今回はHPのノートPC「Spectre x360(2017年11月モデル)」を購入しましたので、開封の様子とファーストインプレッションをお送りします。我ながらかなり大きな買い物をしちゃいました……
※Spectre x360には第7世代Coreプロセッサを搭載したモデルと、2017年11月に発売された、第8世代Coreプロセッサを搭載したモデルが存在し、本体の形状なども異なっています。今回私が購入したのは2017年11月モデルとなります。以降、単に「Spectre x360」と表記した場合は基本的に2017年11月モデルを指します。
Spectre x360はHPのノートPCの中のプレミアムモデルライン「Spectre」シリーズの2in1(必要に応じてノートPCスタイルとして使うことも、タブレットスタイルとして使うこともできる)で、いわゆる「キーボード非分離型」に分類されます。Surface ProやMatebookなどのキーボード分離型はタブレットスタイルとして使用する際はキーボード部分が付いてこないため軽量となりますが、キーボードを装着して使用する際は特性上机上スペースを多く占有してしまうものがほとんどです。対してキーボード非分離型は普通のクラムシェルノートと同じように使うことができるため、ノートPCとして使用することが多いユーザーに向いているといえます。また、ディスプレイの回転させる角度を自由に変更することで、同じタブレットスタイルでもディスプレイ部が手前に来るように設置したり、テントのように立てかけたりすることもでき、自由な姿勢でPCを使用することができます。
それでは早速開封していきましょう!今回は本体のほか、非光沢タイプの液晶保護フィルムも同時に注文したのですが……
こんなでっかい箱に薄い液晶保護フィルムのパッケージが1枚だけ(笑)。もう少しなんとかならなかったんですかね……
さて、それはさておき、本体のパッケージを開封していきましょう!
本体のパッケージは、さらに別の段ボール箱に梱包されており、その段ボール箱の中にSpectre x360専用ケースも付属していました。PCに傷をつけずに持ち運べる安心感で、より積極的に外へ持ち出したくなります。
それでは本体パッケージ!パッケージも高級感があり、開封する前から最上位モデルであることの優越感に浸ることができます。例によって箱を開けるといきなり本体が登場しますが、いったん置いておいて、先に付属品を見ていきましょう!
ACアダプタ、電源コード、クイックスタートガイド、「速効!HPパソコンナビ特別版」。HPパソコンナビはかなりのボリュームで、これだけで1,000円ぐらいしそうです(笑)。
ACアダプタはUSB PD対応で、様々な電圧・電流(最大出力65W)に対応しています。これ1個でSpectre x360の充電はもちろん、USB type-C機器(スマートフォンやタブレットなど)の充電もできるほか、本体のUSB type-C端子を使うことで本体を充電しながらスマートフォンなども急速充電することもできます。ACアダプタに接続するACプラグは付属の電源コードのほか、ウォールマウントプラグも付属しており、コンパクトに持ち運ぶことができます。
本体天板。私はナチュラルシルバーを選択しました。Spectre x360のボディカラーはほかにアッシュブラックとローズゴールドがあります。色の好みで言えばブラック系の色がいいのですが、アッシュブラックは本体の側面などに銅色があしらわれており、これが自分の好みと合わなかったため、ナチュラルシルバーにしました。天板・キーボード・側面はすべてシルバー(ディスプレイのベゼル部分のみブラック)で統一感があります。天板のHPロゴはプレミアムモデルラインに使用される特別バージョンです。角はエッジが効いており、特に画像上の2つの角は2017年11月モデルでさらにRが小さくなったためスタイリッシュです。
底面。手前と奥に長いゴム足がありますが、これがカバンからPCを取り出したり持ち運んだりする際に指をひっかけやすく、取り回しがしやすいです。上部には吸気口・下部にはスピーカが搭載。
ヒンジ部分。Spectreロゴがさりげなくあしらわれています。ヒンジは光沢仕上げで、六角形をイメージさせる角ばったデザインです。Spectreロゴのすぐ下(と反対側のヒンジの同様の部分)に排気口があります。
左側面。側面全体がヘアライン加工されており、天面の酸化皮膜処理との対比で美しく映えます。左側面にはUSB type-A端子、ヘッドセット端子、電源ボタン(ボタン中央部は電源ランプになっている)、microSDカードスロットがあります。キーボード非分離型2in1ながら高さは最厚部でも15.5mmとかなり抑えられており、しかもこの薄さながらフルサイズUSB端子を1個備えていて(同じモデルラインのSpectre 13、Spectre x2には非搭載)、USBメモリなどUSB type-Aデバイスを使用する際にもアダプタを必要としない点は高評価です。
