今回はAppleの新しいiPad Proを購入しましたので、開封の様子とインプレッションをお送りします。
購入したのは2018年モデルの11インチ、Wi-Fi+Celullar、NTT docomo版です。Apple製品は多くの家電量販店で購入することができますが、当記事執筆時点で大阪に住んでいることもあり、せっかくなのでApple Store心斎橋で購入しました。ご存知の方もいるかとは思いますが、Apple Storeではキャリア版のiPhoneやiPadも購入することができます。家電量販店独自特典(例えばある有料サービスへの一定期間の加入を条件に通信料金をさらに割り引く・ポイント付与するなど)の類はありませんが、ほかのApple製品と同様Appleのスタッフによる丁寧なサポートを受けることができます。私も初めてApple Storeでモノを購入したのですが、初期設定を店頭でスタッフのサポートを受けながら行うことができるだけでなく、アクセサリの購入についてもわざわざスタッフが売り場まで案内してくれたり、パッケージの開封を基本的にユーザの手でさせるなど、製品に愛着を持ってもらうための様々な気配りが感じられました。これで追加料金がないのですから、今後Apple製品を購入する機会があればまたApple Storeで購入したいと感じました。
それでは早速開封していきましょう!といっても、前述のとおり一度Store内で初期設定のために開封しているので、付属品紹介や各部紹介になりますが(笑)
書類一式とSIMカードトレイ引き抜きピン、Appleロゴステッカー。また、今回はキャリア版を購入しましたので、SIMカードの台紙も一緒に入れられていました(SIMカードのセットもユーザが行う体験があるとの情報をweb上で見ていましたが、私の場合はそのような体験はなく、Apple Pencilを開封して中身を確認している間にスタッフがSIMカードをセットしていました)。
付属品はUSB type-CケーブルとUSB ACアダプタ。ACアダプタはUSB PD対応で、最大で5V 3Aまたは9V 2Aでの充電が可能です。
iPad Proは2018年モデルからLightingコネクタに代わってUSB type-C端子を搭載するようになりました。これが私のiPad Pro購入の決め手でした。私は現在使用しているスマートフォン(Huawei Mate 10 Pro)・ノートPC(HP Spectre x360)のいずれも充電や周辺機器の接続にUSB type-Cを採用しており、手持ちの周辺機器もほぼUSB type-Cに特化したものとしていました。iPad ProのコネクタがUSB type-Cになったことでこれらの周辺機器を流用することができ、新たな出費がなくて済みました。特にUSB type-C接続のドッキングステーションを使用すれば、電源やUSBキーボード、ディスプレイ出力、LAN、サウンドなどをワンタッチで接続することができ、大変便利であるとともにiPad ProをPCのように使用することもできます。
なお、手元の環境で検証して気づいた点として、USB2.0 type-Cケーブルだと充電ができません。USB2.0 type-CケーブルはUSB type-C端子を備えたAndroid端末での採用が多く、ちょうど手持ちのMate 10 ProのUSBケーブルもこのタイプのケーブルでした。USB 3.1 type-Cケーブルを使うか、両方type-Cコネクタのケーブルを使って充電する必要があります。まぁ付属品を使えば確実なのですが、サードパーティ製のケーブルやアクセサリを購入・使用する際は注意が必要です。
続いてApple Pencilも開封。こちらも書類一式と本体だけと、シンプルな内容です。なお、前世代モデルは替えのペン先が付属していましたが、第2世代には付属していません。
それでは本体の紹介にいきましょう!
正面から。上部にはインカメラとFaceID用の赤外線照射部があります。これまでのiPadのようなホームボタンが下部にはありません。ベゼル幅は左右だけでいえば10.5インチモデルよりも太くなっており、iPad(第6世代)と同等レベルの太さです。しかしながら、ホームボタンが廃されたことで上下のベゼルは逆に細くなっており、全体として見ればスマートな外観と言えます。
裏面。下部にはSmart Keyboard Folio用の接続端子があります。左上にはアウトカメラがあります。平坦な裏面で唯一ボコッと飛び出ている部位になりますので、ケースをつけずに使用する際は本体を置く時にこの部分をぶつけて壊してしまわないよう気をつける必要があります。私はこの後の画像にも写るように純正カバー「Smart Folio」を装着しており、これによって裏面の段差がなくなる形にしているため、あまり気にしていません。
本体上面。スピーカーの開口部が大きく設けられています。画面右上にあたる箇所にスリープボタンがあります。
本体右側面。上部に音量ボタンがあり、中央付近にはApple Pencilに電力供給をするための磁気コネクタがあります。電力供給は無線で行われるため、金属接点はありません。下部にはSIMカードトレイがあります。なお、左側面には一応マイクがあるものの、Smart Folioなどを装着した際にヒンジ側になるため、ボタンやトレイの類はありません。
本体下部。こちらもスピーカーの開口部が大きく設けられています。そして中央にUSB type-C端子があります。
本体は10.5インチiPad Proとほぼ同じフットプリントで、重量もほぼ同じですが、高さが5.9mm(10.5インチは6.1mm)と、ついに5mm台に突入しました。これまで使用してきた中で一番薄かったHuawei MateBookでも6.9mmでした。高々1mmの違いですが、実際に持ってみると明らかに薄く感じられました。あまりの薄さに、タブレット端末を持っているというよりかは金属板を持っているような感覚です(笑)。カバーをつけても10mm前後という薄さで、気軽に持ち運ぶことができます。
