります。USB type-A(いわゆるフルサイズUSB端子)はありませんが、USB type-Cのアクセサリもだいぶ普及してきましたので、使い方次第でMacBook Proを大きく拡張することができます。
また、ヘッドフォン端子も備えています。普通に音楽を聴くだけならBluetoothヘッドフォンで事足りますが、楽曲制作のような遅延が無視できない用途に使用する場合、有線ヘッドフォンを繋ぐことができるのは心強いです。
ディスプレイは13.3インチ、解像度は2560x1600です。最近のノートPCのトレンドとしてディスプレイ部分をベゼルを極力削り、画面サイズをそのままに本体サイズを小さくする設計が流行っていますが、MacBook Proは2016年モデル以降フットプリントは1mmも変わることなく現在に至ります(厚さのみ年代によって僅かに変化)。フットプリントが変化しないため、特にケースやカバーなどのアクセサリ類がそのまま流用できる、選択肢がより広がるなど、MacBook Proを自分流にドレスアップするのも容易です。ベゼル部分も野暮ったさはなく、デザインと画面への没入感のバランスがちょうど良いです。
キーボードとトラックパッド。今回思い切って英語配列のキーボードを選択したのですが、そのために注文から配送まで1ヶ月ほど待つこととなりました(もともと在庫の少ないタイミングでの注文だったのか、日本語配列を選択しても1〜2週間待つ必要があった)。英語配列は日本語表記が一切ないのもそうですが、あとから気づいたポイントとして「F」「J」キーの突起が日本語配列だとキーのちょうど中心部に設けられているのに対し、英語配列だと一般的なキーボードと同じく中央下部に設けられています。
キーボードは従来のバタフライキーボードに代わり、16インチモデルは2019年モデルから、13インチモデルは2020年モデルからMagic Keyboardに変更されました。変更、と言いつつ構造的には一般的なパンタグラフタイプなので、従来のキー構造に戻った、と表現する方が正しいかもしれません。私は以前MacBook 12インチ(2017年モデル)を使用していた時期があり、こちらはバタフライキーボードを搭載していたため、使用感を良く覚えているのですが、それに比べるとMagic Keyboardはパンタグラフタイプのためキーストロークは明らかに深くなりました。しかし、ほかのWindowsノートPCのキーボードなどと比べるとキーストロークは浅めで、そのあたりはわずかにバタフライキーボードの面影を残しています。また、バタフライキーボードは「パキッパキッ」という打鍵音がかなり大きく、世代が進むごとに徐々に改善されてきてはいたものの、根本的な解決はなされていませんでした。しかし、Magic Keyboardはパンタグラフタイプであることもあってか打鍵音はかなり静かで、少し強めにタイピングしても大きく響かず、静かなカフェや列車内でも気兼ねなくキーボード入力を行うことができます。
キーボード部分のもう一つの変化点として矢印キーが逆T字型に「戻された」ことです。バタフライキーボードに変わったタイミングで矢印キーの左右キーがキーボード最下段のほかのキーと同じ縦幅に変更され、手探りで矢印キーを操作することができず不評だったようです。実際に自分もMac・Windows問わず矢印キーが逆T字でないモデルをいくつか経験してきましたが、どれも使いにくかったのを覚えています。Magic Keyboard導入のタイミングで英語配列・日本語配列ともに矢印キーが逆T字型に戻され、再び手探りで矢印キーを操作できるようになりました。
トラックパッドは非常に大きく、複数指ジェスチャなども容易に行えます。一方でタイピング時はトラックパッドに手が触れてしまうとカーソルが飛んでしまったりするため、気になる人は事前に店頭などでタッチアンドトライをしておくと安心かと思われます。
キーの上部には「Touch Bar」が搭載されています。これは2016年モデルから搭載が始まったもので、2019年モデル以降はすべてのモデルがTouch Bar搭載になっています。ほかの物理キーのように指で触れてキーの場所を確かめてから押下する、みたいな押し方ができない(Touch Barに触れた瞬間に入力の判定になってしまう)など、慣れを必要とする部分もありますが、音量ボタンやスクリーンショット取得ボタン、IME切り替えボタンなど自分の必要な機能を必要な分だけTouch Barに配置することができるため、自分の使いやすいようにカスタマイズすることができます。特に英語配列の場合、英数字入力とかな入力を直接切り替える物理キーがなく、Control + Spaceの同時押しを必要としますが、英数字入力 - かな入力を切り替えるボタンをTouch Barに配置しておけばそこをタッチするだけでまるでWindowsノートPCのように素早く入力を切り替えることができ、大変便利です。
バタフライキーボードはキーキャップと本体の隙間がほとんどなく、キーキャップの端からバックライトの光が漏れることはありませんでしたが、Magic Keyboardでは一般的なバックライト付きパンタグラフタイプキーボード搭載PCと同様、少し光が漏れてよりおしゃれに見えます。
以前使用していたHP Spectre x360(2019年12月モデル)とツーショット。どちらも13.3インチですがSpectre x360は狭額縁デザインを採用しており、フットプリントとしては11インチノートに匹敵するほどです。また、画面のアスペクト比がSpectre x360が16:9であるのに対し、MacBook Proは16:10で、縦に少し長くなっています。これにより、Webブラウジングの際に表示領域が少し拡がるなど、画面を有効に活用できます。
重量は1.4kgと、Spectre x360の1.24kgよりも重く、近年のノートPC軽量化のトレンドからすればかなり重い部類に入ります。しかし、MacBook Proは持ち運びのしやすさではなく性能に重点を置いていますので、重量について述べるのはナンセンスだと思います(とはいえ、自分も頻繁にMacBook Proを持ち運んで使うつもりなので、もちろん軽いに越したことはありませんが……)
それでは性能について詳しく見ていきましょう!