右側面。USB type-C端子x2、充電インジケータランプ、指紋センサ、音量ボタン。
USB type-C端子はThunderboltに対応しており、映像出力にも対応しているほか、どちらの端子に挿しても充電ができます。別途ドッキングステーションを使用すれば、例えば充電しながら映像出力をし、USB3.0ポートを増設、さらにギガビットイーサネットを使う、といったようなこともできます。
指紋センサの感度は高く、触れるとすぐに認証しますが、周囲と面一になっており、手探りでセンサの位置を見つけられない点が残念です。ノートPCスタイルで使用する場合は、指紋センサの位置はDeleteキーとその下のHomeキーのちょうど中間あたり、と覚えておきましょう(笑)。
ディスプレイ部を開いてみた図。ディスプレイはFHD(1920x1080)です(カスタマイズにより4Kディスプレイも選択可能)。ディスプレイはIPSで、発色もよく非常に見やすいです。ディスプレイは本来光沢ですが、画面への映り込みが気になるので前述の非光沢タイプの液晶保護フィルムを同時に購入し、貼り付けています。ディスプレイ周りのベゼルは左右の幅が狭くなっており、野暮ったさがありません。一方で上下方向のベゼル幅は削っておらず、webカメラは上部に搭載されています。3辺ナローベゼルのノートPCではwebカメラがディスプレイ下部に搭載され、思うようなアングルにできないという問題があるそうですが、Spectre x360は普通のノートPCと同様に扱うことができます。Windows10の画面表示のスケーリングはデフォルトでは150%となっていますが、解像度の割に画面が大きいため、スケーリング100%でも文字は見やすく、タッチにも支障はありません。スケーリングが大きいと画面上に表示できるコンテンツが少なくなるので、通常使用では100%でも問題なさそうです。
webカメラはIRカメラにもなっており、カメラの左右には赤外線の発光部があります。Spectre x360はWindows Helloの顔認証に対応しており、カメラを見つめるだけでPCのロックを解除できます。私も実際に顔認証を使用していますが、ディスプレイを開いたあとカメラを見つめるだけ、何もボタンを押す必要なくロック解除でき、非常に便利です。また、(指紋認証ともども)パスコードを入力しないため、ショルダーハックの心配がなく、セキュリティ的にも優れています。顔認証と指紋認証は両方登録することもでき、例えばIRカメラがうまく動作しない直射日光下では指紋認証を使用し、さらに手汗で指紋認証がうまくいかないときはPINでのロック解除に切り替えるなど、状況に応じたロック解除を行うことができます。
なお照度センサは搭載されておらず、ディスプレイの明るさは手動で切り替えることになります。カフェなどスポット照明が使われている環境では光の当たり方によってディスプレイの明るさが頻繁に変わってかえって煩わしく感じるため(もちろん設定でオフにすることもできるが)、手動専用となっている点は評価できますが、私はWindowsタブレット・2in1にはすべて照度センサが搭載されており、Spectre x360にも搭載されているものと思い込んでいたため、拍子抜けしてしまいました(笑)。まぁスペックをよく確認しなかった自分が悪いのですがw
キーボード面。キーボードは日本語配列です。配列に大きな崩れはありませんが、Enterキーの横に一列キーがある点は、人によって好みがわかれるでしょう。私は以前同様にEnterキーの横に一列キーがあるPCを使用していた時期があり、すでに慣れていること、文字入力においてHomeキーやEndキーを多用するため、この一列は歓迎なのですが、慣れていないとEnterキーを叩いたつもりがその右隣のキーを叩いていてカーソルが別のところに飛んでしまい、フラストレーションがたまるので、気になる方は店頭などで試すことをおすすめします。また、海外モデルでは矢印キーのうち左右キーがCtrlキーなどと同じ高さになっていますが、日本語配列では上下キーと同じ高さにそろえられており、手探りで矢印キーを操作する際にわかりやすくなっています。キーボードにはバックライトが搭載されていますが、前述のとおり照度センサが搭載されていないため、バックライトのオンオフは手動です。また、F1~F12には画面明るさ、音量、キーボードバックライトオンオフなどのホットキーが登録されていますが、そのままこれらのキーを押したときにはホットキーとして動作します。F1~F12キーとして使うときはfnキーを押す必要があり、これらのキーを多用する場合は煩わしく感じます。