なお、iPad Pro 11インチモデルは、従来の10.5インチモデルと同じフットプリントで画面サイズを拡大しているため、画面のアスペクト比がiPadシリーズで初めて4:3ではなくなりました(12.9インチモデルは画面サイズをそのままにフットプリントを従来モデルから削っているため画面のアスペクト比は4:3のまま)。個人的には4:3というアスペクト比はアナログ放送を彷彿とさせるものであまり好みではなかったのですが、Androidタブレットでの採用が多い16:10に少し近づいたことで、違和感なく使用できています。一方でこの新しいアスペクト比に対応していないAppも少なくなく(プリインのAppは対応していたが、SpotifyやGoogle Mapなどは当記事執筆時点で対応していなかった)、そのようなAppは画面上下または左右に黒い余白ができてしまいます。このあたりは各Appの対応を待つしかないところではありますが、画面を有効活用するために是非とも対応してほしいものです。
続いてApple Pencilの紹介。
手持ちの板タブ(Intuos Comic)のペンと比較。Apple Pencilは内部に電源やBluetoothモジュールなどを内蔵しているため、板タブのペンよりは少し重たいです。しかし、筆記用具として見れば重すぎることはなく、1,000円台の高級筆記具であればごくありふれた重さだと思います。重心の位置はペンのほぼ中央にあり、文字の筆記だけでなくイラストの描画でも違和感なく使用できると感じました。ペンはマット仕上げになっており、手触りは非常に良いです。また、ペンを握る位置にタッチセンサーが搭載されており、ここをダブルタップすることでたとえばペンツールと消しゴムツールを切り替えるなどの機能を割り当てることができます。この機能は設定から挙動を変更することができるほか、機能自体を無効にすることもできます。センサーはペン先に近い部分全体に設けられているため、ペンの持ち方や向きに関わらず、どの指でダブルタップしても反応します。
Apple Pencilを充電する際は上で紹介した磁気コネクタにApple Pencilの平らになっている部分をくっつけます。無線で充電するため、ペン先の向きはどちらでも大丈夫です。前世代モデルでは充電のためにペントップのキャップを外し、露出したLightningコネクタを本体に突き刺すかアダプタを介して外部電源に接続するというやり方で、あまりスマートとは言えないものでしたし、何よりキャップを紛失する心配がありました。新しいApple Pencilは本体のサイドに磁石でくっつける形となったため、まるで手帳に挿したペンのような美しい見栄えであるだけでなく、充電しながら気軽に持ち運ぶこともできますし、キャップを紛失する心配もありません。一方、充電には必ずiPad Pro本体が必要で、Apple Pencilだけを直接外部電源から充電する手段がなくなった、とも言えます。
注意が必要なのは、サードパーティ製のカバーで本体にツメをひっかけて固定するタイプの場合、Apple Pencilを充電するために一度カバーを外さなければならない場合があります。前述のようにApple Pencilだけを直接外部電源から充電する手段がないため、カバーの種類によっては充電が非常に面倒くさいことになります。なお、Smart Folioは本体裏面に磁石で吸い付くタイプで、側面を覆うものはないためカバーをつけたままでも充電ができます。Smart Folioはなかなか高額なのですが、このような機能面でのメリットがあるほか、本体に触れる面が起毛仕上げで本体を傷つけない配慮がなされています。もちろん、カバーの開け閉めでスリープ・スリープ解除ができるのは従来のiPadと同様です。
ちなみに、前述したように本体にはSmart Folioを吸い寄せるための磁石が内蔵されているため、冷蔵庫などにもこのようにくっつきます(笑)。キッチンタイマーを使ったり料理しながら動画などを視聴するのにいいかもしれませんが、それ以前に落下の危険性があるのでこんな使い方はしないほうがいいでしょうw
それではここから実際にiPad Pro本体やApple Pencilなどを使ってみて感じたことを述べていきます。ちなみに私はiOS端末を使うのがかなり久しぶり(最後に使用したのがiPod touch第4世代)で、当時からUIもかなり変わっていることから実質的には初めてiOS端末を購入したようなものです。以降のレビューはApple製品ユーザ・Appleファンとしての意見ではなく、WindowsやAndroidなど網羅的に体験してきたユーザとしての意見(極端に言えばWindows・AndroidタブレットユーザによるiPadのレビュー)になります。
まずはUIについて。iPhone Xに続き、新しいiPad Proもついにホームボタンが廃止され、操作方法が少し変わりました。この点については、正直それまでAndroidユーザだった私がコメントできることはありません(笑)。前述のように一応過去にホームボタンのあるiPod touchも触っていましたが、使用をやめてから5年以上経過していたためそれまでのiOSの操作感覚をほとんど忘れてしまったこと、またこれまで使用してきたAndroid端末はホームボタンに相当する物理ボタンがなく画面上のホームボタンを押すという操作に慣れていたことから、新しいiPad ProのUIもすんなり受け入れることができました。もっとも、仮にホームボタンがあったとしても、今度はiPod touchを使用していた時の感覚を少しずつ思い出してなんとか慣れることができたかもしれませんが。
もちろん、iOSとAndroidという全く異なるOSであるため、アプリケーション一覧の表示方法・終了方法(Androidは全アプリ終了ボタンで一度にアプリを終了させることができる端末が多くなってきたが、iOSは現時点ではAppを1個ずつスワイプする必要がある)・ファイル管理の考え方(AndroidはLinux的なディレクトリ構造で、ファイル管理アプリを用いれば容易にファイル・ディレクトリの管理ができるのに対し、iOSはそのようなディレクトリ構造をあまり目に見える形で表示させない)など、新たに習熟することはいくつかありましたが、そもそもこれまでAndroid端末を使用していたときにも、メーカー独自UIが採用されているなどして端末ごとに細かい操作方法が異なり、端末を買い替える・新しく購入するたびに習熟し直してきた過去があるため、これについても特に困ることはなく、購入前の店頭でのタッチアンドトライと購入後しばらくいろいろ触っていく中で基本的な操作方法はほぼ習熟することができました。