こちらはCINEBENCH R23のスコアです(オレンジ色のバーがMacBok Proのスコア)。当初R20で計測するつもりでしたが、Mac用にCINEBENCHをダウンロードしようとしたまさにその日に、Apple M1に対応したR23がリリースされていました……R20とはスコアに互換性がないとのことでしたので、手持ちのPC(Spectre x360も含む)について再計測しました。
CPUはCore i5 1038NG7が搭載されています。第10世代Ice Lake世代のCPUですが、同じIce Lake世代のCore i5 1035G4(Surface Pro 7やSpectre x360に搭載)とはCPUクロック周波数などが異なり、それに伴ってTDPも1038NG7のほうが高くなっています(1035G4が15W、1038NG7が28W)。1035G4よりもスペックが高いということもあって、Spectre x360で計測した1035G4の2倍以上のスコアを叩き出しており(ただしSpectre x360はもともと電源周りが細く設計されており、負荷をかけると逆にクロック周波数が落ちてしまうため、本来の1035G4の性能を示しているわけではない)、最新の第11世代CPUであるCore i7 1165G7をも上回る性能を誇ります。
前述の通りTDPは28Wですが、Spectre x360などと比べて明らかに発熱が大きいわけではなく、負荷のかかる作業をしていない時は底面が少し熱を持つ程度です。冷却ファンは、Spectre x360はジェットエンジンのような高音が耳につきやすく、またファンの強さが何段階かに分かれているため、ある程度負荷がかかると急にファンの音がし始める、といったような挙動でした。MacBook Proのファン制御は無段階(実際には何段階かあるのかもしれないが、少なくとも耳で聞き取れるレベルではなかった)で、負荷に応じてじわじわとファンの音が大きくなっていく感じです。ファンの音自体も耳障りには感じません。ただし、高負荷時にはかなり大きな音でファンが回転しますので、静かな場所で作業する際は注意が必要です。
バッテリーの持続時間は「最大10時間のワイヤレスインターネット閲覧」とありますが、持ちはあまりよくありません。この記事の下書きもMacBook Proで執筆していますが、みるみるうちにバッテリー残量が減っていき、1回の充電で最後まで書ききることができませんでした。本当はバッテリーの劣化を早めてしまうのですが、外部電源が確保できる場所では基本的に電源をつなぎっぱなしで使用し、電源が使えない場合に一時的にバッテリーで使用する、というような使い方を検討した方が良いでしょう。なお、USB PDに対応していますので、別途モバイルバッテリー等を用意すればコンセントがない場所での使用をある程度カバーすることもできます。
というわけで、簡単ではありますがMacBook Proの開封レビューをお送りしました。これまでCubaseを使用するためにUSB DACが必須で、せっかく手軽に持ち出せるノートPCにインストールしたにもかかわらずUSB DACを忘れてしまうと何もできないという不便さを感じていました。Macであればヘッドフォン端子にヘッドフォンをつなぐだけでDACいらずでCubaseを使用することができ、外出先でも気軽にトラックメイキングができるようになったほか、自宅ではSpectre x360では対応できなかったFostexのDAC(ミキサーを介してスピーカーにつながっている)をつないだハブを接続することで家ではスピーカーで音を確認しながら編集ができるという、まさに理想的な環境を手に入れることができました。今はMacBook ProというよりはMacを購入したことに満足していますが、おそらく性能的にはMacBook Airでも事足りるだろうという中で、妥協せずMacBook Proを購入したことは2〜3年後の音楽活動でその効果を感じることができるのではないかと期待しています。これからのヘス、そしてVtuber「廻音あじお」の活動の良き相棒として、末長く使っていきたいものです(DJをやっている友人が2015年式MacBook Proを今も愛用しているので、自分もそのぐらいは使い続けたいと思ったりw)。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。