タッチパッドは横方向に大きく、精度も高いので使いやすいです。縁にダイヤモンドカットが施されているため、キーボード面のアクセントになっています。ただし、ディスプレイに近い側にBang&Olufsenのスピーカが搭載されている関係上キーボードが手前に来ており、これに伴ってタッチパッドの上下方向の幅が狭くなっています。また、Synapticsのタッチパッドが採用されており、ドライバもSynapticsのものが当てられているため、特に3本指以上のジェスチャー使用時の挙動がWindows標準ドライバのときと異なります(Windows標準ドライバではホイールボタンに相当する操作は3本指でタップだが、Spectre x360では3本指でクリック。3本指タップではCortanaが起動する。など)
Spectre x360はディスプレイを回転させることで様々なスタイルでPCを使用することができます。上の写真がいわゆる普通のノートPCスタイルです。ここからさらにディスプレイを倒していくと、180度以上開いたところでキーボードとタッチパッドが無効になり、タブレットモードに移行するかを問う通知が表示されます(設定により、自動でタブレットモードを開始・終了することや、自動で移行せず、メッセージも表示しないようにすることも可能)。
まずはキーボード面が下になるように設置するスタンドモード。「新幹線・飛行機のテーブルで使いやすい」とのことで、主に動画を見るのに適しています。キーボード面には四隅に小さなゴム足がついているため、キーボードがテーブル面に直接触れて傷ついたりする心配がありません。
次にヒンジが上を向くように置いたテントモード。接地面積が小さく、狭い場所に置いて使うのに適しています。ディスプレイ部には加速度センサが搭載されているため、ディスプレイの天地が逆になると画面の向きを合わせてくれます。
最後に完全にたたんだタブレットモード。前述の通りディスプレイを180度以上開いた時点でキーボード・タッチパッドの動作が無効化されているので、裏面に来るキーに触れても大丈夫です。重量は1.29kgで、さすがにキーボード分離型2in1には及びませんが、片手で持っても苦痛に感じない軽さです。
ちなみにタブレットモードの状態でキーボード面を上に向けて置くとなんともシュールな構図がw
それでは、ハードウェアの性能について詳しく見ていきます。ベンチマークは例によってCINEBENCH R15を使用。
CPUは最新の第8世代CoreプロセッサであるCore i5 8250Uを搭載しています(カスタマイズによりCore i7 8550Uも選択可能)。第7世代以前はモバイル向けCPUは2コア4スレッドでしたが、第8世代より4コア8スレッドとなり、本来であれば大きく性能向上するはずなのですが、結果は第6世代タブレット向けCoreプロセッサであるCore m3 6y30の1.7倍程度でしかありません。ベンチマーク中のクロックを確認したところ、Core i5 8250Uのターボブースト作動時の最大周波数3.4GHzでは動作しておらず、ベンチマーク開始直後は2.5GHz前後、10秒程度ですぐにベースクロックの1.6GHz程度で推移していることがわかりました。また、動画エンコードで負荷をかけてみたところ、サーマルスロットリングが作動し、最終的に0.9GHz、CPU使用率上限が50%にまで低下していました。薄型ボディであることとコア数の多い第8世代Coreプロセッサを搭載していることから排熱が追い付かず、CPU温度が上昇して熱保護が機能したものと考えられます。以上より、動画エンコードやゲームなどの長時間負荷がかかるような用途には向いていないといえます。
しかしながら、ネットサーフィンやネット動画視聴などにおいては、4コア8スレッドとターボブーストが有効に機能し、快適な操作が可能です。実際に使用してみた限りでは、動画エンコード以外では以前使用していた自作PCとほとんど変わりない体感速度です。
Spectre x360の画面はマルチタッチ対応になっているほか、Microsoft Pen Protocol(MPP)によるペン入力にも対応しています。別売り(一部グレードは標準で付属)のSpectreペンのほか、Surfaceペン、Bamboo Inkなども使用することができます。タッチ感度も良好で、タブレットモードでの使用時だけでなく、ノートPCモードでの使用時にもちょっとした操作に画面を触れて操作できるのは便利です。ペン入力も滑らかで、さらにモバイル向けCPU・(一番下のグレードでも)8GB RAM・256GB SSDで余裕があるため、ちょっとしたイラスト製作にも使えます(私も早速趣味のイラスト・漫画制作のうちラフの作成に活用しています。線画以降の作業はより精密に描画したいので別途板タブを使用していますが)。ただし、ディスプレイが若干たわむので、手をつく際にあまり力をかけすぎないように気を付ける必要があります。