個人的に気に入っている機能がSlide Overです。AndroidにもデュアルウィンドウモードがAndroid7.0以降搭載されるようになりましたが、こちらは必ず画面が2分割されるもので、アプリによっては画面の分割動作で不安定になることがあり、最近はほとんど使っていません。対してSlide Overは今実行しているAppの上に小さなAppのウィンドウを重ねて表示するもので、下で実行しているAppのウィンドウサイズは変わりません。そのため、下で起動しているAppも上に重ねて表示しているAppも不安定になることなく並行して実行することができます。私はペイントアプリでイラストを描きながらTwitterをチェックしたり、ビューワーアプリで作画資料を見たりするのですが、いちいちペイントアプリ側のウィンドウサイズが変わらないので非常に作業しやすいです。重ねて表示している小さなウィンドウは左右どちらかに寄せることができ、ペイントアプリの場合だとツールを選択する際や資料を見ながらイラストを描く際に描きやすいほうにウィンドウを寄せることができ、大変便利です。ウィンドウ自体が邪魔になれば右にスワイプすれば消去できますし、またウィンドウを表示させたいときは右端からスワイプすれば再び表示することができます。もちろん、画面分割モードのSplit Viewも利用できるので、2つのAppを表示したいけど画面が重なったら困るような場合に必要に応じて用いるなど、状況に応じて使い分けることができます。
ホームボタンが廃止されたことに伴い、従来の指紋認証「TouchID」に代わって顔認証「FaceID」が採用されました。顔認証機能自体は手持ちのHP Spectre x360でもWindows Helloの機能として搭載されているものを利用しており、画面を開くだけで何もせずにPCのロックを解除できる利便性とショルダーハックの心配がない安全性から非常に気に入っています。iPad ProでもさっそくFaceIDを設定したのですが、スリープ解除ボタンを押すかSmart Folioを開いて画面を見つめているだけですぐにロック解除され、パスワードを入力する必要がありません。ただし、Windows Helloではロック解除後即座にデスクトップに移行しますが、FaceIDはロック解除後画面をスワイプする必要があります。Windows Helloに比べると操作が一つ増える分煩雑になりますが、ロック解除後勝手にホーム画面やAppの画面に遷移しないため、たとえば時計や通知を確認したいだけの場合でも落ち着いて画面を見続けることができます。
なお、FaceIDの登録は十分な明るさのある環境下で行う必要があります。私が試したところ、部屋の蛍光灯程度の明るさでもダメで、日中に外の明かりを取り込んだ部屋でようやっと登録ができました。一度登録が済んでしまえばどんな環境でもほぼ顔認証ができます。顔面に向けて赤外線を照射するため、暗いところでも認証ができます(私が試した限りでは明かりを完全にシャットアウトした環境でもロック解除できた)。逆に直射日光には弱く、特に太陽が自分の背後から照らしてくるような状況ではうまく顔認証ができないことがあります。もちろん、マスクなどで顔がほとんど隠れてしまった場合も認証ができず、iPad Proの場合はパスコードを使ってロック解除することになります(Spectre x360には2つ目の生体認証として指紋センサも搭載されており、使い分けが可能)。これらはすべてSpectre x360と同様の特性で、赤外線を用いた顔認証システムの仕様と言えるでしょう。
ディスプレイは解像度が2388x1668(264ppi)のIPS液晶ディスプレイ「Liquid Retina」で、高精細で発色も良く、広い視野角によってどの角度・向きからでも見やすい画面となっています。また、ディスプレイはダイレクトボンディングとなっており、ガラス面と表示部のギャップが極めて小さいものとなっています。これはiPad Proをイラスト制作に使用する際に、紙に描くのにより近い感覚で描くことができます。
本体には4つのスピーカーが搭載されているほか、それぞれがウーファーとツィーターを持ち合わせているため、中高域はもちろん低音域の量感も抜群です。5.9mmという薄型の筐体から出ているとは思えない低音には驚かされました。音楽や映像を見る際も外部スピーカーを必要とせず、本体のスピーカーでも十分満足できます。
バッテリーは公称10時間とされていますが、体感的にはほぼスペック通りだと感じました。SNSやネットサーフィンなどで本体を操作している時間が短い場合はバッテリーの減りはゆっくりですが、私はテキスト作成やイラスト制作など、PC的な使い方をすることが多く、1〜2時間の間画面付けっ放し、常に何かしら負荷がかかっている、といったような状況では、思ったよりもバッテリーの減りが早く感じます。特にiPad Proのようなタブレット端末の場合、ノートPCのように外部電源を接続したままの作業はせっかくのタブレット端末の可搬性を生かせなくなるため、私のような使い方だと1日ごとの充電が必須になります。とはいえ、付属USB ACアダプタやUSB PDに対応した外部電源を使えば急速充電もできるため、ほぼ一日中作業するような場合でもすきま時間に充電してバッテリ残量を回復させながら乗り切る、といった使い方もできます。