Core i5 8250UのTDPは15W、Configurable TDP-upは25W@1.8GHzで、いずれもSpectre x360の前モデルの同グレードに搭載されていたCore i5 7200Uと同じ値(7200UのConfigurable TDP-up clockは2.7GHz)です。さすがにこのクラスともなると、超低電圧版とはいえそれなりの発熱を伴います。このPCもキーボードのすぐ上、B&Oスピーカのメッシュの中央付近と裏側の同じ部分について、負荷をかけるとすぐに熱くなってきます。しかしながらこの熱はキーボードやパームレストには伝わらないため、熱くて苦痛に感じることはありません。しかし、ひざに乗せた際には使用状況によっては底面がかなり熱く感じるため、注意する必要があります。
また、15Wの発熱を逃がすために冷却ファンがついていますが、まるで小型のジェットエンジンのようなキーンという高周波の風切り音が耳につきます。個人的には結構好みの音なのですが、静かな公共の空間では気を遣ってしまいます。また、温度が高くなってきたときにはかなりの風切り音を伴って回転しますが、その割には排気口からの風はごくわずかしか感じません。デザイン性と快適性を追求するあまり肝心の排熱が不十分となり、結果的に高負荷時に本来の性能を発揮できなくなっているのではないでしょうか。そもそも連続して負荷をかけるような使い方を想定していないと思うのであまり文句を言っても意味はないかもしれませんが、自作PCを組んだことのある者としては熱に対する気遣いを十分にとってほしいものです。
カタログスペック上のバッテリ駆動時間は約16時間45分(4Kディスプレイモデルは約10時間)と、モバイルノートとしてはトップクラスの駆動時間が特長です。Spectre 13で約11時間15分、Spectre x2で約8時間と、こちらも十分長いものですが、Spectre x360はそれをさらに上回る持続時間の長さです。実際に16時間以上使えるのかを試す機会はありませんが、カフェで1時間ほど、あらかじめSSDにインポートした動画(720pHD、約25分を2本)を視聴しながらOneNoteでテキスト編集(この間、インターネットにも接続している)を行ってみましたが、まだ80%程度残っていました。以前使用していたMatebookで同様の条件で使用すると60%以下ぐらいになり、ちょうどタスクバーのバッテリ残量アイコンが半分を切ったように見えるので、作業を切り上げる目安になっていたのですが、それに比べるとバッテリの減りは明らかにゆっくりです。しかし、接続しているUSB機器によってはバッテリの減りが大幅に早くなることもあり、特にUSB type-C→HDMIアダプタを使用して外部ディスプレイに接続した場合には、何も作業をしていなくても画面を投影しているだけで1時間で25%ほど減ってしまいました。単体で使う分には丸1日バッテリのみで使うこともでき、ACアダプタを持ち出す必要性も感じませんが、何か外部機器を接続して長時間使用する場合には必要に応じてACアダプタなどの外部電源を用意しておいたほうがよさそうです。
というわけで、Spectre x360(2017年11月モデル)のレビューをお送りしました。私はこれまで自作PC(デスクトップ)でネットサーフィンや創作活動などを行ってきましたが、屋外での作業時や帰省中などに「あっ、あのファイルちょっと見たいけど、いま自作PCスリープ中で見られない!」といったようなことが頻繁にありました。また、外での作業用に使っていたPCはどれも性能面で自作PCと大きな差があり、「この作業、自作PCではサクサクできるのに持ち出しPCでは重くてまともに作業できない!」といったこともありました。今回自分のメインPCをノートPCに完全に統一したことで、自室でも(もっと細かく分ければ自室のPCデスクでもベッドの上でも)外出先でも帰省中の実家でも全く同じ環境で同じソフト・同じ設定を利用して作業することができ、また以前から使用しているNASのリモートアクセス機能を活用することで必要なファイルをすぐ得ることもでき、これからの創作活動をするうえでよりストレスなく作業できるようになるでしょう。とはいえ、排熱性の悪さのためにCPUが本来の性能を発揮できない場合があることは残念です。私の今後の使用用途からして長時間フル負荷をかけることはほとんどありませんが、それでも簡単な動画編集などでパワーを必要とするときもあるため、少々不安要素が残る形となりました。