次にApple Pencilを用いて実際に趣味のイラスト・まんが制作に導入した感想ですが、すんなりと導入できたばかりか簡単ならくがきについては購入からわずか3日ほどでiPad Proに完全に移行できてしまいました(笑)。その理由として、そもそもApple Pencilが筆記具として使いやすいことがあります。ペンの重心がほぼ中央付近にあることからイラスト制作でペンを激しく動かした場合でもペンが振られる感覚が少なく、表面がマット仕上げになっていることで指も滑りにくくなっています。ペン先はWacomのペンに比べると太いものとなっていますが、精密な線を引くような使い方でない限りは気になりません。また、前述のとおりディスプレイがダイレクトボンディングとなっているためガラス部分と表示部のギャップがほとんど気になりません。加えて、ペンのグリップ部分をダブルタップすることでペンツールと消しゴムツールを切り替える機能が特に気に入っており、ラフスケッチのような描いて消してを繰り返すような場合に、いちいちツールボタンまでペンを持っていく必要がなく非常に作業が楽になります。
一方で、ペンをホバーさせているときにポインタのようなものが表示されないため、このポインタを目印に描き始めの位置を確認している人にとっては使いにくいかもしれません。とはいえ、実際にアナログで描く際にポインタは表示されませんし、N-Trigのデジタイザ搭載デバイスで顕著なホバー時のポインタの大きなずれや追従性の悪さも気にする必要がないため、ポインタが表示されていないこと自体が使いにくさの原因になっているとは言えないと思います。また、ディスプレイとペンとの摩擦が小さく、滑るような感覚がするのも気になりました。これでも前世代モデルからは多少改善されているそうですが、私が実際に使ってみたところではどうしても線の描き終わりがわずかに意図しない方向に曲がってしまったりして、好みの描き味ではありませんでした。そこで私はペーパータッチを謳う液晶フィルムを購入して貼り付けました。するとペンとの間に適度な摩擦力が生まれ、線も安定したほか、描くときに「スッスッ」と擦れる音もするため、「ちゃんと描いている」感をもって描くことができるようになりました。もちろん、ペーパータッチのザラザラしたフィルムであるため、ペン先は早く傷んでしまうとは思いますが、描きやすさに勝るものはないので、フィルムを貼り付けて良かったと思います。
私はiPad Proをイラスト・まんがのラフ制作やらくがきに使用するつもりでいましたが、予定通りの使い方ができそうです。まんが・イラストのペン入れ以降は精密な線を描く必要があり、ペン先が太いこと、(液タブ全般に言えるが)キャンバスに手が被って線が見えにくくなること、いくらタブレット端末と言えど高々11インチのディスプレイであることからこれらの作業をするのは困難であるため、これまでどおりPCを用いて大画面で確認しながら板タブを用いて作業することになると思います。一方ラフ制作は頭の中で思い描いているイメージをキャンバスに写す工程であることから、描いて消してを繰り返しながらとにかく早く形にすることが求められ、余計な作業などを極力排除した「描く」ことに集中できる環境が必要とされます。iPad Proのレスポンスの良さやディスプレイのギャップの少なさ、ペンと消しゴムを切り替える際の余計な動作の無さは、まさに「描く」ことに集中できる絶好の環境で、加えて気軽に持ち出しできるサイズであることから外出時でもパッと思いついたアイデアをすぐスケッチすることができたり、自宅においても自由な姿勢でイラストを描くことができると感じました。
最後に、iPad Proの商品サイトでは「どんなコンピュータにも似ていないコンピュータ」という宣伝文句でノートPC・2in1としての機能性をアピールしていますが、私がここまでiPad Proを使ってみたところでは、確かに「多くの機能においてノートPCを置き換えうる」存在だと感じました。その理由として、なんと言っても機動性が高いことが一番に挙げられると思います。私が購入した11インチモデルだと本体だけだと468gと軽量で、カバーやキーボードなどを一緒に持ち歩いても1kg前後です。ここで重要なのは本体・カバー・キーボードを自由に組み合わせて持ち出すことができる点だと思っています。ノートPCの場合デタッチャブル2in1でない限りは、本体が1kgであれば常に1kgが付きまといます。一方iPadのようなタブレット端末、デタッチャブル2in1の場合はその時の気分や作業内容などに応じて装備を自由に変化させることができ、例えば身軽な装備にしたい場合は本体だけ持ち出せば468gで済みますし、カバンの中で本体が傷つくのが心配であればカバーもつけ、がっつり文字入力をする場合はキーボードも持ち出せばよい、といった感じです。
また、最近はWindows PCでもSIMカードスロットを備え、単体でモバイルネットワークを利用できるものが増えてきましたが、未だ機種が限られており、iOSやAndroidほどの高い接続性を持った端末も未だ希少で、「いつでもどこでも、インターネットも利用できる端末」にはなり得ていないのが現状です。さらに、とりわけiOS搭載デバイスにおいてはハードウェアとソフトウェアの親和性が高く、おおむねどのアプリでもレスポンスが良い点もPCにはない特長と言えます。
一方でCPUやGPUをフル活用するようなエンコード系の作業や対応周辺機器の幅広さなど、PCのほうが優れている場面もいまだ多く存在します。現状では用途に応じて使い分けするのが最適解だとは思いますが、普段使いにおいてはほとんどの作業がiPadでできてしまうのもまた事実です。私は年末年始の休暇にあえてSpectre x360を持ち出さず、iPad ProとBluetoothキーボードだけを持ち出してどこまで使えるか見極めてみました(一応実家にWindows PCがあるので、いざというときはそちらを使う形とした)。その結果、SNSの更新やネットサーフィン、テレビ番組の視聴(nasneのリモート視聴機能を利用)までiPad Proだけで完結することができ、Windows PCでないとどうにもならない場面はありませんでした。
もっとも、このブログの更新はiPad Proだとテキスト編集がやりにくいので、Spectre x360を使いましたが。
というわけで、iPad Pro 11(2018年モデル)のレビューをお送りしました。久々のApple製品でしたが、iOSが様々な面で使いやすさにこだわっていることに改めて気づくことができました。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
購入したのは2018年モデルの11インチ、Wi-Fi+Celullar、NTT docomo版です。Apple製品は多くの家電量販店で購入することができますが、当記事執筆時点で大阪に住んでいることもあり、せっかくなのでApple Store心斎橋で購入しました。ご存知の方もいるかとは思いますが、Apple Storeではキャリア版のiPhoneやiPadも購入することができます。家電量販店独自特典(例えばある有料サービスへの一定期間の加入を条件に通信料金をさらに割り引く・ポイント付与するなど)の類はありませんが、ほかのApple製品と同様Appleのスタッフによる丁寧なサポートを受けることができます。私も初めてApple Storeでモノを購入したのですが、初期設定を店頭でスタッフのサポートを受けながら行うことができるだけでなく、アクセサリの購入についてもわざわざスタッフが売り場まで案内してくれたり、パッケージの開封を基本的にユーザの手でさせるなど、製品に愛着を持ってもらうための様々な気配りが感じられました。これで追加料金がないのですから、今後Apple製品を購入する機会があればまたApple Storeで購入したいと感じました。
それでは早速開封していきましょう!といっても、前述のとおり一度Store内で初期設定のために開封しているので、付属品紹介や各部紹介になりますが(笑)
書類一式とSIMカードトレイ引き抜きピン、Appleロゴステッカー。また、今回はキャリア版を購入しましたので、SIMカードの台紙も一緒に入れられていました(SIMカードのセットもユーザが行う体験があるとの情報をweb上で見ていましたが、私の場合はそのような体験はなく、Apple Pencilを開封して中身を確認している間にスタッフがSIMカードをセットしていました)。
付属品はUSB type-CケーブルとUSB ACアダプタ。ACアダプタはUSB PD対応で、最大で5V 3Aまたは9V 2Aでの充電が可能です。
iPad Proは2018年モデルからLightingコネクタに代わってUSB type-C端子を搭載するようになりました。これが私のiPad Pro購入の決め手でした。私は現在使用しているスマートフォン(Huawei Mate 10 Pro)・ノートPC(HP Spectre x360)のいずれも充電や周辺機器の接続にUSB type-Cを採用しており、手持ちの周辺機器もほぼUSB type-Cに特化したものとしていました。iPad ProのコネクタがUSB type-Cになったことでこれらの周辺機器を流用することができ、新たな出費がなくて済みました。特にUSB type-C接続のドッキングステーションを使用すれば、電源やUSBキーボード、ディスプレイ出力、LAN、サウンドなどをワンタッチで接続することができ、大変便利であるとともにiPad ProをPCのように使用することもできます。
なお、手元の環境で検証して気づいた点として、USB2.0 type-Cケーブルだと充電ができません。USB2.0 type-CケーブルはUSB type-C端子を備えたAndroid端末での採用が多く、ちょうど手持ちのMate 10 ProのUSBケーブルもこのタイプのケーブルでした。USB 3.1 type-Cケーブルを使うか、両方type-Cコネクタのケーブルを使って充電する必要があります。まぁ付属品を使えば確実なのですが、サードパーティ製のケーブルやアクセサリを購入・使用する際は注意が必要です。
続いてApple Pencilも開封。こちらも書類一式と本体だけと、シンプルな内容です。なお、前世代モデルは替えのペン先が付属していましたが、第2世代には付属していません。
それでは本体の紹介にいきましょう!
正面から。上部にはインカメラとFaceID用の赤外線照射部があります。これまでのiPadのようなホームボタンが下部にはありません。ベゼル幅は左右だけでいえば10.5インチモデルよりも太くなっており、iPad(第6世代)と同等レベルの太さです。しかしながら、ホームボタンが廃されたことで上下のベゼルは逆に細くなっており、全体として見ればスマートな外観と言えます。
裏面。下部にはSmart Keyboard Folio用の接続端子があります。左上にはアウトカメラがあります。平坦な裏面で唯一ボコッと飛び出ている部位になりますので、ケースをつけずに使用する際は本体を置く時にこの部分をぶつけて壊してしまわないよう気をつける必要があります。私はこの後の画像にも写るように純正カバー「Smart Folio」を装着しており、これによって裏面の段差がなくなる形にしているため、あまり気にしていません。
本体上面。スピーカーの開口部が大きく設けられています。画面右上にあたる箇所にスリープボタンがあります。
本体下部。こちらもスピーカーの開口部が大きく設けられています。そして中央にUSB type-C端子があります。
本体は10.5インチiPad Proとほぼ同じフットプリントで、重量もほぼ同じですが、高さが5.9mm(10.5インチは6.1mm)と、ついに5mm台に突入しました。これまで使用してきた中で一番薄かったHuawei MateBookでも6.9mmでした。高々1mmの違いですが、実際に持ってみると明らかに薄く感じられました。あまりの薄さに、タブレット端末を持っているというよりかは金属板を持っているような感覚です(笑)。カバーをつけても10mm前後という薄さで、気軽に持ち運ぶことができます。