なお、自作PCはパーツをすべて手放すため、いったん卒業(?)となりますが、自作PCを作り、改造していく中で得た様々なノウハウは、今後のPC選びやパーツ選びなどに活かしていきたいです。またデスクトップPC自体も嫌っているわけではないので、来年から始まる新生活の中で部屋のコーディネートと合わせて例えばリラックスしてテレビやネット動画を視聴できる大画面PCを購入したり自作したりしてみたいです。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
※Spectre x360には第7世代Coreプロセッサを搭載したモデルと、2017年11月に発売された、第8世代Coreプロセッサを搭載したモデルが存在し、本体の形状なども異なっています。今回私が購入したのは2017年11月モデルとなります。以降、単に「Spectre x360」と表記した場合は基本的に2017年11月モデルを指します。
Spectre x360はHPのノートPCの中のプレミアムモデルライン「Spectre」シリーズの2in1(必要に応じてノートPCスタイルとして使うことも、タブレットスタイルとして使うこともできる)で、いわゆる「キーボード非分離型」に分類されます。Surface ProやMatebookなどのキーボード分離型はタブレットスタイルとして使用する際はキーボード部分が付いてこないため軽量となりますが、キーボードを装着して使用する際は特性上机上スペースを多く占有してしまうものがほとんどです。対してキーボード非分離型は普通のクラムシェルノートと同じように使うことができるため、ノートPCとして使用することが多いユーザーに向いているといえます。また、ディスプレイの回転させる角度を自由に変更することで、同じタブレットスタイルでもディスプレイ部が手前に来るように設置したり、テントのように立てかけたりすることもでき、自由な姿勢でPCを使用することができます。
それでは早速開封していきましょう!今回は本体のほか、非光沢タイプの液晶保護フィルムも同時に注文したのですが……
こんなでっかい箱に薄い液晶保護フィルムのパッケージが1枚だけ(笑)。もう少しなんとかならなかったんですかね……
さて、それはさておき、本体のパッケージを開封していきましょう!
本体のパッケージは、さらに別の段ボール箱に梱包されており、その段ボール箱の中にSpectre x360専用ケースも付属していました。PCに傷をつけずに持ち運べる安心感で、より積極的に外へ持ち出したくなります。
それでは本体パッケージ!パッケージも高級感があり、開封する前から最上位モデルであることの優越感に浸ることができます。例によって箱を開けるといきなり本体が登場しますが、いったん置いておいて、先に付属品を見ていきましょう!
ACアダプタ、電源コード、クイックスタートガイド、「速効!HPパソコンナビ特別版」。HPパソコンナビはかなりのボリュームで、これだけで1,000円ぐらいしそうです(笑)。
ACアダプタはUSB PD対応で、様々な電圧・電流(最大出力65W)に対応しています。これ1個でSpectre x360の充電はもちろん、USB type-C機器(スマートフォンやタブレットなど)の充電もできるほか、本体のUSB type-C端子を使うことで本体を充電しながらスマートフォンなども急速充電することもできます。ACアダプタに接続するACプラグは付属の電源コードのほか、ウォールマウントプラグも付属しており、コンパクトに持ち運ぶことができます。
本体天板。私はナチュラルシルバーを選択しました。Spectre x360のボディカラーはほかにアッシュブラックとローズゴールドがあります。色の好みで言えばブラック系の色がいいのですが、アッシュブラックは本体の側面などに銅色があしらわれており、これが自分の好みと合わなかったため、ナチュラルシルバーにしました。天板・キーボード・側面はすべてシルバー(ディスプレイのベゼル部分のみブラック)で統一感があります。天板のHPロゴはプレミアムモデルラインに使用される特別バージョンです。角はエッジが効いており、特に画像上の2つの角は2017年11月モデルでさらにRが小さくなったためスタイリッシュです。
底面。手前と奥に長いゴム足がありますが、これがカバンからPCを取り出したり持ち運んだりする際に指をひっかけやすく、取り回しがしやすいです。上部には吸気口・下部にはスピーカが搭載。
ヒンジ部分。Spectreロゴがさりげなくあしらわれています。ヒンジは光沢仕上げで、六角形をイメージさせる角ばったデザインです。Spectreロゴのすぐ下(と反対側のヒンジの同様の部分)に排気口があります。