なお、iPad Pro 11インチモデルは、従来の10.5インチモデルと同じフットプリントで画面サイズを拡大しているため、画面のアスペクト比がiPadシリーズで初めて4:3ではなくなりました(12.9インチモデルは画面サイズをそのままにフットプリントを従来モデルから削っているため画面のアスペクト比は4:3のまま)。個人的には4:3というアスペクト比はアナログ放送を彷彿とさせるものであまり好みではなかったのですが、Androidタブレットでの採用が多い16:10に少し近づいたことで、違和感なく使用できています。一方でこの新しいアスペクト比に対応していないAppも少なくなく(プリインのAppは対応していたが、SpotifyやGoogle Mapなどは当記事執筆時点で対応していなかった)、そのようなAppは画面上下または左右に黒い余白ができてしまいます。このあたりは各Appの対応を待つしかないところではありますが、画面を有効活用するために是非とも対応してほしいものです。
続いてApple Pencilの紹介。
手持ちの板タブ(Intuos Comic)のペンと比較。Apple Pencilは内部に電源やBluetoothモジュールなどを内蔵しているため、板タブのペンよりは少し重たいです。しかし、筆記用具として見れば重すぎることはなく、1,000円台の高級筆記具であればごくありふれた重さだと思います。重心の位置はペンのほぼ中央にあり、文字の筆記だけでなくイラストの描画でも違和感なく使用できると感じました。ペンはマット仕上げになっており、手触りは非常に良いです。また、ペンを握る位置にタッチセンサーが搭載されており、ここをダブルタップすることでたとえばペンツールと消しゴムツールを切り替えるなどの機能を割り当てることができます。この機能は設定から挙動を変更することができるほか、機能自体を無効にすることもできます。センサーはペン先に近い部分全体に設けられているため、ペンの持ち方や向きに関わらず、どの指でダブルタップしても反応します。
Apple Pencilを充電する際は上で紹介した磁気コネクタにApple Pencilの平らになっている部分をくっつけます。無線で充電するため、ペン先の向きはどちらでも大丈夫です。前世代モデルでは充電のためにペントップのキャップを外し、露出したLightningコネクタを本体に突き刺すかアダプタを介して外部電源に接続するというやり方で、あまりスマートとは言えないものでしたし、何よりキャップを紛失する心配がありました。新しいApple Pencilは本体のサイドに磁石でくっつける形となったため、まるで手帳に挿したペンのような美しい見栄えであるだけでなく、充電しながら気軽に持ち運ぶこともできますし、キャップを紛失する心配もありません。一方、充電には必ずiPad Pro本体が必要で、Apple Pencilだけを直接外部電源から充電する手段がなくなった、とも言えます。
注意が必要なのは、サードパーティ製のカバーで本体にツメをひっかけて固定するタイプの場合、Apple Pencilを充電するために一度カバーを外さなければならない場合があります。前述のようにApple Pencilだけを直接外部電源から充電する手段がないため、カバーの種類によっては充電が非常に面倒くさいことになります。なお、Smart Folioは本体裏面に磁石で吸い付くタイプで、側面を覆うものはないためカバーをつけたままでも充電ができます。Smart Folioはなかなか高額なのですが、このような機能面でのメリットがあるほか、本体に触れる面が起毛仕上げで本体を傷つけない配慮がなされています。もちろん、カバーの開け閉めでスリープ・スリープ解除ができるのは従来のiPadと同様です。
ちなみに、前述したように本体にはSmart Folioを吸い寄せるための磁石が内蔵されているため、冷蔵庫などにもこのようにくっつきます(笑)。キッチンタイマーを使ったり料理しながら動画などを視聴するのにいいかもしれませんが、それ以前に落下の危険性があるのでこんな使い方はしないほうがいいでしょうw
それではここから実際にiPad Pro本体やApple Pencilなどを使ってみて感じたことを述べていきます。ちなみに私はiOS端末を使うのがかなり久しぶり(最後に使用したのがiPod touch第4世代)で、当時からUIもかなり変わっていることから実質的には初めてiOS端末を購入したようなものです。以降のレビューはApple製品ユーザ・Appleファンとしての意見ではなく、WindowsやAndroidなど網羅的に体験してきたユーザとしての意見(極端に言えばWindows・AndroidタブレットユーザによるiPadのレビュー)になります。
まずはUIについて。iPhone Xに続き、新しいiPad Proもついにホームボタンが廃止され、操作方法が少し変わりました。この点については、正直それまでAndroidユーザだった私がコメントできることはありません(笑)。前述のように一応過去にホームボタンのあるiPod touchも触っていましたが、使用をやめてから5年以上経過していたためそれまでのiOSの操作感覚をほとんど忘れてしまったこと、またこれまで使用してきたAndroid端末はホームボタンに相当する物理ボタンがなく画面上のホームボタンを押すという操作に慣れていたことから、新しいiPad ProのUIもすんなり受け入れることができました。もっとも、仮にホームボタンがあったとしても、今度はiPod touchを使用していた時の感覚を少しずつ思い出してなんとか慣れることができたかもしれませんが。
もちろん、iOSとAndroidという全く異なるOSであるため、アプリケーション一覧の表示方法・終了方法(Androidは全アプリ終了ボタンで一度にアプリを終了させることができる端末が多くなってきたが、iOSは現時点ではAppを1個ずつスワイプする必要がある)・ファイル管理の考え方(AndroidはLinux的なディレクトリ構造で、ファイル管理アプリを用いれば容易にファイル・ディレクトリの管理ができるのに対し、iOSはそのようなディレクトリ構造をあまり目に見える形で表示させない)など、新たに習熟することはいくつかありましたが、そもそもこれまでAndroid端末を使用していたときにも、メーカー独自UIが採用されているなどして端末ごとに細かい操作方法が異なり、端末を買い替える・新しく購入するたびに習熟し直してきた過去があるため、これについても特に困ることはなく、購入前の店頭でのタッチアンドトライと購入後しばらくいろいろ触っていく中で基本的な操作方法はほぼ習熟することができました。
個人的に気に入っている機能がSlide Overです。AndroidにもデュアルウィンドウモードがAndroid7.0以降搭載されるようになりましたが、こちらは必ず画面が2分割されるもので、アプリによっては画面の分割動作で不安定になることがあり、最近はほとんど使っていません。対してSlide Overは今実行しているAppの上に小さなAppのウィンドウを重ねて表示するもので、下で実行しているAppのウィンドウサイズは変わりません。そのため、下で起動しているAppも上に重ねて表示しているAppも不安定になることなく並行して実行することができます。私はペイントアプリでイラストを描きながらTwitterをチェックしたり、ビューワーアプリで作画資料を見たりするのですが、いちいちペイントアプリ側のウィンドウサイズが変わらないので非常に作業しやすいです。重ねて表示している小さなウィンドウは左右どちらかに寄せることができ、ペイントアプリの場合だとツールを選択する際や資料を見ながらイラストを描く際に描きやすいほうにウィンドウを寄せることができ、大変便利です。ウィンドウ自体が邪魔になれば右にスワイプすれば消去できますし、またウィンドウを表示させたいときは右端からスワイプすれば再び表示することができます。もちろん、画面分割モードのSplit Viewも利用できるので、2つのAppを表示したいけど画面が重なったら困るような場合に必要に応じて用いるなど、状況に応じて使い分けることができます。
ホームボタンが廃止されたことに伴い、従来の指紋認証「TouchID」に代わって顔認証「FaceID」が採用されました。顔認証機能自体は手持ちのHP Spectre x360でもWindows Helloの機能として搭載されているものを利用しており、画面を開くだけで何もせずにPCのロックを解除できる利便性とショルダーハックの心配がない安全性から非常に気に入っています。iPad ProでもさっそくFaceIDを設定したのですが、スリープ解除ボタンを押すかSmart Folioを開いて画面を見つめているだけですぐにロック解除され、パスワードを入力する必要がありません。ただし、Windows Helloではロック解除後即座にデスクトップに移行しますが、FaceIDはロック解除後画面をスワイプする必要があります。Windows Helloに比べると操作が一つ増える分煩雑になりますが、ロック解除後勝手にホーム画面やAppの画面に遷移しないため、たとえば時計や通知を確認したいだけの場合でも落ち着いて画面を見続けることができます。
なお、FaceIDの登録は十分な明るさのある環境下で行う必要があります。私が試したところ、部屋の蛍光灯程度の明るさでもダメで、日中に外の明かりを取り込んだ部屋でようやっと登録ができました。一度登録が済んでしまえばどんな環境でもほぼ顔認証ができます。顔面に向けて赤外線を照射するため、暗いところでも認証ができます(私が試した限りでは明かりを完全にシャットアウトした環境でもロック解除できた)。逆に直射日光には弱く、特に太陽が自分の背後から照らしてくるような状況ではうまく顔認証ができないことがあります。もちろん、マスクなどで顔がほとんど隠れてしまった場合も認証ができず、iPad Proの場合はパスコードを使ってロック解除することになります(Spectre x360には2つ目の生体認証として指紋センサも搭載されており、使い分けが可能)。これらはすべてSpectre x360と同様の特性で、赤外線を用いた顔認証システムの仕様と言えるでしょう。
ディスプレイは解像度が2388x1668(264ppi)のIPS液晶ディスプレイ「Liquid Retina」で、高精細で発色も良く、広い視野角によってどの角度・向きからでも見やすい画面となっています。また、ディスプレイはダイレクトボンディングとなっており、ガラス面と表示部のギャップが極めて小さいものとなっています。これはiPad Proをイラスト制作に使用する際に、紙に描くのにより近い感覚で描くことができます。
本体には4つのスピーカーが搭載されているほか、それぞれがウーファーとツィーターを持ち合わせているため、中高域はもちろん低音域の量感も抜群です。5.9mmという薄型の筐体から出ているとは思えない低音には驚かされました。音楽や映像を見る際も外部スピーカーを必要とせず、本体のスピーカーでも十分満足できます。
バッテリーは公称10時間とされていますが、体感的にはほぼスペック通りだと感じました。SNSやネットサーフィンなどで本体を操作している時間が短い場合はバッテリーの減りはゆっくりですが、私はテキスト作成やイラスト制作など、PC的な使い方をすることが多く、1〜2時間の間画面付けっ放し、常に何かしら負荷がかかっている、といったような状況では、思ったよりもバッテリーの減りが早く感じます。特にiPad Proのようなタブレット端末の場合、ノートPCのように外部電源を接続したままの作業はせっかくのタブレット端末の可搬性を生かせなくなるため、私のような使い方だと1日ごとの充電が必須になります。とはいえ、付属USB ACアダプタやUSB PDに対応した外部電源を使えば急速充電もできるため、ほぼ一日中作業するような場合でもすきま時間に充電してバッテリ残量を回復させながら乗り切る、といった使い方もできます。