左側面。側面全体がヘアライン加工されており、天面の酸化皮膜処理との対比で美しく映えます。左側面にはUSB type-A端子、ヘッドセット端子、電源ボタン(ボタン中央部は電源ランプになっている)、microSDカードスロットがあります。キーボード非分離型2in1ながら高さは最厚部でも15.5mmとかなり抑えられており、しかもこの薄さながらフルサイズUSB端子を1個備えていて(同じモデルラインのSpectre 13、Spectre x2には非搭載)、USBメモリなどUSB type-Aデバイスを使用する際にもアダプタを必要としない点は高評価です。
右側面。USB type-C端子x2、充電インジケータランプ、指紋センサ、音量ボタン。
USB type-C端子はThunderboltに対応しており、映像出力にも対応しているほか、どちらの端子に挿しても充電ができます。別途ドッキングステーションを使用すれば、例えば充電しながら映像出力をし、USB3.0ポートを増設、さらにギガビットイーサネットを使う、といったようなこともできます。
指紋センサの感度は高く、触れるとすぐに認証しますが、周囲と面一になっており、手探りでセンサの位置を見つけられない点が残念です。ノートPCスタイルで使用する場合は、指紋センサの位置はDeleteキーとその下のHomeキーのちょうど中間あたり、と覚えておきましょう(笑)。
webカメラはIRカメラにもなっており、カメラの左右には赤外線の発光部があります。Spectre x360はWindows Helloの顔認証に対応しており、カメラを見つめるだけでPCのロックを解除できます。私も実際に顔認証を使用していますが、ディスプレイを開いたあとカメラを見つめるだけ、何もボタンを押す必要なくロック解除でき、非常に便利です。また、(指紋認証ともども)パスコードを入力しないため、ショルダーハックの心配がなく、セキュリティ的にも優れています。顔認証と指紋認証は両方登録することもでき、例えばIRカメラがうまく動作しない直射日光下では指紋認証を使用し、さらに手汗で指紋認証がうまくいかないときはPINでのロック解除に切り替えるなど、状況に応じたロック解除を行うことができます。
なお照度センサは搭載されておらず、ディスプレイの明るさは手動で切り替えることになります。カフェなどスポット照明が使われている環境では光の当たり方によってディスプレイの明るさが頻繁に変わってかえって煩わしく感じるため(もちろん設定でオフにすることもできるが)、手動専用となっている点は評価できますが、私はWindowsタブレット・2in1にはすべて照度センサが搭載されており、Spectre x360にも搭載されているものと思い込んでいたため、拍子抜けしてしまいました(笑)。まぁスペックをよく確認しなかった自分が悪いのですがw
キーボード面。キーボードは日本語配列です。配列に大きな崩れはありませんが、Enterキーの横に一列キーがある点は、人によって好みがわかれるでしょう。私は以前同様にEnterキーの横に一列キーがあるPCを使用していた時期があり、すでに慣れていること、文字入力においてHomeキーやEndキーを多用するため、この一列は歓迎なのですが、慣れていないとEnterキーを叩いたつもりがその右隣のキーを叩いていてカーソルが別のところに飛んでしまい、フラストレーションがたまるので、気になる方は店頭などで試すことをおすすめします。また、海外モデルでは矢印キーのうち左右キーがCtrlキーなどと同じ高さになっていますが、日本語配列では上下キーと同じ高さにそろえられており、手探りで矢印キーを操作する際にわかりやすくなっています。キーボードにはバックライトが搭載されていますが、前述のとおり照度センサが搭載されていないため、バックライトのオンオフは手動です。また、F1~F12には画面明るさ、音量、キーボードバックライトオンオフなどのホットキーが登録されていますが、そのままこれらのキーを押したときにはホットキーとして動作します。F1~F12キーとして使うときはfnキーを押す必要があり、これらのキーを多用する場合は煩わしく感じます。
タッチパッドは横方向に大きく、精度も高いので使いやすいです。縁にダイヤモンドカットが施されているため、キーボード面のアクセントになっています。ただし、ディスプレイに近い側にBang&Olufsenのスピーカが搭載されている関係上キーボードが手前に来ており、これに伴ってタッチパッドの上下方向の幅が狭くなっています。また、Synapticsのタッチパッドが採用されており、ドライバもSynapticsのものが当てられているため、特に3本指以上のジェスチャー使用時の挙動がWindows標準ドライバのときと異なります(Windows標準ドライバではホイールボタンに相当する操作は3本指でタップだが、Spectre x360では3本指でクリック。3本指タップではCortanaが起動する。など)