次にApple Pencilを用いて実際に趣味のイラスト・まんが制作に導入した感想ですが、すんなりと導入できたばかりか簡単ならくがきについては購入からわずか3日ほどでiPad Proに完全に移行できてしまいました(笑)。その理由として、そもそもApple Pencilが筆記具として使いやすいことがあります。ペンの重心がほぼ中央付近にあることからイラスト制作でペンを激しく動かした場合でもペンが振られる感覚が少なく、表面がマット仕上げになっていることで指も滑りにくくなっています。ペン先はWacomのペンに比べると太いものとなっていますが、精密な線を引くような使い方でない限りは気になりません。また、前述のとおりディスプレイがダイレクトボンディングとなっているためガラス部分と表示部のギャップがほとんど気になりません。加えて、ペンのグリップ部分をダブルタップすることでペンツールと消しゴムツールを切り替える機能が特に気に入っており、ラフスケッチのような描いて消してを繰り返すような場合に、いちいちツールボタンまでペンを持っていく必要がなく非常に作業が楽になります。
一方で、ペンをホバーさせているときにポインタのようなものが表示されないため、このポインタを目印に描き始めの位置を確認している人にとっては使いにくいかもしれません。とはいえ、実際にアナログで描く際にポインタは表示されませんし、N-Trigのデジタイザ搭載デバイスで顕著なホバー時のポインタの大きなずれや追従性の悪さも気にする必要がないため、ポインタが表示されていないこと自体が使いにくさの原因になっているとは言えないと思います。また、ディスプレイとペンとの摩擦が小さく、滑るような感覚がするのも気になりました。これでも前世代モデルからは多少改善されているそうですが、私が実際に使ってみたところではどうしても線の描き終わりがわずかに意図しない方向に曲がってしまったりして、好みの描き味ではありませんでした。そこで私はペーパータッチを謳う液晶フィルムを購入して貼り付けました。するとペンとの間に適度な摩擦力が生まれ、線も安定したほか、描くときに「スッスッ」と擦れる音もするため、「ちゃんと描いている」感をもって描くことができるようになりました。もちろん、ペーパータッチのザラザラしたフィルムであるため、ペン先は早く傷んでしまうとは思いますが、描きやすさに勝るものはないので、フィルムを貼り付けて良かったと思います。
私はiPad Proをイラスト・まんがのラフ制作やらくがきに使用するつもりでいましたが、予定通りの使い方ができそうです。まんが・イラストのペン入れ以降は精密な線を描く必要があり、ペン先が太いこと、(液タブ全般に言えるが)キャンバスに手が被って線が見えにくくなること、いくらタブレット端末と言えど高々11インチのディスプレイであることからこれらの作業をするのは困難であるため、これまでどおりPCを用いて大画面で確認しながら板タブを用いて作業することになると思います。一方ラフ制作は頭の中で思い描いているイメージをキャンバスに写す工程であることから、描いて消してを繰り返しながらとにかく早く形にすることが求められ、余計な作業などを極力排除した「描く」ことに集中できる環境が必要とされます。iPad Proのレスポンスの良さやディスプレイのギャップの少なさ、ペンと消しゴムを切り替える際の余計な動作の無さは、まさに「描く」ことに集中できる絶好の環境で、加えて気軽に持ち出しできるサイズであることから外出時でもパッと思いついたアイデアをすぐスケッチすることができたり、自宅においても自由な姿勢でイラストを描くことができると感じました。
最後に、iPad Proの商品サイトでは「どんなコンピュータにも似ていないコンピュータ」という宣伝文句でノートPC・2in1としての機能性をアピールしていますが、私がここまでiPad Proを使ってみたところでは、確かに「多くの機能においてノートPCを置き換えうる」存在だと感じました。その理由として、なんと言っても機動性が高いことが一番に挙げられると思います。私が購入した11インチモデルだと本体だけだと468gと軽量で、カバーやキーボードなどを一緒に持ち歩いても1kg前後です。ここで重要なのは本体・カバー・キーボードを自由に組み合わせて持ち出すことができる点だと思っています。ノートPCの場合デタッチャブル2in1でない限りは、本体が1kgであれば常に1kgが付きまといます。一方iPadのようなタブレット端末、デタッチャブル2in1の場合はその時の気分や作業内容などに応じて装備を自由に変化させることができ、例えば身軽な装備にしたい場合は本体だけ持ち出せば468gで済みますし、カバンの中で本体が傷つくのが心配であればカバーもつけ、がっつり文字入力をする場合はキーボードも持ち出せばよい、といった感じです。
また、最近はWindows PCでもSIMカードスロットを備え、単体でモバイルネットワークを利用できるものが増えてきましたが、未だ機種が限られており、iOSやAndroidほどの高い接続性を持った端末も未だ希少で、「いつでもどこでも、インターネットも利用できる端末」にはなり得ていないのが現状です。さらに、とりわけiOS搭載デバイスにおいてはハードウェアとソフトウェアの親和性が高く、おおむねどのアプリでもレスポンスが良い点もPCにはない特長と言えます。
一方でCPUやGPUをフル活用するようなエンコード系の作業や対応周辺機器の幅広さなど、PCのほうが優れている場面もいまだ多く存在します。現状では用途に応じて使い分けするのが最適解だとは思いますが、普段使いにおいてはほとんどの作業がiPadでできてしまうのもまた事実です。私は年末年始の休暇にあえてSpectre x360を持ち出さず、iPad ProとBluetoothキーボードだけを持ち出してどこまで使えるか見極めてみました(一応実家にWindows PCがあるので、いざというときはそちらを使う形とした)。その結果、SNSの更新やネットサーフィン、テレビ番組の視聴(nasneのリモート視聴機能を利用)までiPad Proだけで完結することができ、Windows PCでないとどうにもならない場面はありませんでした。
というわけで、iPad Pro 11(2018年モデル)のレビューをお送りしました。久々のApple製品でしたが、iOSが様々な面で使いやすさにこだわっていることに改めて気づくことができました。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。