Spectre x360はディスプレイを回転させることで様々なスタイルでPCを使用することができます。上の写真がいわゆる普通のノートPCスタイルです。ここからさらにディスプレイを倒していくと、180度以上開いたところでキーボードとタッチパッドが無効になり、タブレットモードに移行するかを問う通知が表示されます(設定により、自動でタブレットモードを開始・終了することや、自動で移行せず、メッセージも表示しないようにすることも可能)。
まずはキーボード面が下になるように設置するスタンドモード。「新幹線・飛行機のテーブルで使いやすい」とのことで、主に動画を見るのに適しています。キーボード面には四隅に小さなゴム足がついているため、キーボードがテーブル面に直接触れて傷ついたりする心配がありません。
次にヒンジが上を向くように置いたテントモード。接地面積が小さく、狭い場所に置いて使うのに適しています。ディスプレイ部には加速度センサが搭載されているため、ディスプレイの天地が逆になると画面の向きを合わせてくれます。
最後に完全にたたんだタブレットモード。前述の通りディスプレイを180度以上開いた時点でキーボード・タッチパッドの動作が無効化されているので、裏面に来るキーに触れても大丈夫です。重量は1.29kgで、さすがにキーボード分離型2in1には及びませんが、片手で持っても苦痛に感じない軽さです。
ちなみにタブレットモードの状態でキーボード面を上に向けて置くとなんともシュールな構図がw
それでは、ハードウェアの性能について詳しく見ていきます。ベンチマークは例によってCINEBENCH R15を使用。
CPUは最新の第8世代CoreプロセッサであるCore i5 8250Uを搭載しています(カスタマイズによりCore i7 8550Uも選択可能)。第7世代以前はモバイル向けCPUは2コア4スレッドでしたが、第8世代より4コア8スレッドとなり、本来であれば大きく性能向上するはずなのですが、結果は第6世代タブレット向けCoreプロセッサであるCore m3 6y30の1.7倍程度でしかありません。ベンチマーク中のクロックを確認したところ、Core i5 8250Uのターボブースト作動時の最大周波数3.4GHzでは動作しておらず、ベンチマーク開始直後は2.5GHz前後、10秒程度ですぐにベースクロックの1.6GHz程度で推移していることがわかりました。また、動画エンコードで負荷をかけてみたところ、サーマルスロットリングが作動し、最終的に0.9GHz、CPU使用率上限が50%にまで低下していました。薄型ボディであることとコア数の多い第8世代Coreプロセッサを搭載していることから排熱が追い付かず、CPU温度が上昇して熱保護が機能したものと考えられます。以上より、動画エンコードやゲームなどの長時間負荷がかかるような用途には向いていないといえます。
しかしながら、ネットサーフィンやネット動画視聴などにおいては、4コア8スレッドとターボブーストが有効に機能し、快適な操作が可能です。実際に使用してみた限りでは、動画エンコード以外では以前使用していた自作PCとほとんど変わりない体感速度です。
Spectre x360の画面はマルチタッチ対応になっているほか、Microsoft Pen Protocol(MPP)によるペン入力にも対応しています。別売り(一部グレードは標準で付属)のSpectreペンのほか、Surfaceペン、Bamboo Inkなども使用することができます。タッチ感度も良好で、タブレットモードでの使用時だけでなく、ノートPCモードでの使用時にもちょっとした操作に画面を触れて操作できるのは便利です。ペン入力も滑らかで、さらにモバイル向けCPU・(一番下のグレードでも)8GB RAM・256GB SSDで余裕があるため、ちょっとしたイラスト製作にも使えます(私も早速趣味のイラスト・漫画制作のうちラフの作成に活用しています。線画以降の作業はより精密に描画したいので別途板タブを使用していますが)。ただし、ディスプレイが若干たわむので、手をつく際にあまり力をかけすぎないように気を付ける必要があります。
Core i5 8250UのTDPは15W、Configurable TDP-upは25W@1.8GHzで、いずれもSpectre x360の前モデルの同グレードに搭載されていたCore i5 7200Uと同じ値(7200UのConfigurable TDP-up clockは2.7GHz)です。さすがにこのクラスともなると、超低電圧版とはいえそれなりの発熱を伴います。このPCもキーボードのすぐ上、B&Oスピーカのメッシュの中央付近と裏側の同じ部分について、負荷をかけるとすぐに熱くなってきます。しかしながらこの熱はキーボードやパームレストには伝わらないため、熱くて苦痛に感じることはありません。しかし、ひざに乗せた際には使用状況によっては底面がかなり熱く感じるため、注意する必要があります。
また、15Wの発熱を逃がすために冷却ファンがついていますが、まるで小型のジェットエンジンのようなキーンという高周波の風切り音が耳につきます。個人的には結構好みの音なのですが、静かな公共の空間では気を遣ってしまいます。また、温度が高くなってきたときにはかなりの風切り音を伴って回転しますが、その割には排気口からの風はごくわずかしか感じません。デザイン性と快適性を追求するあまり肝心の排熱が不十分となり、結果的に高負荷時に本来の性能を発揮できなくなっているのではないでしょうか。そもそも連続して負荷をかけるような使い方を想定していないと思うのであまり文句を言っても意味はないかもしれませんが、自作PCを組んだことのある者としては熱に対する気遣いを十分にとってほしいものです。
カタログスペック上のバッテリ駆動時間は約16時間45分(4Kディスプレイモデルは約10時間)と、モバイルノートとしてはトップクラスの駆動時間が特長です。Spectre 13で約11時間15分、Spectre x2で約8時間と、こちらも十分長いものですが、Spectre x360はそれをさらに上回る持続時間の長さです。実際に16時間以上使えるのかを試す機会はありませんが、カフェで1時間ほど、あらかじめSSDにインポートした動画(720pHD、約25分を2本)を視聴しながらOneNoteでテキスト編集(この間、インターネットにも接続している)を行ってみましたが、まだ80%程度残っていました。以前使用していたMatebookで同様の条件で使用すると60%以下ぐらいになり、ちょうどタスクバーのバッテリ残量アイコンが半分を切ったように見えるので、作業を切り上げる目安になっていたのですが、それに比べるとバッテリの減りは明らかにゆっくりです。しかし、接続しているUSB機器によってはバッテリの減りが大幅に早くなることもあり、特にUSB type-C→HDMIアダプタを使用して外部ディスプレイに接続した場合には、何も作業をしていなくても画面を投影しているだけで1時間で25%ほど減ってしまいました。単体で使う分には丸1日バッテリのみで使うこともでき、ACアダプタを持ち出す必要性も感じませんが、何か外部機器を接続して長時間使用する場合には必要に応じてACアダプタなどの外部電源を用意しておいたほうがよさそうです。
というわけで、Spectre x360(2017年11月モデル)のレビューをお送りしました。私はこれまで自作PC(デスクトップ)でネットサーフィンや創作活動などを行ってきましたが、屋外での作業時や帰省中などに「あっ、あのファイルちょっと見たいけど、いま自作PCスリープ中で見られない!」といったようなことが頻繁にありました。また、外での作業用に使っていたPCはどれも性能面で自作PCと大きな差があり、「この作業、自作PCではサクサクできるのに持ち出しPCでは重くてまともに作業できない!」といったこともありました。今回自分のメインPCをノートPCに完全に統一したことで、自室でも(もっと細かく分ければ自室のPCデスクでもベッドの上でも)外出先でも帰省中の実家でも全く同じ環境で同じソフト・同じ設定を利用して作業することができ、また以前から使用しているNASのリモートアクセス機能を活用することで必要なファイルをすぐ得ることもでき、これからの創作活動をするうえでよりストレスなく作業できるようになるでしょう。とはいえ、排熱性の悪さのためにCPUが本来の性能を発揮できない場合があることは残念です。私の今後の使用用途からして長時間フル負荷をかけることはほとんどありませんが、それでも簡単な動画編集などでパワーを必要とするときもあるため、少々不安要素が残る形となりました。
なお、自作PCはパーツをすべて手放すため、いったん卒業(?)となりますが、自作PCを作り、改造していく中で得た様々なノウハウは、今後のPC選びやパーツ選びなどに活かしていきたいです。またデスクトップPC自体も嫌っているわけではないので、来年から始まる新生活の中で部屋のコーディネートと合わせて例えばリラックスしてテレビやネット動画を視聴できる大画面PCを購入したり自作したりしてみたいです。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。